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ぎっくり腰経験者ならわかってくれると思う。

骨折だの脱臼だの捻挫だの、いろんなケガや痛い思いをしてきたがぎっくり腰は格別なんだ。何が違うって、ぎっくり腰やると腰も痛いんだけど何より弱気になってしまう。弱気。気が弱る。

気が弱るってどういうことか、あらためて説明しようとすると難しいが、そうだね、例えばとても情けない気持ちになる。この辛さが一生続くんじゃないか、この痛みが一生治まらないんじゃないか、みたいな絶望感につつまれる。何をしようにも身体が言うことを聞いてくれない。トイレにすら立てない。

16歳のとき初めてぎっくり腰をやった。隣の家のおじさんがペンキ職人で、土日や夏休みにはおじさんの手伝いに精を出していた。アルバイトって感じで。その朝もいつも通り、婆さんがこしらえてくれた弁当を左手に、玄関でズックを履いて、いってきま〜、の瞬間立てなくなった。背中で大きな音がしたような気がした。

バンドでリハーサルやってて突然崩れ落ちたこともあった。歌ってる最中だ。

22歳のときにはビルのてっぺんで動けなくなった。当時はビルの窓拭き。10階建てくらいの屋上に3階分くらいの鉄骨壁があってブランコだのバケツだのかかえてよじ登ってさあロープ伝って降りるぞって瞬間にギューンと。同僚たちは事態をわかってくれず俺を見上げてヘラヘラ笑ってる。マジで殺意覚えたね。

どうやって鉄骨壁から降りていったか覚えてないが、とにかく脂汗いっぱいになって屋上まではたどり着いた。とりあえず俺は寝転がって、その現場の仕事が終わるのを待った。歩くことはもちろん、立つこともままならないので自宅近くまで車で送ってもらい、もうすぐ自宅だというところで偶然治療院を見かけて転がり込んだ。たしか土曜日だった気がする。

白衣を着た若い男性。若さに不釣り合いなヒゲなんかはやしちゃって。なんとなく爬虫類に詳しそうで、ちょっと変な先生だなこの先生、と思った。その先生が言ったひとことで俺の人生は変わった。

「大丈夫、必ず治りますから」

施術も不思議だった。俺は横向きに寝かされて、耳のうしろらへんを先生の指でトントントンってかるくタップする感じ。腰には直接触れてないんじゃないかな。トントントンは数分で、あとは放置。15分くらいゆっくりしてたら立てるようになってた。ゆっくりだが歩いて自宅まで戻れた。

この日以来、ぎっくり腰のときの弱気が薄れた気がする。自信がついたというか、またなったら治せばいいくらいに考えられるようになった。

まだぎっくり腰やったことない人は、痛みよりも自分の弱気に準備しておくといいです。大丈夫かならず治るからね。周囲に腰痛の人がいたらかなり気持ちが弱ってると思うので優しくしてあげて欲しいな。

世界のゴキゲンが増えるといいなって考えたりしゃべったり書いたりしてます。ありがとうございます。