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PRから染み出たHRへの興味を新たなキャリアに ”あえて”選んだフリーランスの道~WillとCanの交差点 第02回

「やりたいこと」だけでは食べていけない。「できること」だけでは満足できない。フリーランスとして長く働き続けるには、「やりたいこと(Will)」と「できること(Can)」の重なり、いわば「WillとCanの交差点」を見つけ、伸ばしていくことがとても大切です。

本連載ではCanを活かしながら、Willとの重なりを広げていくフリーランスを紹介。今回登場するのはPR・広報の緒方祥子さんです。数年間のフランス滞在のうちにHR(人事)領域の専門性を高めるため、正社員からフリーランスへと働き方の舵を切った緒方さん。自身の今とこれからを要素分解し、連続性を保ちながら”できること”を積み上げていくキャリア戦略は必見です!

 アイキャッチイラスト/萩原まお

想定外だったフリーランスという選択

こんにちは!PR/HRフリーランスをしているパリ在住の緒方 祥子 @oga_sho です。
今年の2月にフリーランスデビューしてから、フリーランスとしての自分の様子や思考を文章にするのは初めてなので、近況報告も兼ねた気楽な内容にできればと思います。

現在は、フランス・パリからフルリモート×時差ありながら、PR・採用広報領域を中心に、日本拠点スタートアップを常時4〜5社程度サポートしています。また、並行して組織・人事の大学院(MBA)もオンライン受講しており、フリーランスと学生の二足の草鞋を履く生活を過ごしています。

後述しますが、フリーランスになることは、実は私にとって「完全に予想外」でした。ただフリーランスになる以前から、Canを軸にしてWillが何なのかを考えたり、Canから染み出してスキルや経験を広げることでWillの実現に近づいたりと、CanとWillを行ったり来たりする中で、自分のキャリアが形作られてきたことを実感しています。

このnoteを通して、フリーランスの方はもちろん、キャリアに少しでもモヤっとを感じている方に、WillとCanの広げ方・つなげ方など私なりの考えを届けることで、何かのお役に立てれば嬉しいです。

夏になると日差しが気持ち良いテラス席で作業したりします

「切り出せるCanはなに?」から興味を持ったPR広報の仕事

自己紹介も兼ねて、私がフリーランスになるもっと前、具体的に言えば、営業経験しかなかった私がPRのキャリアに興味をもった時期の話をさせてください。

当時の私、社会人6年目の27歳。
リクルートからGoogleに転職し、法人営業の経験を着実に積み上げていた最中です。(本題ではないですが、リクルート時代は「Will/Can/Must」のワードは嫌気が差すほど聞かされました笑)
実はその頃、長く付き合っていたパートナーと結婚の話が具体化しはじめ、将来の話をする中で「そう遠くないうちに、海外に2年間研究留学することになる」ということを聞きました。遠距離期間が長かったことや、個人的にも海外に一度は住んでみたい!と思っていたこと(留学含め一度も海外に住んだことはありません)などから、話を聞いた当時から、海外に一緒に行く、ということだけは直感的に決めていました。

一方で、不安を感じていたのは「キャリアの断絶」。自分が当時Canとしていた営業職は、特に時差による商談・コミュニケーション等の機会損失が大きく、また在仏企業で働くには言語面の応募ハードルが高く、同じようにキャリアを続けていくのは現実的ではないと考えていました。また、私が得意とする営業スタイルが長期・深耕型のため、副業やBPO的には切り出しづらいCanだと当時は思っていました。
そんな漠然とした不安を抱えている時に、広報として働く大学からの友人が仕事について書いたブログを見かけ、ほとんど名前しか知らなかった(しかもキラキラ系マイナス先入観が、勝手ながら強かった)PR・広報という職種の解像度が一気に上がりました。今まで営業として培ったCanが活かせること、そしてプレスリリースやイベント、短期プロジェクトなど、比較的切り出しやすい業務が多いこと、さらに経営に近い思考ができること、などです。

当時からここまで言語化できていたわけではありませんが、キャリアが途絶えるかもしれない不安から、自分のCanを棚卸し・整理し、足りない部分に向けたアクションを取り始めたのが、結果として今につながっていると思います。
(PRを始めるためにとった具体的な行動に興味がある方は、こちらのnoteをご覧ください!)

Willに挑戦できたのは、自信も実績もあるCanがあったから

冒頭お伝えした通り、私がフリーランスのキャリアを始めたのは、全くもって予想外の展開でした。
Google退職後は、縁あってスタートアップ企業で無事PRとしてのキャリアを始めることができ、その企業には入社前から海外に行く予定があることも伝えていたので、渡仏後もフルリモート・フルタイムでPRの仕事を続けるつもりでした。

フリーランスのキャリアが選択肢として生まれた大きなきっかけは、PRだけでなく、HRとして人事・組織開発にも管掌範囲が広がったことです。実はPRと同じくらいHRは興味のある職だったので、未経験ながらきついと思うことは全くなく、がむしゃらに取り組めました。しかし興味・関心の高さゆえに、自分なりの意見や解決策を考えるものの、上手く伝わらないことも多く、歯痒さを感じることも増えました。関わるメンバーの人生やキャリアをより良いものにしながら、その人の成長が事業・組織の成長につながるように、我流で取り組むだけでなく、体系的かつ多様なHR知識のインプットをしたいと思う心境の変化がありました。

大学院進学は、その解決策として見つけた一つのオプションです。人事・組織について学べる大学院があることも、フルタイムで働きながら受講できるオンライン形式があることも、日本の国立大学と同等の学費で通えるMBAがあることも、詳しく調べてみるまでは全く知らない情報でした。
また同時に、2年間経験を積んだことで、Will→CanになったPR業が、比較的「切り出しやすく、市場ニーズが高い仕事」であることも、スタートアップ在籍時から副業案件の依頼を受けたり、直接の知り合い以外から相談をいただく機会が多かったりすることから実感していました。

Canとして自信も実績もあるPR業務で生計を立てながら、人事・組織に関わる知識や経験を得たいというWillを、大学院や複数企業への支援を通じて叶えられたら、それってすごく良いのではーー?組織に残るべきか悩むタイミングともちょうど重なり、中長期の自分にとってより良い選択をしようと3日ほど考えこんだ結果、会社を退職しフリーランスになることを決めました。
決断時点で顧客がいたわけではないので、いわばノープランでの独立でしたが、そんな大胆な決断ができたのも、自分のCanが市場に必要とされるという一定の自信があったからだと思います。

大学院はヨーロッパだけでなく、アフリカ・南米・中東など各国から参加者がおり、一緒に課題や授業に取り組んでいます

フリーランス業の秘訣は「CanーWill軸のポートフォリオ」

そんな流れでフリーランスとなり、早4ヶ月が経ちました。ありがたいことに、前職でできたつながりをはじめ、学生時代の友人やSNSを通じた知り合いなどからお声がけいただき、常時4〜5社程度の企業とご一緒させていただいてます。時間的にも、週半分程度の稼働で会社員時代と同等の生活をキープできるような余裕が生まれ、
・午前:企業との会議やコミュニケーション(時差的に同期できる時間帯なので)
・午後:非同期でできる作業、大学院の課題や関連する書籍等での勉強
・夕方:大学院授業、フリータイム
といったフレキシブルさとメリハリのあるスケジュールを過ごしており、パリ生活をさらに楽しめるようになりました。

手探り・ノープランで始めたフリーランス業ですが、実は最近「むやみやたらに仕事を増やさない」というマイルールを作りました。Will = 人事・組織に関わる知識や経験を得たい、という初心を忘れず、かつ有限の時間を効率的に分配するためには、仕事に向き合う意識の変化や基準が必要だなと思ったからです。
イメージとしては、「CanーWill」軸と「条件・報酬」軸の4象限でご依頼いただく企業や業務内容をプロットし、ポートフォリオのバランスを取っている感じです。

PRとして経験・実績があったり、すべきことや成功・成果イメージが見えやすいものは「Can」寄り、逆にHR・組織関連のものは「Will」寄り。Will業務はトライを増やして実績・経験にしたいのが第一なので条件もいくぶん差をつけたり、一方でCanに近い業務は、条件・報酬面も相応な形でご提案していたりします。生活に困らないという金銭的な安心は、心の余裕そして仕事の質にもつながるので見逃してはいけない点だと思います。

もちろん全てをカッチリこの図式にはめているわけではありません!
先方との関係性やその事業・サービスのフェーズも考慮しますし、また直接的に人事・組織の業務でなくても「良いな!」と思っている人や企業・業界の「中」の様子や思考回路が、会議やSlackから垣間見えるだけでも十分学びはあります。また、同じ企業に対して、最初はCan関連のサポートとして入り、Canの成果で関係・信頼構築を作りながら、先方ニーズとも合致したタイミングでWillのサポートをさせていただくなどのパターンもあり、臨機応変にCanとWillを組み合わせています。

そもそも企業がフリーランスの私たちに声をかける理由は、専門性=Canに期待して成果(物)をもたらすことだと思っているので、委託業務を通じたWillの実現を求めすぎない、という前提意識もあります。

とはいえ、(例外や曖昧さは許容しつつも)マイルールが全くないままに仕事を増やしてしまうと、「自分のCanを再利用するばかりで、Canの成長や広がりもなく、Willにも近づかないまま時間を消耗してしまう / 将来キャリアに見えない不安を抱えてしまう」ということになりかねないと、個人的には思っています。今、ご縁をいただいている仕事に全力で取り組むためにも、「なぜこの仕事をやっているのか?何のCan / Willにつながっているのか?」と自分自身に説明するルールづくりは、ぜひ皆さんにおすすめしたいです!

偶然の出会いを大切に、変化を楽しむキャリアを目指して

こういったキャリアに関する私のnoteを読んでくださった方から「昔からキャリアの軸を持って、論理的に歩んでこられたんですね!」と嬉しい感想をいただくこともあるのですが、全然そんなことはありません!新卒当時は「未来のキャリアが読めないこと」に怖さや不安を感じる性格でしたし、明確なWillのなさ」に劣等感を覚えていた時期もとても長かったです(リクルート定番の「WCMシート」のWill欄を書くのが毎回本当にイヤでした笑)。ですが、社会人として10年経った最近になってようやく「未来が読めない = 自分の可能性が無限大に広がっている証拠」とポジティブに思える思考に変わってきました。また「Willは曖昧でいいし、壮大なものじゃなくてもいい。偶然生まれた機会に一生懸命向き合えば、CanからWillが生まれることもある」という、Will至上主義から脱却できたことで、逆に視野・チャンスが拓けるようになりました。

キャリア論の中で、特に好きなものがクランボルツの「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」です。この理論のエッセンスは「個人のキャリアの8割は、予想しない偶然の出来事によって決まるが、その出来事はただ待っているだけでは巡り会えず、自ら意図して行動することによってその機会を増やせる」というものです。私の場合も、アンコントローラブルな出来事にも臆せず、Will / Canに基づいて行動・思考を続けてきたからこそ、キャリアの点が線そして面となり、自分では予想もできなかった面白いキャリアに辿り着けています。そして、フリーランスとしてゼロからスタートできたのは、Will / Canlの棚卸しができただけでなく、自分が仕事に限らず人生を通じて大事にしたい価値観を浮き彫りにできたので、とても良いタイミングになったと思います。

ここまでフリーランスになりたての近況をお伝えしましたが、ずっとこのワークスタイルを続けるかは分かりません。計画外に始まった今の生活も充実していますが、フランス滞在期間が決まっていることもあり、帰国後は組織・人事そして広報の専門性をもってどこかの企業・チームに属するのも良いし、直近の大学院科目が「アントレプレナーシップ」だったこともあり、小さくて良いので自分で事業を始めてみたい気持ちも出てきたり…。

少なくとも日本に帰国する2024年9月までは、今しかできない貴重なパリでのフリーランス生活を謳歌しつつも、これから先も仕事や学校・プライベートで生まれた偶然の出会いを大切に、そして自分が変わっていくことを恐れずに、予想できない出来事や変化を楽しみながら、キャリアを重ねていきたいと思います。

<パリにお越しの際は、どなたでもお気軽にご連絡ください!>

※海外での仕事やフリーランスは、渡航国や滞在ビザによって状況・条件・就業可否が大きく異なりますのでご注意ください。

緒方祥子
フリーランスPR/HR フランス・パリ在住
東京大学経済学部卒業後、リクルート住まいカンパニーでSUUMOの広告営業、Googleで営業及びBusiness Developmentを経て、YOUTRUSTへ。スタートアップの1人目広報として活動するうち、採用広報のほか採用・組織開発など人事領域へと仕事の幅を広げる。2022年からのフランス駐在帯同も重なり、働き方を見直し。現在は、フリーランスと学生の二足の草鞋生活を始める。
noteTwitter/ YOUTRUST


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