見出し画像

あなたはメンタルをどう解釈していますか?

「今スポーツ心理学という分野は非常に注目されている。この分野の理解が乏しいということは、毎日のアップデートを怠っている時代遅れということだ。君はどうだ?」


これは私がイングランドでサッカーにおいての心理学についての講義を受けた際に一番最初に言われたことです。


最初からめっちゃ上から目線でくるな、この男。目つきめちゃくちゃ鋭いし。何か学べたらいいなー、この人はどういったアイデアを持っているんだろうなー、面白そうな話が聞きたいなーと完全な受け身で入った私は初っ端から面をくらいました。


ですが、私はこの考えには賛成です。みなさんはどうですか?

実際にスポーツ心理学の本も昔に比べてたくさん出版されており、その中でもサッカーに応用した心理学の本はバスケットボールや野球などに比べて心理学の本の種類が多いように感じます。またサッカークラブ単位でメンタルコーチを雇う所や代表チームに帯同させる所も増えてきています。もちろん本の出版数や需要が増えたからだけで簡単に結論をつけるのは浅はかかもしれませんが、この文脈だけでもサッカーにおいて心理学というものは昔と比べて重要性が増していると言っていいと思います。


そしてその目力が異常に強い男は続けて「君はサッカーにおけるメンタルというものをどう解釈している?」と質問を投げかけてきました。


メンタル」とは。確かにメンタルは大事という認識はあります。私がサッカーをプレーしていた時には「あいつはメンタルが豆腐」「こいつはめっちゃダイヤモンドなメンタル」などとよく言っていました。今思えば「メンタル」という言葉をそのままの意味で捉えて何も深く考えずに使っていました。メンタルという言葉をグーグル先生に日本語に翻訳してもらうと「精神的な」という答えが出てきます。その講習会の場ではもちろん「メンタルとは精神的な意味で理解しています。」とゴリゴリの日本語を使って回答することもできないので困ったものでした。英語でそれを言おうとすると「メンタル is メンタル」とさらに訳のわからない回答になるのでどういう理解をすればいいのだろうと目力が異常に強い男の解釈がとても気になります。


目力の異常に強い男はみんな考えてる考えてると言わんばかりのしたり顔でゆっくりと口を開き落ち着き払った声で簡潔に答えを言いました。



メンタル is メンタル



まじです。私のリスニング能力の所為とかじゃないです。

本当です。ふざけてないです。


「そもそも心理学というものはとても複雑でこれが正解だとかあれが間違いだとかがはっきりわかることはほとんどない。メンタルの解釈もそれは君が何を持ってメンタrアンcおh増えcのmpあmcお、、、」


哲学的。現代のソクラテス。全くメンタルが何たるかがわからない。いやわかるものではないのかもしれない、だって答えなどないのだから。とか影響されて哲学ぽく考えてみる。


じゃあいったい何なんだよと不満タラタラに思っていても、ソクラテスは御構い無しに続けます。


「サッカーの中でのメンタルというものはとても抽象的すぎる。それを理解しないでメンタルとひとくくりにして話を終わらせることがあまりにも多い」


「メンタルという言葉の利便性に依存し、そのメンタルというものを細分化することをサボりはっきりとした原因を見つけることができないから、いつまでたってもメンタルを強くするとしか言えないんだ。」と。



(この写真の女の人ではないです。)



このやり取りが自分の中で心理学に興味を持ったきっかけとも言えるやり取りでした(自分が喋ったわけではないけれども)。サッカーにおいてメンタルはフィジカル、技術と同じくらい大切な要素だと思う?と新橋で街頭アンケートとったらおそらく過半数は大切な要素だと思うと答えるとおもいます。もしくはサッカーの世界でスーパースターと言われる選手たちは何人か思い浮かべて欲しいのですが、その中でメンタルが弱いと言われている選手が何人いるでしょうか?私が思い浮かべた選手たちはむしろメンタルがしなやかと言われる部類に入る人たちばかりでした。


ここで問題は、じゃあどうやってメンタルは育てるのか?ということです。もうここまで読んできた方は違和感を感じていると思いますが、そもそもメンタルを育てるというところの範囲が広すぎます。これを技術に置き換えると「今日は技術に焦点を当てた練習をやりまーす」となります。いや何の?ってなりますよね。


自分の中でメンタルというのは集中力、感情の制御、貢献度、自信(自信にも種類があります)、責任感、モチベーションの維持、積極性、問題解決能力、自己制御能力、ストレス耐久力、切り替え、認知、プレッシャーへの対処、コミュニケーション能力、自己決定力、状況判断能力、精神的疲労、ゴールセッティング、サッカー外でのことのコントロールetc とたくさんあります。


これらの特徴はスポーツ心理学の論文で戦術、技術と同様育成年代からコツコツと成長できる環境を作ることが大切だということが述べられています。それがわかった上でメンタルを構成しているものを細分化できると、短絡的に「とりあえず素走りとか滝修行させておけばメンタル育つっしょ」とはならないと思います(素走りと滝修行が絶対悪だとは言っていません)。


(この写真の人でもないです。)



メンタルに関しての身近な事例はたくさんあります。「試合中に決定的な一対一を外してしまいそのあとのプレーが消極的になってしまい、もう一度似たような状況になっても周りの選手にパスをする選択をしてしまい結果相手に奪われてチャンスを無駄にしてしまう悪循環が続く」や「練習や試合の始まり方が悪くよく失点してしまう(スロースタート」などなど


あなたはこのような選手(もしくはチーム)がいた時にその選手のメンタルのどこをコーチングもしくは練習をしたらいいか見抜けますか?



偉そうに言いやがって、お前はわかるのかよとか言わないでください。私もこれが正解だ!と胸を張って言えません。冒頭でソクラテスが言ったように答えは一つではありません。もしかしたら自信に問題があるかもしれないですし、状況判断に問題があるのかもしれない。ミスのストレスを引きずっている可能性もあります。


大事なのはそれをどうコーチング、練習するかです。一つの例を出すとコーチや保護者が持つ声かけの力は子供達のメンタルの成長に多大な影響をもたらします。

「一対一だろ、冷静になってコースを狙えば入るだろ!」

「打てよ!」

「何やってんだよ!」

「しっかりやれよ!」

なんて言った日にはもう選手はKO寸前でカウントが始まってるのに急に客が入ってきてジャーマンスープレックスをかけられるようなもんです。結果に焦点を当てるのではなくその過程に焦点を当ててコーチングをしないと選手の評価軸は結果だけになってしまい次第に挑戦することをやめていきます。最悪その競技から離れていきます


ちなみにこれが正解というコーチングの方法も練習もありません。何回も言いますが答えはありません。ただその選手にあったコーチング方法はあります。それを知るためには選手を知ることが大切です。



自分はメンタルを育てるときにメンタルを強くするとはあまり言いません。鋼のように強いメンタルも折れる時は必ずあります。対処法がわからずにずっと逆境に立たされていれば人はいくらメンタルが強いと言われてもいつか心を病み鬱や燃え尽き症候群になります。状況に応じて臨機応変に柔軟に対応出来るメンタルを育ててあげることがコーチや保護者としてあるべき姿なんじゃないかと考えています。武道では居つく構えという構えが一番危ないとされているらしいです。その場にとどまって動けないという意味なのですが、宮本武蔵は居つくを一つの型に固執するなという意味でも使っています。いつでも動けるような自由な構え、考え方が大切。これはメンタルにも言えることだと思います。



(この人もソクラテスではありません。)


心理学の面白いところは一人一人違うというところです。そのためチームにもたくさんの色があります。心理学にはそのためいろいろな流派があり、たくさんの理論があります。もちろん技術、戦術、フィジカルなども大事です。ただやるのは人間です。戦術、技術等を教える時にも声かけ一つで選手のリアクションは変わってきます。声かけだけでも工夫することで戦術や技術練習にプラスしてメンタルの成長も促せます。一石二鳥どころの騒ぎではありません。



今回は本当にさわりの部分を話しました。これからは色々な心理学の理論などを応用したサッカーコーチングやサッカーマネジメントを自分のアウトプット程度なのですが話せていけたらなと思います。よろしくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?