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新入り「ボンボン」の履歴書

みなさん、こんにちは。
今年2月、フレーベル館から刊行された『そうじきのなかのボンボン』という絵本があります。

知ってますか?
知らなくても大丈夫です。
でも、これから読んでもらえたらうれしいです。
とても!

★★

改めまして、はじめまして。
『そうじきのなかのボンボン』を担当した、編集Kです。
絵本をはじめ、児童書を中心に日々こつこつと作っています。

今回は『そうじきのなかのボンボン』との出会いから旅立ちまでを、担当編集の目線で綴ります。


◆書籍詳細はこちらから




住所は「そうじきの中」

ボンボンとの出会いは2019年冬。たぶん、くもりの日。うろおぼえ。
第10回武井武雄記念 日本童画大賞 絵本部門の応募作のひとつで、審査員特別賞を受賞した作品です。

応募当時は絵本の27ページに出てくる、くしゃっとした表情の絵が表紙で、第一印象は「これは一体何なんだろう」と。
不思議な生態と、見応えのある絵が印象的でした。


27ページ。なんともいえない表情…


この日本童画大賞 絵本部門は、基本的に出版されるのは大賞作のみなのですが、私がとても気になっていた作品でした。

この作品はこれからどうなるんだろう? という私の好奇心と、何より作者の加藤さんのやる気がマッチングし、企画提案したのちに刊行を目指して頑張ることになりました。

この作品は0から企画したものではありません。
すでにボンボンと、ボンボンパパはそこで暮らし続けていたわけで、この賞をきっかけに、私も掃除機の中におじゃまするチャンスがやってきたのです。


★★

動機

刊行に向けてスタートしたものの、大賞作は刊行時期は決定していますが、こちらは具体的な時期が未確定。それをいいことに、こつこつと改稿を続けていました。

「お元気ですか? そういえばボンボンの様子はどうですか?」
なんてやりとりをくり返し、幾年。

当時の表紙ラフ。

ある日の打ち合わせで、ふいに著者の加藤さんから
「ボンボンは息子がモデルなんです」
という話が出ました。

…息子 ……そうか!

その時、何かが胸にストンと落ちてきて。

本として良い作品にするのは大前提だけど、それだけじゃ進まない、
キャラクターにモデルがいるなら、しかもそれが息子ならば、作者がボンボンとボンボンパパに込めた思いに編集者として向き合い、私自身の中にもキャラクターを落とし込んでいけば、作品がまとまっていくのでは、と。

加藤さんとの雑談も参考にしながら、ボンボンってどんな子なんだろう、ボンボンパパは何が好きなんだろう、実際に仲良くなるにはどうしたらいいかな、と思いながら進めていきました。


すると、「キャラクターが勝手に動き出す」とたまに聞きますが、まさにボンボンたちもそんな気がしてきて。
あれ? 気づけば成長してる! というような。
ボンボンがパパの手をひいて自ら歩き出すシーンなど、前の原稿ではこんなことできなかったよね?と。
改稿のたびに新しい発見がありました。


当時の31、32ページのラフ。

★★

そして編集作業も大詰め。
細かい描き込みが印刷で表現できるよう、校正作業も苦労しました。

印刷所の方々にもご尽力いただき、コロナ禍には難しかった印刷立ち会いも行いました。

編集作業の中、作者の加藤さんの言葉で、私が一番印象に残っているのが、表紙デザインが仕上がったとき、

「この子はこれから、この顔で生きていくのね」と。

まさに、応募作品の枠を超えた瞬間。
個人的な作品だったものから、デザイナーや様々な人の手を伝わり、できあがった顔。
加藤さんがこの作品を、まさに息子と同じく大事にされているのも伝わってきました。

表紙が顔なら、ストーリーは性格のようなものかもしれない。
読まないと中身は分からないし、見た目の第一印象で決めつけられることもあるかもしれないし。

もう、本じゃなくて、生きものみたいだと感じたのを思い出します。

2024年春、就職

そして、ついに校了する段階では、ふたりで
「ボンボンもいよいよ就職」という話になりました。

親元をはなれ、社会に旅立っていく……。
帯は自己PR? 気合いを入れて考えなければ。
確かに書店さんや読者のみなさんにとっては はじめましてだから、アピールしなきゃだし、就活だよなあ、なんて。

自分が新入社員だった頃を思い出してヒヤヒヤしつつ、すでに親戚の子のようなボンボンをドキドキしながら送り出しました。

絵本としては、まだまだふわふわの新入り。
多くの作品の中で揉まれながら、これから生きていくんだなあ。

もし、書店さんなどでみかけることがあれば、
こっそりでも、ぜひ応援してあげてください。


★★
そんな『そうじきのなかのボンボン』ですが、第15回ライセンシングジャパン、フレーベル館ブースにて、大きく紹介しています。

まだ新入りだよ!? 大丈夫? と、老婆心ながら思うこともありますが、
アニメーションやぬいぐるみなど、いろいろと展示していますので、ぜひ遊びにきてくださいね。

ボンボンたちも、みなさんをおもてなしする作戦会議中です。


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