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奥手な男なんです

CHOT FRESINO

 去年の10月に、幼なじみの結婚式の二次会に参加した。
僕と新婦は、保育園から中学まで同じで、    
オナチュー(同じ中学)出身の男女11人程で行った。
 他にも、新郎新婦と同じ高校の人たちや、
元バイトメンバーなど総勢50人くらいいたと思う。

結婚式の二次会はほぼ婚活パーティーやで!」

なんてことをよく耳にする。
 結婚式の二次会なるものに行ったことがなかったので、期待に胸を膨らませた。
かれこれ2年は彼女のいない僕は、それは、意気込んで行った。

 結論から言うと、出会いはなかった。
会場も、バーやカフェではなく、式場で、中学や高校、職場で席を分けられていたので奥手な僕は、女性に話しかけられなかったのだ。

しかし、二次会自体はすごく良かった。
セロトニン(幸福感を司る神経伝達物質)が大量放出されている幼なじみの幸せそうな姿を見て、 僕までなんだか温かい気持ちになった。
 二次会の間中、僕はEnjoy Music Clubの「BIG LOVE」を脳内再生して、新郎新婦に送った。

 その日のメインイベントは間違いなく、幼なじみの結婚式だったが、この話のメインは違う。

 事件は二次会で起きたんじゃない!三次会で起きたのだ!!!

 二次会が終わり、同じ中学の11人で地元に帰って三次会をしようということになった。
新郎新婦のハッピーバイブスにあてられ、幸せの余韻さめやらぬ僕はもちろん参加した。
程よく酔いもまわって気持ちよくなっていたし、もう少し、この多幸感を噛み締めて、余韻に浸っていたかったのだ。

 三次会は地元の居酒屋。
幼なじみの結婚を祝い、しっぽり呑むと思いきや、入店するやいなや(as soon as)3杯一気飲みさせられた。コール付きで。
これが、ジョックス(ナードの対義語。スクール・カーストの頂点に位置する人気者の意)の飲み会か…

 僕は、お酒が弱い。めちゃめちゃ。
調子が悪い日はビール一杯で頭が痛くなるくらい。
正直、二次会の時点でだいぶキテた。
それに加えて3杯も一気したものだから、ふらふらのアッチョンブリケ状態。
早々にリタイアをぶちかました。

 その時、M子さんが驚くべき発言をした。

その驚くべき発言の前に、M子さんについて少し説明したい。
M子さんは、新郎新婦と高校が同じで、今回の結婚式、二次会の幹事を任されていた。
二次会の会費集めや、動画編集、披露宴でのサプライズ・ダンスの練習など、忙しかったらしい。
しかし、二次会も終わり、それらを無事終えた達成感から、解放感からテンションMAX &バイブスアゲアゲ、イケ!イケ!ゴー!ゴー!な仕上がりになっていた。
あと、ちなみに、M子さんは結構可愛い。

 どんな調子かというと、とりあえず、手当たり次第に一気飲みさせていた。
まず、ターゲットになったのは、お調子者2人である、僕とこのnoteを共同でしているプノペンさん(プノンペニスト)だ。

 プノペンさんはエゲツないスパンでコール一気させられ、その一気飲みの速さから、その様から、飲みっぷりから、トドと揶揄されていた。
トドとはよく言ったもので、不思議なことに
ほんまにトドに見えてきた。

 その飲みっぷりは、映画「ロッキー」で
ロッキーが生卵を一気飲みするシーンを彷彿とさせた。

トド飲みを見たM子さんのバイブスと酔いは
最高潮に達し、件の衝撃発言に至る。
コレだぁ〜!1・2・3!!!
(ザ・ベストハウス123風)

「私、今日CHOTくんお持ち帰りするわ!
なあ、みんな、私お持ち帰りしてもいい?
やから、もっとCHOTくん呑んで酔い潰れてな!」

 …えっ!?正直耳を疑った。
ツッコミどころあり過ぎて、どこからツッコんだろ!?
まず、皆さんも1番インパクトを受けたであろう、もちろん僕も1番ビビってションベンを
もらした、この発言からいこう。

お持ち帰りするわ」だ。
お持ち帰り…omochikaeri…ローマ字表記に
すると多少卑猥さが緩和され、マイルドになる
と思ったが、よりエロさが滲みでてしまった。
路上でボブが(ボブて誰やねん!?)女の子を
口説いてるシーンが容易に想像される。

 えっ、ちょっと待って!
チョトマテ、チョトマテオネェさぁ〜ん!
困惑し過ぎてラッスンゴレライが口をついて
出てきた。
お持ち帰りって、いつから申告制になった
ん??
マジで?そんなみんなの前でオッピロゲに
公表するもんなんですか?

したことないけど、イメージでは、こそっと
耳元で「店出よや」とか、「2人で飲み直せ
へん?」みたいな感じで、そういう流れに
持っていくもんちゃいますのん!?
ちゃいますのんか!?…しかも、男性から。

さらに、ぐでたまごちゃん超えのぐで感出し
てる、完全に仕上がってる僕にまだ飲めと?
鬼ですやん!これ以上飲んだら、急性アルコ
ール中毒で、緊急病院担ぎ込まれまっせ!
救急車呼んどけよ!!(僕用の)

 とまあ、お持ち帰り宣言された僕はというと、脳の4分の3がアルコールがまわって動かないので、4分の1をタービンの如く回転させ、
必死になんて切り返そうと考えた。

 俺のターン!ドロー!!だ。(遊戯王風)
…引きが悪かった。全然遊んでこなかった、
圧倒的に経験値の足りない僕の手札はカスだった。
トラップカードという名の駆け引きすら
持ち合わせていない…
 M子さんの発言から、この間2秒…
普通の会話の中で2秒の沈黙てまあまあ長いで?

 焦りに焦った僕が出した返事は、

「えっ!?お持ち帰りして頂けるんです
かぁ〜!?
ありがとうございますぅ〜!!!」

なんて腑抜けた返事しかできない始末だった。
…奥手な男なんです。すみません。

オーディエンスであるジョックスたちの
反応はというと、

「おーい!根性見せろや!根性!!!」

いやいや、あほかと。ちょい待てと。
根性なん!?なんでヤンキーて根性論
好きなんですかね?

仮に僕が武士で、鞘当てしてしまったとしよう。鞘当ては武士にとって決闘の合図だ。
当てといて、僕が

「ひぃい〜!すみません!わざとじゃないん
です!勘弁してくだせぇ〜!!」

と土下座決め込んだなら、「根性見せろ」は
分かる。めっちゃ分かりけり。

また、白手袋を足元に投げられ、それを
拾わず逃げたなら、「根性見せろ!」は
分かる。むしろ言ってもいいと思う。

でも、この場合は「根性見せろ」と
ちゃうくないですか?

 結局、お持ち帰りされたのか、されなかったのか、ここまで読んで下さったみなさんは気になっているだろう。
結論からいうと、されなかった。
なんでやねん!?変に期待してもうたやん!

 1人寂しい帰路、少し肌寒くなってきた夜風
を吸いながら、高倉健ばりに渋い顔で呟いた。

自分、奥手な男ですから…

 次は、向こうから言われるんじゃなくて、
自分から「お持ち帰り申告」できる男に
なろう、そう誓った夜だった。

 そんな、男らしい男になれる日まで、
今日はおやすみ、奥手なCHOT FRESINO。

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