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【偏愛土木写真0022】しゃれた町のしゃれた橋「馬見原橋」

 このコーナーでは、土木写真部の部員が一押しの土木構造物やお気に入りの写真をご紹介します。

 第22回は、日本を代表する歌人「若山牧水(宮崎県出身:1885-1928)」が17歳の時に訪れた際、その素晴らしい街並みに感銘を受け「馬見原ハ シャレタ町ナリ」と日記に記したという「熊本県上益城郡山都町馬見原」にある「馬見原橋(まみはらばし)」です。

 白壁の建物が建ち並ぶ馬見原の街並み


 宮崎県と熊本県の県境にそびえる向坂山(標高1,684m)を源とし、宮崎県北部を東に向かって流れる清流「五ヶ瀬川」の上流部に架かる「馬見原橋」は橋長38.25mの「変形フィーレンディール橋」です。 

「五ヶ瀬川」の上流部に架かる「馬見原橋」


 橋のたもとには、「夫婦石」と呼ばれる大きな岩が有り、9mの大しめ縄が掛けられています。
 かつて、この道が国道だった頃には、全国で唯一、しめ縄の掛かる国道として有名だったそうです。

バイパス(国道)が他にできたことで、現在この道は町道になりました。



 この一風変わった橋は、都市文化並びに建築文化の向上を図るとともに、文化情報発信地としての熊本を目指して、後世に残る文化的資産を創造する「くまもとアートポリス事業」のプロジェクトの一つとして、1995年に架けられました。

 一般的には、梯子を横倒しにしたような外観を持つフィーレンディール橋ですが、馬見原橋は下面が太鼓橋を逆さにしたような形状をしているのが特徴です。
 地元産の杉板が張られた下面にある二つの丸い穴からは、清流「五ヶ瀬川」を見下ろすことが出来ます。

 コロナ禍以前には、20年以上にわたり、世界最短の鉄人レース「モライアスロン 」のスタート地点になるなど、地域の活性化にも役立ってきた馬見原橋は、地域のシンボルとしての役割はもとより、様々な過ごし方が楽しめる憩いの場にもなっています。

構造概要

所在地 熊本県上益城郡山都町馬見原滝上地内
形 式 変形フィーレンデール鋼橋
橋 長 38.25m
完成年 1995年


馬見原橋の位置



写真・文:岡部 章 土木写真部長
 1992年に宮崎県庁に入庁。宮崎県瓜田ダム建設工事事務所での勤務を皮切りに、県内各地で土木工事の調査・設計・監督業務に携わる。
 土木構造物を世界にただ一つのオーダーメイドの作品と捉え、その魅力をより多くの人に伝えようと、2014年に「土木写真部」を立ち上げる。
 ライフワークは土木広報と景観まちづくり。
宮崎県県土整備部都市計画課課長補佐(技術担当)、日本ダム協会認定ダムマイスター