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世界史の沼にはまる本その2 キリスト教編

はじめに


 世界史の勉強や、西洋人の翻訳物の本を読むときに、どうしても関わってくるのが聖書です。西洋人の書いた本には、必ずと言っていいほど聖書の一節が書かれていて、それがその本を読むときのキーワードになっていたりするわけで、何の話なのか一応知っておくことが必要だったりするわけです。
 そこで、今回は聖書の内容を手軽に知るための本を紹介したいと思います。さらに、教養としてキリスト教という宗教を知る上で必要と思われる本を紹介したいと思います。

1.聖書


◎『小説「聖書」旧約編』(上下全二冊)
 ウォルター・ワンゲリン:著 仲村明子:訳 徳間書店 徳間文庫
(小説を読むと、旧約聖書の内容が分かるという本です。旧約聖書の創世記のアブラハムのあたりから話が始まり、人物を中心として、モーセや、ダビデ王やソロモン王など、主立った内容の話を読むことができます。人を殺す話や人が神によって滅ぼされる話が多いですよね。)

◎『小説「聖書」新訳編』
 ウォルター・ワンゲリン:著 仲村明子:訳 徳間書店 徳間文庫
(小説として、ヨハネの誕生から始まり、キリストの誕生など新訳聖書の内容を読むことができます。
 しかし、キリストの誕生を知ったヘロデ王は、男の赤ん坊をことごとく殺してしまったそうですが、神はその行為を止めることはできなかったのでしょうか? さらに、三人の聖人は、ヘロデ王の行いを予測できたにもかかわらず、なぜヘロデ王に本当のことを話してしまったのでしょうか? わからないですね。)

◎『小説「聖書」使徒行伝』(上下全二冊)
 ウォルター・ワンゲリン:著 仲村明子:訳 徳間書店 徳間文庫
(キリスト教の布教の様子を、ローマ帝国内の動きとからめて、小説にしたものです。何しろ、沢山の人が出てくるので、読むのが大変です。)

◎『マンガ 聖書物語 〈旧約編〉』
 樋口雅一:著 山口昇:監修 講談社 講談社+α文庫
(旧約聖書の中で、創世記・出エジプト記・ヨシュア記・サムエル記の主立った内容が漫画化されています。残りの部分は聖書物語と言うことで文章でまとめてあります。)

◎『マンガ 聖書物語 〈新訳編〉』
 樋口雅一:著 山口昇:監修 講談社 講談社+α文庫
(前半は、イエスの生涯を「マタイ」・「マルコ」・「ルカ」・「ヨハネ」の四福音書の内容をまとめた形で漫画化しています。後半は、「使徒行伝」の内容で、キリスト教の布教の内容になっています。)

◎『聖書の謎を解く ~誰もがわかる「福音書」入門~』
 三田誠広:著 PHP研究所 PHP文庫
(やさしく、読みやすく書かれている文章の裏を読まないと、聖書の本質は分からないとのことです。そして、磔になったイエスの最後の言葉、「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」そこに、イエスは神の子では無く人間であったということが示されているそうです。)

※聖書に関しては、漫画家のジョージ・秋山さんが、『聖書』(幻冬舎文庫 全五冊)と言う本を出しています。漫画と文章で聖書の内容を解説している本です。ぱらぱらっと見ただけですが、これも面白そうな本です。

2.キリスト教関連の本


◎『フローリアの「告白」』
 ヨースタイン・ゴルデル:著 池田香代子:訳 須田朗:監修 日本放送出版協会
(この本は、フローリアという女性の書いた手紙を読むことで、教父アウグスティヌスの書いた『告白録』の本を読んだ気になれるという優れものの本です。この本の方が、人間くさくて、聖書のような内容ですね。)

◎『背教者 ユリアヌス』 (上中下三冊)
 辻 邦生:著 中央公論新社 中公文庫
(なぜか、ローマ帝国の皇帝になってしまったユリアヌスさん。どちらかというと、ギリシア哲学に親しんでいたために、皇帝になると、キリスト教以外の宗教も自由に信仰できると言う政策を打ち立てました。それが、ローマ帝国支配を狙うキリスト教側との対立を生みました。結局、キリスト教側の裏切りにより、ペルシャとの戦争にかり出され、戦死してしまいました、さらには、「背教者」と言う汚名まで付けられてしまいました。かわいそうな人です。)

◎『魔女狩り』
 森島恒雄:著 岩波書店 岩波新書
(読んでいると、段々気持ち悪くなってくる本です。一神教の人々は、一度思い込むと無茶苦茶なことをするんですね。魔法使いというのは、キリスト教の伝道の時に聖職者が行ってきた「奇跡」と同じことをできてしまうところが、弾圧される原因になっていたのでしょうかね? )

◎『神の代理人』
 塩野七生:著 新潮社 新潮文庫
(ローマ教皇の話です。まあ、ローマ教皇の中にも色々な人がいるんですねと言うお話です。本当に、塩野七生さんは、原書を読み込んで、それを日本語で表現するという、その仕事量にただただ感心するばかりです。)
 
◎『十字軍物語』(全四巻)
 第一巻 神がそれを望んでおられる
 第二巻 イスラムの反撃
 第三巻 獅子王リチャード
 第四巻 十字軍の黄昏
 塩野七生:著 新潮社 新潮文庫
(十字軍の話は、世界史などではキリスト教側からの話がほとんどで、しかも、何年に誰が行ったとかそんなことだけで、本当は何が行われていたのかはあまり出てこないのですが、この本では、イスラム教側の話も出てきて、良いですね。結局十字軍というのは、上司の思いつきに振り回される部下たちという感じの構図であることが分かりますよね。)

◎『クアトロ・ラガッツイ ~天正少年使節と世界帝国~』
               (上下全二冊)
 若桑みどり:著 集英社 集英社文庫
(戦国時代の日本でのキリスト教の布教の方法について、詳しく書かれています。これにより、当時のカトリックが世界征服を目指した野望が見えてきます。宣教師による布教→布教地域の支配権を握る→植民地化という方法が日本でも行われようとしていたのでした。それに気付いた豊臣秀吉や徳川幕府はキリスト教弾圧に動いていきました。実際日本でも、キリスト教に実効支配された地域においては、仏教寺院や神社の破壊などが行われていたようです。特に、徳川幕府は寺に役所の出張所のような役割を持たせようとしたので、どうしても対立してしまいますよね。)

※そういえば、水木しげるの戦争関係のエッセイの中に、南太平洋ラバウルの野戦病院での話が出てきます。そこには、現地人との交流が書かれているのですが、その中に現地人の家にローマ字で書かれた現地の言葉であるカナカ語で書かれたバイブルがあって、ローマ字なので面白半分に皆の前で読み上げると、やたらと「パウロ」が出てくるので、そこで現地人のみなから「パウロ」と呼ばれるようになったと書かれています。バイブルがあると言うことは、南の島の山の中の村まで、宣教師が来たことがあると考えられます。よく考えてみると、すごいことですよね。(水木しげる:著 『水木しげるの娘に語るお父さんの戦記』 河出書房新社 河出文庫 など参照。)


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