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『おかしのまちのおかしなはなし』作者・いわさきさとこさんってどんな人?②絵本作家としてのスタート


いわさきさんの連載、第2回目が始まりました。

今回は、雑貨デザイナーになることを決めたいわさきさんが、実際に働いてみて感じたこと、絵本作家になることを決めたきっかけについて伺いました。

引き続き、お楽しみいただけたらうれしいです!

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雑貨デザイナーを経験して感じたこと


約10年続けた、雑貨製作会社での仕事。会社員時代はどの仕事も100%、120%の力でやって、楽しかったです。
ただ、それがうまく噛み合わなくて自分が疲弊することも多くて…。

会社で仕事をしていくには、たくさんあるタスクをバランスよくこなしていくことが大切じゃないですか。
それがうまくできなくて、要領はあまりよくなかったと思うんです。
自分はどの仕事も全力を尽くしてやりたいと思っていたから、次第に会社員としてやっていくのは合っていないような気がしてきました。

だから、要領がよくなかったとしても 誠心誠意一生懸命にやれば認めてもらえるような職業ってないだろうか、と考えたときに、絵本が思い浮かんだんです。
子どものころからずっと本を読んでいたという経験が、そこで繋がって。

私の家は父子家庭だったので幼少期から本に救われることが多かったし、今の子どもたちにはなおさら絵本の力が必要なんじゃないかと思うんです。
だから、「絵本やろう!」って。
絵が好きで、絵本作家になりたいからなったというよりは、使命を与えられたかのように「絵本作家にならなきゃ!」って直感で感じましたね。使命感でスタートしたものだから、実は最初、絵本を作ることを楽しいとは思えなかったんです。(笑)
でも、できることなら人の役に立ってから死にたいって思うから。


神の啓示が下りてきた瞬間


“使命感”で絵本作家を志す

「絵本だ」というのが、自分の中でかなり明確に形を持って降りてきたので、そこからはわりと迷うことなく行動に移しました。

絵本作家になるうえで考えたのが、絵本スクールです。
絵本作家になった方って、絵本スクールに通っている方が多いんですよね。だから自分も絵本作家になろうと思ったときに絵本スクールに入ろうか迷ったんですけど、それだと「教えてもらう」というやり方が藝大を受験したときと同じだな、と思って。

時間がかかるかもしれないけど、独学で絵本作家になったほうが長い目で見た時に自信になるだろうと感じて、フリーランスとしてのスタートを決意しました。

でも、フリーランスになって6年目まで、箸にも棒にも引っかからない…。
出版社への持ち込みもしていて、うまくいかない悔しさをバネにして絵本関連のコンクールに応募し、受賞を目指し続けていたんですが、なかなか仕事に繋がりませんでした。
夫にも迷惑をかけてしまうし、ここからあと1年やってみてだめだったら、絵本作家の夢は諦めようと決意したんです。

今思えば、6年もやってるのにどこにも引っかからないのがおかしい!と自分で気づけたのが良かったのだと思います。自分の中で退路を断って、プレッシャーかけるのは結構好きなんですよ。



客観的に自分を見て、気づいた本質


そこまで、自分は作る側(自分)の視点でしか絵本を見られていませんでした。
だけど振り返ってみて、読者の視点を考えることが大切だと感じたんです。そこから、読み聞かせをしている方の研究や昔話の論文を図書館で読み漁りました。
今までそこを見れていなかったから、目から鱗で!

プロの編集の人が書いた、「こういう風に書いたら絵本がうまく書ける!」みたいなプロセス本があるじゃないですか。
論文や研究本から学んだことを反映させて、まずはセオリー通りに書いてみよう、それに自分らしいオリジナルの要素を加えよう、と思ってやってみました。

絵を今の雰囲気に変えたのも、実はこのタイミングなんです。
今までは藝大卒という皮を被っていた自分がいて、「うまい絵」を見せたいと思ってしまっていたんですね。
だから、自分から出てくる絵に対してはあまり自信がなくて…。

美しい世界の絵本、みたいなものにどこか憧れていて、あんなふうに描けたらなあと思っていたんですが、性格が違ったのかもしれないですね。(笑)
この1年で最後だと割り切っていたから、できるだけ自分らしい画風で描きたいと思って


◆以下3点、2018年制作『マド』より。

主人公が外の楽しげな様子をぼんやり眺めているところ


図工の時間に先生に話しかけられているところ


暗い中弟を探し回っているところ


こうしてできたのが、『くつやさんとおばけ』(BL出版)です。
当時はコンクールに応募するのがライフワークになっていた時期だったので、タイミングよく募集がかかっていた 第36回 日産童話と絵本のグランプリに応募してみたら、なんと絵本大賞をいただくことができました。

手ごたえまではなかったんですが、セオリーや考え方を学んで基礎を固めたうえで、独自の世界観を足してやってみたのがいい塩梅だったんじゃないかな、と思っています。
この作品ではじめて自分らしく描けたことで、漠然と感じていた”使命感”が”楽しさ”に変わっていきました。



第2回、いかがでしたでしょうか?

いわさきさんの決して諦めないねばり強さ、従来のやり方にとらわれず違った方向から考えてみるという柔軟さなど、絵本作家を目指す方にとっても参考にしたい!と思ってもらえるところがたくさんあったのではないかと思います。

第3回からはいよいよ、『おかしのまちのおかしのはなし』の誕生にせまります!作品ファンのみなさまは、お待たせいたしました~!

作品の裏話もこっそり伺ってきましたので、次回のnoteの更新をお楽しみに!

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