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フリーランスが海外移住して生計を立てるには?

フリーランスのなかには、拠点を海外に持つ人も少なくありません。この記事を書いている私自身も2017年にオランダに移住し、ライターとして生計を立てています。


オランダに移住した理由はいくつかありますが、一番は日本以外の国で自分の力を試したかったからです。不確定なことが多い現代で、海外で道を切り拓くくらいのバイタリティーがあれば生活に困ることはないだろう、そして英語力を鍛えて様々な国の人と仕事をしたいと考えていました。


この記事をご覧の方の中には「いつか海外で暮らしたい」という人もいるのではないでしょうか。かつての私がそうでした。なので、これから海外でフリーランスとして活動したい方に向けて、私がこの3年間で経験してきたことや実際の仕事、生活のリアルな情報をお伝えできればと思います。

オランダで取得したフリーランスビザについて

オランダ、ドイツ、フランス、イタリアなど、ヨーロッパの様々な国で日本人フリーランスが活躍しています。私がオランダを選んだ理由は単純で、インターネットの記事に「オランダが移住先として人気。ビザも取得しやすい」と書かれていたからです。


2016年に実際にオランダに足を運んでみたところ、街の景観が美しく人も親切で、暮らしやすそうでした。また、オランダと日本が過去に結んだ条約の影響で、きちんと事業計画書が書ければフリーランスビザが降りやすいという背景もありました。

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(晴れた日のアムステルダム)

2017年5月にオランダに観光ビザで入国し、移民局や商工会議所に事業計画書を含む必要書類を提出してフリーランスビザの申請をしました。観光ビザで滞在できる期間は最大3ヶ月で、ビザの審査が長引きそうな場合は仮滞在証を発行してもらえます。時期によって、すぐに発行されることもあれば半年前後かかる場合もあります。私は5月後半から申請作業を始めて、最終的にビザが発行されたのは10月でした。

海外フリーランスの仕事とは

私が提供するサービスは、企業向けのライティングやWebサイト運用サービスです。日本でフリーランスとして活動していた時は、Webディレクションやコンテツマーケティングの仕事を請けることが多かったのですが、現在はライティング業が中心です。


収入源は、大きく分けて以下の3つに分類できます。

① 日本からの継続案件

② 海外在住のメリットを生かして獲得した新規案件

③ 海外での人脈で獲得した新規案件


日本でフリーランスとして活動していた頃からの継続案件が全体の50%を占めます。SEO記事やインタビュー記事、広告記事などを執筆しています。

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(オランダの街を探索して記事のネタを探している。この写真はアムステルダムにある「猫の博物館」です)

また、私は中学1年生から22年剣道を続けています。オランダに来る直前に五段に受かり、せっかくなのでオランダで剣道に関わる仕事もできないかなと考えていました。


最初は剣道雑誌で「海外剣道」をテーマに記事を執筆していたのですが、オランダに来てから半年が過ぎた頃、オランダ剣道代表のキャプテンから「剣道雑誌の翻訳ができないだろうか」と持ちかけられました。


ヨーロッパ、アフリカ、中東、北米、南米、オセアニア…様々な地域で剣道は愛好されて、世界剣道連盟への加盟国も年々増加しています。


しかし、剣道の技術に関する記事の数は日本に比べると圧倒的に少なく「もっと剣道の記事を読みたい」というニーズがあったのです。そこで、40年以上の歴史を持つ雑誌『剣道時代』に、英語版サイトの企画を提案しました。

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(運営に携わっている雑誌『剣道時代』の英語版Webマガジン)

雑誌『剣道時代』の英語版Webマガジンでは、月額6ユーロで200本以上の剣道に関する記事にアクセスでき、月4本新たな記事も配信されます。2年で有料会員は400名近くになり、様々な国の剣士が定期購読をしてくれています。YouTubeやFacebookのフォロワーも2万人近くに増えました。

上記は、海外在住であることを生かして獲得した案件ですが、収入の割合的には10%くらいです。他にもWebメディアに連載を持たせていただいたり、単発で記事を執筆することもあり、それらが収入の40%程度を占めます。


執筆テーマは、オランダのサーキュラーエコノミーやSDGs、働き方やフリーランスに関することなどです。オランダ企業のへの取材も行なっており、現地企業へのコンタクトからインタビュー、執筆、英語での確認、写真撮影など、一人で全部やることもあればチームで仕事をすることもあります。

海外フリーランスになるために必要なこと


オランダでフリーランスになるためには、まず第一にビザが必要です。ビザを取得するためには、自分のこれまでの経験やスキルを元に事業計画書を書いて、経済貢献し納税できることをアピールしなければなりません。

さらに、海外だからこそ高いコミュニケーション能力が必要です。多くの海外フリーランスは人脈ゼロの状態で現地にやってきます。日本では家族・学校・仕事・趣味など子供の頃から繋がってきたコミュニティがありますが、ここにはありません。私はかなり社交的な方なのですが、文化も言葉も、生活様式も違う国でゼロから交友関係を築くのは想像以上に大変なことでした。うまく言えないのですが、30年分何かが欠落しているような感覚があります。

移住に関する書類(オランダ語)、役所へのアポイントメント、商工会議所とのやりとり、納税、保険のことなども自分で対応する必要があります。日本みたいに丁寧に対応してもらえないこともあるので、時には強気に交渉することも必要です。


私は非常に気持ちが強くて「鋼のメンタル」とよく言われるのですが、それでもオランダに来て様々なトラブルが重なった時は気持ちが病んでしまい、仕事ができなくなった時期もありました。

英国大使館が『海外在住が及ぼす精神的な影響』というドキュメントを出していて非常に印象的だったのですが、(1)言葉(2)文化・習慣(3)自分の周りにいる人々(4)生活環境が変化することで、大きな喪失感を感じ、心身ともに不調になってしまう人も少なくないそうです。


このようにトラブルに見舞われた場合も、めげずに立ち上がり失敗から学ぶ気持ちが重要だと思います。失敗をただの「嫌な過去」と思わず、「大変だったけど、勉強になったな。」と、二度と繰り返さんとする姿勢・前に進む努力が重要だと思います。

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(アムステルダムのマーケット)

大変なこともありますが、楽しいこともたくさんあります。まず、何と言っても自由です。海外・国内問わず、フリーランスには働く場所、時間、仕事内容に裁量があります。誰かの指示を待つのではなく、自分のアイデアで仕事を創り出していける点は、フリーランスの醍醐味の一つと言えるでしょう。


海外フリーランスは、この点に加えて文化が異なる国での暮らしができるため、とても刺激的です。オランダに来て4年目を迎えた今も、日々何かしらの新鮮な発見があります。ヨーロッパは陸続きなので、隣国に気軽に行ける点も魅力です。

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この記事では、海外移住やフリーランスの生活に興味がある人に向けて、出来るだけリアルな情報をお伝えすることを目指しました。


よく「まり子さん毎日楽しそうですね」とか「海外移住素敵ですね!』と言われることがあるのですが、実際は日常のちょっとしたことでつまづいたり、トラブルが起こった時に誰も理解してくれなくて孤独を感じることも多々あります。


国をまたいだ引っ越しは大変で、「こんなにもコストと労力をかけたのに、結果が全然伴ってなくて費用対効果が全然出ていない…」と絶望的な気持ちになったこともありました。でも、オランダに来たことを後悔していません。「日本を出て、自分の力を試したい。挑戦したい」と、心から思っていたので、実行しなければ絶対に後悔していたと思います。


こんな感じの移住ライフなので「日本の生活がいやだから」とか「海外でキラキラした生活がしたい」という動機での移住はあまりお勧めできません。想像以上に泥臭く、日本の方が安心して暮らせると思います。


しかし、日本の外に出て自分の可能性を試したい場合や、新たな経験を積んでさらに成長したい場合は、海外移住には大きな可能性があると思います。


この記事に書いた私の実際の仕事内容や、これまでにオランダで経験してきたことが少しでも皆さんの参考になれば幸いです。


佐藤まり子(オランダ在住フリーライター)
IT企業や楽天株式会社を経て独立、Web構築やマーケティング業務に従事。2017年からはオランダに移住し記事執筆も開始。テーマは、ヨーロッパの価値観、フリーランス・副業などの働き方、海外剣道など。剣道歴20年、現在五段。twitter:@mariko_cabin442


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