見出し画像

香港で高校生していた私の好きなカフェ

香港でスターバックスと並んでメジャーなチェーン展開のカフェといえばPacific Coffeeだった。
スターバックスがグリーンとブラウン基調とするとPacific Coffeeはブラック基調のよりシックなイメージで、値段形態もメニューもあまり差異が無い。
家族では「パシコ」と愛称をつけ、よく「パシコ集合」したものだった。

ところで、パシコ以上にテンションがあがるカフェがあった。
Simply Lifeという名のベーカリーカフェで香港内にも数店舗しか展開が無い。
価格は日本でいうベーカリーのPaulくらいで(伝わるだろうか)、
価格がグレードアップした分スタバとパシコよりも雰囲気、味ともにさらに洗練されていた。

放課後母との待ち合わせ場所がSimply Lifeに決まるとそれはもうウキウキだった。イートインで食べられるバナナパイは1層目が生クリームたっぷり、2層目はなめらかなチョコレートムースで間にごろごろとしたバナナが顔を出し、土台を支えているパイはザクザクしていた。バナナパイと同じくらい気に入っていたのがブラックフォレスト。黒い森という名のケーキは発祥がドイツで上にこれでもかというほどのチョコレートの削り節が掛かっており、チョコレートスポンジの間に太っ腹なぶ厚さの生クリームとアメリカンチェリーがこれまたごろごろと入っている。
イートインで食べられるときはこのどちらかのケーキと表層の泡がもこもこしているカフェモカと頂くのが一興だった。

このカフェはテイクアウトも出来るので、ベーコンが巻かれたジューシーなパンやサクッサクのパンオショコラは授業合間のランチタイムによく買いに行ったものだった。

ちなみに、私の通っていた高校(インターナショナルスクール)はランチタイムになると教室から締め出された。
というのも、クラスルームのようなものは用意されておらず、先生の所有している授業の部屋に「訪問」する形式だったので、休憩時間になると「私外で食べるから」と先生が教室にカギをかけてしまう。
結果、生徒に残された道は隣接されているショッピングモールで食べるか、学校内の自分のロッカーの前で食べる(ハイスクールミュージカルみたいなロッカー形態だと考えてほしい)の2択になる。
しかしながら私の場合、割り当てられたロッカーの場所が悪く階段の踊り場で、そこはインド人の先輩グループの定位置になっていた。
彼等(彼女達もいた)はとてもジェントルでロッカーのものの出し入れをするときはすぐに退いてくれたのだけれども、毎日カレーやスパイスを使ったランチボックスを所持していたので、踊り場はカレーの香りで充満していた。
ということで、ロッカーの前で食べるという選択肢は私には残されておらず、仲の良い友人とSimply Lifeをテイクアウトしたり、フードコートで中国餃子や、時には海外進出に感謝して止まない銀だこやペッパーランチを楽しむことがほとんどだった。

話がずれてしまった。
帰国して10年ほど経つけれども、このSimply Lifeを超えるブラックフォレストとバナナパイに出会えていない。
何度Googleで「都内 バナナパイ」、「都内 ブラックフォレスト(フォレノワール)」と検索して食べに行っても当時のあの美味しさが蘇ってこない。

思い出補正もあるのかもしれない。
それでもいい。
香港に戻った際はSimply Lifeでケーキたちを頬張ると決めている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?