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害悪系硬派厨の私がシンエヴァンゲリオンの感想をネタバレ最小で述べるよ

 本作を簡単に形容すると「出来の悪いモーレツ大人帝国の逆襲」である。90年代へようこそ
 物語は前作Qのほぼ直後から始まる。なんと第3新東京市の住民は生きていた事が発覚するのだが、『マッドマックスサンダードーム』よりも『この世界の片隅に』よりもはるかにゆる〜い共同体が形成されていた。

 切迫した危機に隣接しているのになんともゆる〜いのである。(使徒のようなエヴァのような怪物がウロウロ徘徊している)
 ここまでして前のエピソードから精神的に傷ついた主人公の回復促すのは、上記の緩いポストアポカリプスよりも、さながら『彼岸島』を彷彿させるのである。

※吸血鬼の闊歩する島で和気あいあいと配給食を啜る住民の図

 悪くはないのだがあんまりエヴァっぽく無いというか、ここ最近の庵野秀明作品としてはチープはある。

 しかも、このパートが世界の富99%を牛耳る秘密結社ゼーレが、大雑把に言って神様になる為の手段として、控えめに言ってシンジがグレるように仕向けた様々な陰謀が、その駒でしかなかった第3新東京市の住民によって意図せず完全に潰える構造となっている。

 何よりも気がかりなのは相田ケンスケが、サードインパクト後の住民を生存に導いて、この集落の学者兼エンジニアとして俺TUEEE!やってる事である。ケンスケはそもそも旧作でも新劇でもミリタリーオタクというだけで、サバイバル能力は皆無な筈で、生き残る術はセカンドインパクトを生き残った大人たちで事足りのでは無いだろうか?
 果たして劇中の「当時、ケンスケがいなかったらどうなってた事か」が労いのリップサービスなのか、旧世界から転生したケンスケさんの活躍だったのかは不明である。

 綾波レイのクローンは旧作、Q、本作を通して、人間性を獲得する役回りは健在だが、見せ場はこの村のシーンで終わってしまう。

 アスカの私生活も描かれるが、あざといことに殆ど半裸なのだが、見飽きてくる頃には、それがお金を財布に入れないで持ち歩く訳の分からない厨二病的感性の物であると理解する

 さて、村人全員が主人公シンジの回復を促し、人類の復興を目の当たりにしたシンジと和解したヴィレの前に現れたのは主にビジュアルがショッカー大首領となった碇ゲンドウであった。

※スペクターといいショッカーといいネルフといい採算の見込めない悪事を実行に移しメインストーリーを混乱させ観客の脳を鍛える様はさながら川島隆太教授である

 この度は、ゲンドウが無駄に新しいSF単語を言い放ち、そこに神話級に廻りくどい企みをにおわす事で、オタクに無駄な考察というエンタメを提供する悪癖が存在していなかった事でストーリーが、大凡一般的な『宇宙戦艦ヤマト』並みのスピードとパクリの下で最終決戦が描かれるのである。

 ヤマトと差別化されているのはメインから傍まで執拗にシリアスなシーンでも女性キャラの股間を狙うという、もう二度と流行らない90年代のOVA特有のカメラアングルが客席から失笑を誘いながら進む作画上の欠陥ぐらいである。

 しかしながら、Qから続く悪夢的な戦闘シーンは健在だし、旧作の明らかな失敗を逆手にとった金のかかった手抜きとそこに必然性を明示していたのは、素直に「この映画みてよかった!」とおすすめできるポイントだ。

 ラストはエヴァンゲリオンという混沌の物語がシンジの物語という新しい混沌へと誘われることで終わる。
 世界中のオタクから崇拝されている点を除いて縁もゆかりもないのに旧作を全力でパクってきた故・深作欣二の『バトルロワイヤル』を徹底的にパクリ返すという、映画監督特有の「影響を受けたと」言い張る面倒臭い後出しジャンケン合戦を終結させつつ。

※映画監督という職業は後出しでも勝てばいいと本気で思ってるサイコパスが向いている

 さて、カップリング論争についてであるが、私は基本的に『破』がラブコメすぎて虫歯になりかけた害悪系硬派厨なので、ぶっちゃけどうでもいい。  
 そもそも余ったヒロインがほ他の男に当て側される展開は90年代のアニメのお約束だったので『発明BOYカニパン』『デジモンアドベンチャー02』で”当て側され耐性”を付けていないヌルいオタクはそもそもステージが低い。もっとアニメを見ないとこの先の人生をオタクとして切り抜けられないぞ。

※劇場版で硬派厨でも「もう一個」と角砂糖を求めるようなおいしいフラグが立っていても映像作品という狭い世界の最終回で雑にカップリングされる運命から逃れる事はできない 

 カップリング以前に本作最大の欠点は、愛の宗教であるキリスト教モチーフ、物語の最終章に、愛をテーマとしているだろうに、あらゆる愛情表現が昭和なんだよなぁ……
『破』の時から。
せっかくQで、その辺の欠点を払拭したシナリオが展開されたのに、特盛で返してきたのが本作。

総評 あんまりエヴァっぽくない。マジでやってるのだが天然なのかマジで笑いを取ろうとして滑ってるのか分からない所が多く、序破Qの流れから突如として蘇った90年代OVAのノリを楽しめるか(というよりも知っているか)で評価が大分分かれるだろう。
Qはその点、エヴァのコアな部分を見せつけてきた傑作だったのだが、ここにきてエヴァというよりもファンとしても製作者としても庵野秀明以下監督たちのアニメ体験の集大成的な作品となっている。
個人的にはQには劣るがツッコミどころを備えたエンタメ作品としては次第点である。

そもそも、ポストアポカリプトについては元ネタであるデビルマンやバイオレンスジャックの方がよく出来ている。
旧劇場はその作風のダークさ、人類対人類のパートではソレらに勝るとも劣らない凄味があったのだが『彼岸島』に帰結したのは大きなマイナス点だろう。

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