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売れっ子フリーランスの武器はクリエイティブ力とビジネスプロデュース力だった!

日本は経済大国と言われて久しいですが、国内総生産(GDP)は2010年に中国に抜かれ、2023年にはドイツに抜かれて世界4位に落ちてしまいました。

このようなニュースを耳にすると、つい世界における日本の競争力低下に悲観的になってしまうのではないでしょうか。

そんな日本が浮上する切り札となるのが「クリエティブ力だ」と説くのは、クリエイターとして多方面で活躍されている三浦崇宏さんです。

Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSグランプリ/総務大臣賞など華々しい受賞歴がある一方で、THE CREATIVE ACADEMYを主催するなど、クリエイティブ人材の育成にも尽力されている三浦さんに、日本でクリエイティブ力が求められている背景やクリエイティブ力の実践的な身に付け方についてお聞きしました。

※この記事は、フリーランス協会「Independent Power Fes 2023」内の三浦崇宏さんのセッション「クリエイティブ力とビジネスプロデュース力」の内容をもとに作成しました。

The Breakthrough Company GO 代表 三浦 崇宏さん

三浦 崇宏(みうら たかひろ)さん
The Breakthrough Company GO 代表、PR/CreativeDirector
2007年博報堂入社。マーケティング・PR・クリエイティブの3領域を経験、TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。「表現をつくるのではなく、現象を起こすのが仕事」が信条。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSグランプリ/総務大臣賞など受賞多数。著書『言語化力』(SBクリエイティブ)がAmazonのビジネス書ランキングで1位に。『超クリエイティブ 発想×実装で現実を動かす』(文藝春秋)。ほか著書5冊。東京大学、早稲田大学、筑波大学などで講師実績あり。THE CREATIVE ACADEMY主催。

なぜ今、日本にはクリエイターの力が必要なのか

前述の通り、世界のGDPランキングで2022年に3位だった日本は、2023年はドイツに抜かれて4位に転落。2040年には15位にまで落ちるという予測も出ています。人口が減少し、競争力が低下する日本。今後、浮上する手段はあるのかどうか、気がかりの人も少なくないでしょう。

三浦さんは、日本が浮上する切り札となる「クリエイティブ力」について、手にしていた水のペットボトルを例にして、解説してくれました。

「企業が成長するためには、今年1万本売れたこのペットボトルを来年は1万5千本売らないといけないということ。単純に考えて、日本の総人口は1億2,000万人なので、1年間で1万人の人が1本買ってくれていた状況から、1万5,000人の人が1本買ってくれる状況にしないといけない。

一方で、日本は人口が減少していて、2070年に総人口が8,700万人にまで減少すると将来予測が出ています。つまり1年間で1本買ってくれたら良い、という販売方法では、約8,000本しか売れないということです」

「市場が縮小しているのが日本なので、売上げを伸ばすのが難しくなる」と説く三浦さん。その解決策となるのは「リピートしてもらうこと」であり、「リピートしてもらうには、デザインを良くしたり、新しい意味を生み出したり、ブランディングすることが必要」と断言します。

そうした「リピートしてもらう」ための施策を担うのがクリエイターだが、「急速に人口減少が進行している日本市場では、リピートを促すだけでは、この競争力低下の流れを大きく変えることは難しい」とのこと。

そんな日本がこれから世界とどのように向き合えばよいのか、京都を例に話してくれました。

美しくて素敵で魅力的なものを作り上げる

「これからの日本は、ブランディングで勝負する以外にありません。例えば京都は世界の観光地ランキングでベスト5に必ず入っています。では、なぜ京都が素晴らしいと言われるのか。それは、高層ビルがひとつもないところに理由があります」

京都市では、景観保全のために建物の高さの上限が条例で決められていて、高層ビルや高層マンションは建てられません。経済の発展より景観保全を選んだ結果、京都は世界的に有数の観光地になったのです。

「経済を優先させようとしたら高層ビルを建てた方がいいに決まっているのに、街としての美しさや文化を守ることを選んで建てなかったのです。だから京都は世界の中で最も観光客が訪れる街になりました」 

日本が世界から愛され、尊敬されて、遊びに行きたいと思われる国であるためには、美しくて素敵で魅力的なものを作り上げること。そのためにクリエイティブ力が求められるのだと言います。

クリエイティブ力は、「運動神経」に近いもの

ペットボトルや京都の事例から、日本にとってクリエイティブ力が重要であることを伝えてくれた三浦さん。

続いて、「クリエイティブ力」という、抽象的でイメージが湧きづらい「チカラ」についても解説してくれました。

「クリエイティブ力は例えて言うなら運動神経に近いものです。コピーや映像は、サッカーやテニスのような個別の競技の部分です」

つまり、コピーや映像をうまく作れるのは、クリエイティブ力が高いからだそう。スポーツで言えば、サッカーやテニスが上手いのは、競技の技術力を支える運動神経があるからということです。

「クリエイティブ力とは、どのクリエイターにとっても基礎となる力」と語る三浦さん。では、どのように”基礎”を鍛えればいいのでしょうか。

「クリエイティブ力とは、想像し、創造する力です。イマジネーションの方の想像で、他者の感情を理解したり、世の中の少し先の未来がどう変わるのか考えます。そしてクリエーションの方の創造は、ブランドやプロジェクトなどを新しく生み出すことを指します」

大事なのは、想像と創造、どちらかひとつだけではダメで、このふたつが揃ってはじめてクリエイティブ力になるということなのだとか。

クリエイティブ力と同じぐらい重要な「ビジネスプロデュース力」

クリエイティブ力で新しい価値を生み出すことと同じぐらい重要なことがある、と三浦さんは言います。それは、新しい事業や新しいブランドを”ビジネス”として作りこんでいくことです。その際に求められるのが「ビジネスプロデュース力」です。

ビジネスをプロデュースするとはどういうことなのか。三浦さん曰く、「ビジネスをプロデュースするには、4つをマネジメントしなければいけない」とのこと。

「それは、お金、時間、クオリティ、モチベーションの4つをマネジメントすることです」

ビジネスプロデュースはその言葉から想像する通り、プロジェクトマネジメントに近い仕事。

基本となるのはお金と時間の管理の2つ。お金は報酬に対してどのぐらい利益を残すのか管理すること。そして、時間は定められた納期に間に合うようにチームメンバーの進捗状況のマネジメントを行うことです。

3つ目のクオリティのマネジメントは、「少しでも良い成果がでるように工夫すること」だと説きます。

これら3つのマネジメントまでできれば、一般的に良いビジネスプロデューサーだと言われるそうですが、三浦さんは4つ目に「モチベーションのマネジメント」を加えます。

「モチベーションのマネジメントとは、チームメンバーが気持ちよく仕事ができるように、場の空気を盛り上げたり、ときには少し厳しいことを言って気を引き締めるようにしたりして、メンバーの感情をコントロールすることです」

ここまでできれば、一流のビジネスプロデューサーになれるのだそうです。

フリーランスはビジネスプロデュース力を磨きやすい!?

実はフリーランスは、ビジネスプロデュース力を磨くチャンスがたくさんあるのだとか。

「引き受けた仕事にどれぐらいの労力をかけるのか自分の裁量にゆだねられているフリーランスは、ビジネスプロデュース力が必要です」

そして三浦さんは、ビジネスプロデュース力の1つ目のステップである「報酬」についての大事な考え方を教えてくれました。

「報酬はお金の場合もあれば、経験の場合もありますし、人脈や知名度の場合もあります。大事なのは、まずは何が報酬なのか決めること。この仕事から何を得られるのか意識して仕事を選ぶとよいのではないでしょうか」

「人脈や経験は長い目で見れば武器になるので、はじめのうちは利益が低くても仕事を受けた方が良いこともあります。とはいえ、お金がないと生きてはいけません。人脈・知識・お金・経験の報酬のバランスシートを作って、自分自身のビジネスプロデュースをしていくと良いと思います」

クリエイティブ力の高め方は問題意識を持つこと

最後に、三浦さんからクリエイティブ力の高め方についてアドバイスがありました。

「クリエイティブ力はものすごくシンプルです。インプット量を上げるか、吸収率を上げることで高まります」

読書量などのインプット量を増やす方法もあるが、「吸収率を上げる」ことが大事だと断言する三浦さん。どのように吸収率を上げればいいのでしょうか。

「たとえばですが、ある日突然旦那さんから別れ話を切り出されたらびっくりしますよね。たぶん昨日とは景色が変わって見えると思います。駅に貼ってある週刊誌の広告でタレントの誰々が不倫したとか、あるいは、離婚裁判に強い法律事務所のポスターが急に目に入ってくる。今まで気づかなかったのに、問題意識を持つとめちゃくちゃ情報が入ってくるのです。これが吸収率の良い状態です」

三浦さん自身は、仕事で色々な会社に関わっているため、常に解決しなければいけない「課題」が頭の中にある状態とのこと。問題意識を持ち、常にセンサーが立っているため、ニュースや本、映画などを見たりすると効果的に情報を吸収することができるのだそうです。

三浦さんのようにたくさんの案件に関わっている人は一握りかもしれません。しかし、仕事だけではなく、自分の趣味や人生を通して取り組みたいこと等の関心を広げて、情報の吸収率を高めていく。そこから、「想像し、創造する力」を鍛えてクリエイティブ力を高めていく。

今からすぐに始められそうな具体的なアドバイスをくれた三浦さん。皆さんは、どんな一歩を踏み出してみたいでしょうか。

取材・文/小日向佑月
編集プロダクション勤務、公認会計士資格取得を経てライターに。2014年よりWebメディアを中心に活動中。お金・会計・税金・働き方に関する記事を執筆。2003年より札幌在住。趣味は家庭菜園と読書。さとゆみビジネスライティングゼミ3期生。2児の母として教育や家族問題にも関心あり。https://twitter.com/yuzukohi_writer
https://note.com/joyous_aster332
撮影/鈴木江実子

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