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〈連載第1回〉 フレーベル館 児童書公式noteの記事はこのおれ黒猫がジャックした! 楽しくいこうぜ村上!

黒猫  今日も今日とて日が暮れて、ステキに夜がやってきた。フレーベル館 児童書公式noteをご覧のみなさん、こんばんは。今宵、お読みのこの記事は、半野良イマジナリーキャットである、このおれ黒猫がジャックした。おっと、まず、はじめましての人のために自己紹介をしておかないといけないな。半野良イマジナリーキャットだとか、このおれ黒猫がとか言われても、なんのことやらわからない方だって、いらっしゃるかもしれないから。

 はじめましてこんばんは。
 おれの名は黒猫。
 べつに招かれたわけではないけれど、歓迎してくれるとありがたい。
 フレーベル館文学の森シリーズ20『あの子の秘密』に登場する想像上の猫だ。

まあ、詳しくはここにリンクを貼っておくからな。ぜひ読んでくれ。


黒猫  さて。今回、おれがこの記事をジャックしたのはだな。実を言うと、もともとここにはとある新人児童書作家の連載コラムの最初の記事で、そいつの自己紹介文が入る予定だったんだよ。でも、それがまたなんのおもしろみもない代物でさ。やたら短いし。編集のHさんから「これなんか物足りなくない?」って指摘が入っちゃって。

ご存知の方はもちろんわかっているだろうし、そうじゃない読者の方もさすがにわかるだろうが、つまりその新人児童書作家。ようするにおれの登場する『あの子の秘密』を書いた作者だ。村上雅郁という名前の、ギリギリまだ20代の若造。

おれはべつに村上の飼い猫というわけでもないんだが、ときどきあいつのツイッターに登場してスパゲッティ食ったり、短歌を詠んだり、写真撮らせてやったりしているからな。あ、よかったら村上のツイッターも貼っておこう。

こちら。

黒猫  そんなにおもしろいつぶやきばかりしているわけじゃないけれど、1フォローごとにおれはチュールをもらえることになってる。だから、わかるな?

で、さっきも言ったとおり、その村上がコラムの連載にあたって、まずは自分がだれかってことを書いていく予定だったんだ。だけど、うまくいかなかった。

そこで、おれの出番だ。

おれは一度あいつにインタビューをしたことがあるし、今回もその手でいこうぜってことになっている。半野良イマジナリーインタビュアーの黒猫だ。どうやってデビューしたかとか、このコラムでなにを書いていくつもりなのかとか、そういうあれこれを、ラジオ番組みたいな感じで聞いていこうと思う。

村上雅郁、ようやく登場

黒猫  じゃ、もったいぶってもなんだしな。さっさと登場していただこう。

第2回フレーベル館ものがたり新人賞大賞受賞者!
受賞作品「ハロー・マイ・フレンド」を加筆修正した『あの子の秘密』でデビュー!
同作品で第49回児童文芸新人賞を受賞!

このコラムでは児童書作家志望の方々に向けて、新人作家としてのあれこれをお伝えできればと語っている、28歳(デビュー当時)の若き才能! 

自称ひよっこ児童書作家の村上雅郁さんだ! 拍手!

村上  やめてください。はずかしいです。ごめんなさい。勘弁してください。

黒猫  なにいまさら照れてるんだよ。ほら、そこにすわれ。

村上  照れてない、照れてない。はずかしいんだって。

黒猫  同じようなもんだろ?

村上  照れるのとはずかしいのはちがうよ明確に。なにがはずかしいっていちばんはずかしいのは、おまえがしゃべってることを記事に起こすためキーボード叩いているのは結局ぼくだということだ……ひとり芝居だ……。

黒猫  おいおい、それはずいぶんと愛のない見方だな。しようがないじゃんか。おまえの住んでる現実にアクセスするには、おまえの脳を媒介とする必要があるんだよ。物語の登場人物は作者の手を借りないと、現実世界に影響を及ぼせない。あたりまえだろ?

村上  だからと言ってだね……。

黒猫  それに、読者の方々が読むのはどうせディスプレイ上の文字の羅列だよ。あとはそちらさんの想像力しだいだ。

本だってそうだろ? 紙とインクの束から、人間は『世界』を夢見る。それはたしかに絵空事かもしれない。頭の中にしかないただの幻に過ぎないのかもしれない。

だけど、だったら現実はどうなんだ? 頭の中にしかないのはいっしょじゃないか? 現実ってやつが人間の頭の外にもしっかり存在してるってことを、証明できるやつがだれかいるっていうのか?

ひょっとしたら、あらゆるフィクションはどこかべつの世界のリアルなのかもしれない。自分たちの生きる世界だけがリアルだなんて、おこがましいとは思わないか?

村上  セリフが長いよ……。そんなリアルとフィクションについての哲学問答は今回望まれてないんだよ。っていうか、おまえ、全部言ったな?

黒猫  全部って?

村上  今日ぼくが話そうとしていたこと全部だよ。デビュー作についてのことからコラムで書こうと思っていることまで、全部言っただろ。ぼく、もう帰っていいか?

黒猫  まあ、待て。焦るなよ。まだインタビューしてないだろ? 引き受けた仕事は責任もって最後までしようぜ。

村上  なんだろう、ぐうの音も出ないんだけどひどく釈然としない……。

黒猫  全国20万6千人のフレーベル館 児童書noteの読者のみなさまがお待ちだ。

村上  いや、たぶんさすがにそんなに見てない……。

noteの連載が正式に決まったとき、はじめに思ったこと

黒猫  はい、じゃあここらでおたよりを紹介しよう。

村上  どこからのおたよりだよ。インタビューしてよ。

黒猫  コラムネーム「ジャンボ」さん。

「村上先生、黒猫さん、こんばんは。
ツイッター、毎回楽しみに見ています。
今回、フレーベル館 児童書公式noteで連載されるとのことで、おたよりしました。
 質問です。
 noteでの連載が正式に決まったとき、はじめに思ったことはなんですか?
 執筆がんばってください」

はい、ジャンボさん。おたよりありがとー。
で、どうなんだよ村上先生?

村上  にやにやしながら「先生」って言うのやめて……。そうだなあ。楽しそうだとは思ったよ。企画を聞いたときは。特になに書くとかもまだ決まってなくて。でも、具体的に連載としめきりが決まったのが、9月の半ばなんだよね。

黒猫  あれ、今日何日だっけ?

村上  今日が何日かはともかく、このnoteが公開されるのは10月8日ってことになってるね。

黒猫  急じゃねえか?

村上  急だよ。まあ、いいんだけど。
そこで、全部で5回にわたる連載だって聞いて。編集さんとどんな内容にするか相談して、「児童書作家を目指している方々に向けて、新人作家としてメッセージとか」って案が出てさ。
投稿者時代のこととか、受賞作の改稿のときのこととか、デビュー作『あの子の秘密』の裏側のこととか、ね。けっこう赤裸々に語っていいらしいから。
まあ、実際のところ、それが作家デビューの役に立つかはわからないけれども。

黒猫  いるよな。ひどく見当違いなことを調子乗ってとうとうと語るやつとか。

村上  そうならないように気をつけたいけどね。

黒猫  そうだな。そこ考えてもどうしようもないよな。ほら、あるじゃん。だれかにとって役立つ情報でも、ほかのだれかにとってはただのゴミ、とか。そういうの、ある程度はしかたないところだ。

村上  物語もそういうところあるよね。実際、ひとつの物語で、どこかのだれかの心を動かすことができても、読んだ人全員は無理だしね。だれかの気持ちを楽にできても、べつのだれかはそれを読んでがっかりするかもしれないし……。

黒猫  ん? それは、あれか? 予防線か? 作品に対しての感想で傷つかないための?

村上  まあ、そういうところもたしかにある。
ともかく、えーっと。コラムネーム、ジャンボさん。そういうわけで、「noteの連載が正式に決まったとき、はじめに思ったこと」。それは、「急じゃね?」でした。

黒猫 「わりと身もふたもない感想だ」

若い女性の作者かと思ったら、実は27歳男性だった

黒猫  はい、じゃあ次のおたより。コラムネーム「リンゴヒゲナガゾウムシ」さん。

「村上雅郁先生、黒猫さん。はじめまして。リンゴヒゲナガゾウムシです。
村上先生の作品『あの子の秘密』を読んでいて思ったのですが、村上先生は男性なのに、どうして女子の気持ちのことがこんなによくわかるんですか?」
 
だって。授賞式でも話題になったそうじゃないか。「小学校6年生女子の内面が巧みに描かれていたので、若い女性の作者かと思ったら、実は27歳男性だったエピソード」。一部の界隈で有名らしいぞ。

村上  一部の界隈ってどこだよ。めちゃくちゃ一部だよ。たしかにそういうこともあったけど。で、質問についてはですね、まあ……誤解ですね。

黒猫  誤解?

村上  よく「女子の気持ちがよく書けてる」って言われるけど、ぼく自身、女子どころか、他人の気持ちがわかったためしがないです。

黒猫  それは謙遜じゃないの? 嫌味だぞ。

村上  だって、心は見えないし……ぼくはキャラクターを作るとき、「自分の中にあるキャラクター的な部分」を膨らまして書いていくんですよ。だから、どのキャラも、根っこの部分は自分につながっている。だから、女子の気持ちに限らず、キャラクターのありようにリアリティを感じていただけるのだとしたら、それはぼくの中にあるキャラクター性にリアリティを感じていただいているんだろうな、と。

黒猫  村上にも「女子っぽい部分」があるって話?

村上  そうかもしれないし、ジェンダーや年齢でキャラクターを分けること自体がもう時代遅れなのかもしれないよね。

黒猫  そうだな。おれなんか猫だしな。

村上  ちなみに、『あの子の秘密』の前身である「ハロー・マイ・フレンド」を読んだフレーベル館のとある編集さん、この人ぼくと同年代の女性なんだけど、その人はぼくに会う前の段階で「この人は男性だ」って気づいていたそうです。

黒猫  ほうほう。その人の作品に対する嗅覚みたいなものの鋭さがずばぬけているのか、それとも同年代だからこそ気づく「傾向」みたいなものがあったのか……。

村上  しかもその人、「主人公、自分の好きなタイプを書いているでしょ?」とおっしゃいました。恐ろしい……。

黒猫  その人がずばぬけて鋭い説が濃厚だな。で、当たっていたの?

村上  ……主人公みたいな子が、6年生のころ同じクラスにいたら気になってただろうね。

黒猫  そういうときどういうアプローチするの?

村上  しないよ。遠巻きに眺めるだけ。

黒猫  いくじなし。

村上  きれいなものには触れたくない。見てるのが好きなんだ。

黒猫  いや、それはそれで気持ち悪いぞ。女子の気持ちに詳しい、好きな子は遠巻きに眺めるタイプの28歳の若き才能。

村上  やめてください。

黒猫  はい、リンゴヒゲナガゾウムシさん。おたよりありがとう。うまいこと幻滅してくださったんじゃないか?

村上  ……このやりとりで『あの子の秘密』の主人公ってどんな子? と思ったあなた。今すぐ本を買って読んでください(宣伝)。

黒猫  ちなみに、主人公ふたりいるからな。どっちが村上の好きなタイプなのか、想像してみてくれ。

村上  なあ、自己紹介ってこういうことなの?

黒猫  なんとなく人物像は見えてきたんじゃないか? 上々のプロモーションだよ。

村上  マイナスプロモーションだろ、どっちかっていうと。

「28歳の若き才能が児童文学界に挑む!」という売り文句

黒猫  じゃあ、次で最後のおたより。コラムネーム「ワニの幽霊」さん。

「村上雅郁、黒猫さん、こんばんは。28歳ってそれほど若くないと思うんですけど、そのあたりについてどうお考えですか?」

だって。どうお考えですか?

村上  どうなんだろうねー。百歳に比べたら若いんじゃないのー(棒読み)?

黒猫  おいおい、スルースキルを発揮しちゃったらなにもおもしろくないだろ、この質問。

村上  だって、なんかおたよりの選考に悪意を感じるし……年齢のことをどうこう言うのってマナー違反じゃないの?

黒猫  でも、「28歳の若き才能が児童文学界に挑む!」ってポスターやポップにでかでかと書いてるしな。あと、初刷本の帯にも。購買戦略のひとつとして利用してるんだから、マナー違反もへちまもないだろ。


販促ポスター写真


村上  うーん、たしかに児童書作家で若い男性ってあんまりいないらしいから、希少価値はあるらしいよ。だけど、これは今後書くかもしれないけれど、フレーベル館ものがたり新人賞の選考は、氏名もプロフィールも伏せたまま行われるんだよ。

黒猫  なるほど?

村上  だからこそ、最終選考会で受賞が決まった後、「実は20代男性!」というサプライズに「えー!」となるわけで。

黒猫  実際、「えー!」って声が上がったらしいな。先生方から。

村上  だから、年齢関係ないと思いますよ。選考に関わる方たちみんな、鵜の目鷹の目で才能を探しています。少しでも光るものがあれば、見逃されたりしません。ぶっちゃけた話、ぼくの「ハロー・マイ・フレンド」もだいぶ「今後に期待!」みたいなところがあったらしいですよ。もっといい作品になるっていう可能性を信じていただけた。

黒猫  現在は第3回の選考が行われているんだっけか、ものがたり新人賞。どんな作品が受賞するのか、いまからわくわくだな。

村上  そうだね。ものがたり新人賞の受賞仲間が増えるのも楽しみだね。
と、いう感じで。「28歳男性の児童書作家は、若くて希少かもしれないけれど、やっぱり本当に大事なのは作品」というのが答えです。

黒猫  うまくまとめたな……はい。おたよりが採用されたみなさんには、イマジナリー粗品をプレゼントするぜ。内容は各自、想像してくれ。

新作出ます!  12月上旬発売決定!

村上  あの、インタビューしないうちに文字数が5000字を超えたぞ?

黒猫  ちょっとしゃべりすぎなんじゃないか? おまえ、もっと情報をコンパクトに伝える努力をしろよ。冗長に会話文だけ続けるのが作家の仕事じゃないだろう。

村上  しゃべりすぎなのはおまえだよ。ぼくのセリフよりおまえのセリフのほうが格段に多かったよ、絶対。

黒猫  はっはー。おれはおしゃべりが大好きだからな。じゃ、とりあえず、次回の予告を。

村上  うん。

黒猫  おまえがするんだよ。

村上  あ、はい。
そうですね。次回はぼくの小説投稿者時代というか、デビュー前のあれこれを語っていけたらなと思っています。書き始めたきっかけとか、そのモチベーションとか、どうして児童書を選んだのか、とか。そのあたりをですね、まあ楽しく書いていけたらなー、と。

黒猫  あと、ちょっと質問なんだけどさ。

村上  どうぞ?

黒猫  次回もこの形式でいくのか?

村上  ……編集さん次第かなあ。黒猫、おまえはどうしたい?

黒猫  おれ? そりゃまあ、出ろというのであれば。あ、スケジュールは年末までちゃんとあけてあるから、気をつかわなくていいぜ。

村上  出る気満々だ……。

黒猫  はい、じゃあ、最後にお知らせだ! フレーベル館公式Twitterでも報告があったと思うが、村上雅郁の新作、12月に発売することが決定しました! 明日、10月9日からNetGalleyさんでゲラが読めるぜ! これもリンクを貼っておこう。こちら。*2021年1月14日までの掲載とさせていただきました(2021/1/22追記)


黒猫  デビュー作『あの子の秘密』から1年かー。なんだ。ちょっと感慨深いな。

村上  怒涛の1年だったよね。いや、まだ終わってないんだけど。っていうか、まだまだやることたくさんある……。

黒猫  まあ、悲観的になるなよ。ラクにいこうぜ。それで? 次作のタイトルは?

村上  上にリンク貼っちゃったじゃん。

黒猫  悪い。ちょっと段取りミスった。

村上  ……次作『キャンドル』。12月上旬に発売予定です。よろしくお願いいたします。

黒猫  内容や装画についても、随時情報公開していくぜ。フレーベル館公式Twitterをチェックだ。


黒猫  ここだけの話だが、なんと、おれの出番もあるらしい!

村上 『キャンドル』にはおまえの出番はない。

黒猫  え?

村上  はい、それでは。3週間後、10月29日にお会いしましょう。お相手は村上雅郁と

黒猫  まじで? おれ出ないの?

村上  ……半野良イマジナリーキャット・黒猫でした。シーユーインアナザードリーム、ハバナイスリアリティ。

黒猫 うっそお……。

♪エンディングテーマ『砂糖とスパイス』 作詞・作曲 リカラムP


Masafumi Murakami
1991年生まれ。鎌倉市に育つ。2011年より本格的に児童文学の創作を始める。第2回フレーベル館ものがたり新人賞大賞受賞作『あの子の秘密』 (「ハロー・マイ・フレンド」改題)にてデビュー。2020年、同作で第49回児童文芸新人賞を受賞。

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〈連載第2回〉ひよっこ児童書作家が卵から孵るまで!

〈連載第3回〉ひよっこ、2作目の壁を越える!?

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