【フレンドフーズ名物物語】ローストビーフ編
フレンドフーズの存在を知ったばかりのもぐりのライターが、フレンドフーズの実態に迫る本シリーズ。店内で存在感を放っているたくさんのオリジナル商品から、「名物にうまいもの……きっとあり!」と嗅ぎ分けて、ひもといていきます。右も左もわからない初心だからこそ、きっといい。京都の風習をわかっていない外の視点だからこそ、かえっていい。そう信じて、あけすけにレポートします。
フレンドフーズオリジナル「ローストビーフ」
お値打ちビュッフェにありがちのやつとか、そもそも安くて硬い牛肉をどうにかおいしく食べるための苦肉の策の料理とか。そういう一方的なイメージがあって正直、ローストビーフは私にとってさして重要ではない立ち位置でした。
でもこのたび、その認識を大々的に改めることにします。ローストビーフさん、いままでごめんなさい。そしてフレンドフーズさん、ありがとう。
フレンドフーズに名物は数あれど、なかでもローストビーフは代表的な自慢の逸品だとか。そんな特別な品がどうやってつくられているのか、ある日の様子を覗かせてもらいました。
△フレンドフーズオリジナル「ローストビーフ」
本題の前にまず驚かされたのは、厨房が売り場に直結していること。フレンドフーズのローストビーフは、売り場からショーケースを挟んで丸見えのところで調理されているのです。
取材中にも、お客さまから商品について質問されたスタッフが、調理の手を止めて応えていました。これってスーパーではなかなか見ない光景ではないだろうか、と小さく感動しました。
△フレンドフーズ お店奥の調理場の様子
さて、こちらはローストビーフの材料となる牛肉の塊、ラムイチ。ランプともいわれるもも肉のいちばんやわらかい希少部位です。
「フレンドフーズのローストビーフに使う肉は、ラムイチと決めています。あまり脂がのりすぎていてもしつこくなってしまうし、かといって脂が少なくても硬くなってしまうため、ほどよいサシが入っているものが適しています。個体差があるので、仕入れの際には実際に見て、触って、ベストな肉を選びます」
教えてくれたのは精肉部の部長、長谷直純さん。フレンドフーズで扱う肉は国産の黒毛和牛のみ。産地はそのときどきで変わりますが、この日は鹿児島県産でした。
△フレンドフーズ精肉部 長谷直純
「ローストビーフは、肉の素材がすべてです」と惣菜部の部長、濱本唯克さんが言えば、「でも、調理でよくも悪くもなりますから。精肉部でいいものを仕入れて、惣菜部でいいものをつくる。その両方があってこそ、おいしいものができるんです」と長谷さんが返します。
△フレンドフーズ惣菜部 濱本唯克
そこで、冒頭のローストビーフに対する先入観を伝えてみました。
「確かに、味つけ次第でどうにかなる部分はあります。それでもやっぱり、もともとの肉の味がよければそのぶん、もっとおいしくなりますので。だからうちのローストビーフは全然違うんだと思います」と、濱本さんは胸を張ります。
それでは、ローストビーフをつくっていただきましょう。
用意されたのは、お肉のほか、塩、黒胡椒、にんにく、フレッシュタイム、以上。
タイムがちょっと足りないからと、売り場に商品を取りにいく濱本さん。「えっ、売っている商品をそのまま原料として使うのですか!?」とびっくりして尋ねると、惣菜の材料は基本、店で取り扱っている商品と同じものを使っているとのこと。
ちなみにこの大量のにんにくもすべて国産だそうで。見えないところでコスト減=質を落としたりはしないのですね。というか、それがやはり、おいしさにそのまま反映されているということですね。恐れ入りました……。
グラム売りのためお客さまが選びやすいよう、故意に大きさをばらけさせた肉を縛り、タイムとにんにくを挟み込み、塩胡椒したらスチームオーブンに投入。
最初に強火で表面を焼いてから、低温でじっくり中まで火を通すこと30分から1時間(温度や時間他は企業秘密)。焼き上がったらすぐに真空パックし、ベストな状態の火入れをキープするために氷水に浸けます。
熱がとれたら完成。塊またはスライスにしてパッキングして、売り場に陳列されます。
こうしてみると、ごまかしの効かないじつにシンプルな味つけと調理。肉の質がそのまま仕上がりに影響するのがよくわかります。火の入れ加減が絶妙、ほどよいやわらかさと上品な香りで、ゆっくり堪能しながら食べたくなる味。
値段は少々張りますが、贅沢な食材使いを目の当たりにすれば、そして一度でも味わったなら、きっと納得するはずです。
1年のうち最もよく売れるのは年末だそう。クリスマスやお正月用のごちそうに求める方が多いのでしょう。スーパーのお惣菜の基本姿勢として、“普通”であることを大事にしているフレンドフーズですが、ローストビーフという特別なお惣菜も、この機会にぜひ試してほしいものです。
△フレンドフーズオリジナル「ローストビーフ」(塊肉でも販売中です!)
文・野村美丘(photopicnic)
1974年、東京都出身。フリーランスのインタビュー、執筆、編集業。文化、意匠、食、旅、犬猫など自分の生活の延長上をフィールドに公私混同で活動している。また、フォトグラファーの夫とphotopicnicを運営中。著書に『わたしをひらくしごと』。編集した本に『ホーチミンのおいしい!がとまらない』『定食パスタ』『暮らしのなかのSDGs─今と未来をつなげるものさし─』など。2020年秋、京都に拠点をつくった際、フレンドフーズに初めて足を踏み入れて即ファンに。フレンドフーズにその感激を伝えるべくメールしたところ社長から即レスがあり、さっそくこの連載を担当させていただくという幸運を手に入れました。
www.photopicnic.pics
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?