実は天職なんてなかった!? 元コロンビア大学教授が語る、仕事や幸福、人生について
コロナ禍をきっかけに、キャッシュレスやリモートワークが進むなど社会が大きく変わりました。
書類の押印が不要になったり、郵送手配やオンライン申請が可能になったりと仕事のお作法も変わりました。
この変化の中、「急に仕事内容が変わった!」という声をよく聞きました。それまで当たり前にやっていた仕事がいきなり不要になったり、仕事のフローが大きく変化したり。自分の仕事に戸惑いや焦りを感じた人も少なくないのではないでしょうか。
そこで改めて「仕事とは何か」という本質的な問いに立ち返ってみたいと思います。
今回オススメしたいのは『仕事と幸福、そして、人生について』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)です。
もともと『人は仕事を通じて幸福になる』というタイトルで出版されていた本の復刊だそうです。
著者はジョシュア・ハルバースタム氏。1934年にニューヨークで生まれ、ニューヨークタイムズの海外特派員として活躍しました。1964年ベトナム戦争報道で、ピューリッツァー賞を受賞するなど、アメリカを代表するジャーナリストです。
それだけではなく、コロンビア大学で哲学を教えながら、コンサルタントとして多くの有名企業でマーケティングやマネジメントを指導。哲学とビジネス両分野に関する著書を多数執筆されています。
本書は、そんな両分野における知見をもとに、働く理由や目的、ワークライフバランス、成功、自己評価、余暇などをテーマに、哲学的に論じた「仕事論」「人生論」です。
仕事が”持つこと” から ”すること”に変化
「仕事は持つことか、することか」
この難しい問いが冒頭に書かれてあります。
昔は生まれた環境によって、生涯の仕事が決まっていることも多く、自分の生きがいなどの視点で仕事を選ぶことはほとんどありませんでした(あらかじめ用意されていました)。
ですから、仕事を「持つ」という表現が適していました。名詞としての仕事です。
一方、現代は自分で仕事を選び、創り出し、責任を持ち、維持管理していかなくてはなりません。
仕事を「する」という表現が適しています。動詞としての仕事です。
このように仕事は「持つ」から、「する」へ変わってきたのです。
本には、以下のように書いてあります。
仕事を「する」ようになると、「どんな仕事をするか」「どうやって仕事をするか」「誰と仕事をするか」「いつ仕事をするか」など、仕事にまつわるあれこれを自分で決めていく必要があるのです。
この変化をチャンスと感じるか、試練と感じるか、自分の仕事への向き合い方が試されている気がします。
あくまでも職業を選ぶのは自分自身
「仕事が自分を選んだ」と考える人は昔から数多くいたそうです。
神様が自分だけに特別に授けてくれた仕事、自分の名前が書かれた札がついた仕事、いわゆる「天職」というものです。
著者はこの天職という考え方に懐疑的です。
職業選択は、環境、文化などの制約を受けるかもしれないが、「あくまでも職業を選ぶのは自分自身なのだ!」と書いてあります。
仕事を「持つ」から「する」に変わった現代、仕事が天から降りてくるのを待たずにやりたい仕事を自分で掴み取りに行ってもよい、ということを著者は言いたいのではないかと思いました。
受動的ではなく能動的、他責ではなく自責の視点で仕事を選びなさいと言われているような気がします。
すべての人が起業家
本には「これからは誰もが起業家精神を持たなくてはならない」と書いてあります。
なぜなら、これからの仕事は昔のように誰かに与えられたり、元から決まっているような「持つ」ものではなく、自己責任のもと自分で選び、または作りだし、維持管理していく「する」ことだからです。
企業に勤めているかどうかは関係ないと書いてあります。すべての人が自分で自分のオーナーになると。
続けてオーナーにとって大切なことが書いてあります。
望む結果を得るために必要な行動を取ることはできても、結果が保証されているわけではありません。環境要因など、自分でコントロールできることとできないこともあります。ただ、結果に至るプロセスだけは自分がコントロールできるのです。
とも書いてあります。
どんなに努力しても、思うような結果に繋がらないことはあります。
仮に結果に繋がらなかったとしても、「努力したこと」「誠実に向き合ったこと」。この行動と真摯な姿勢が未来の仕事やキャリアに繋がっていく、ということだと思います。
仕事は結果がでなければ意味がない、という考え方もあります。
しかし結果が出たとしてもそのプロセスが乱暴で強引だったとしたら、その人にもう一度オファーはくるでしょうか。
仕事で結果を出すことはもちろん大切ですが、それと同時に仕事のプロセスも大切にして丁寧な仕事をしていきたいものです。
余暇で「再生」するのは、自身のスピリット
かなり衝撃的な言葉です。
余暇とは単に仕事をしていない時間でも、休むことでも、気晴らしでもなく「目的意識を持ち、集中して行う活動」のことだと書いてあります。
余暇はレクリエーションとも言われます。
レクリエーション=re_creation
つまり余暇は「再生」という意味になります。
余暇で何を再生するのか。
本には「余暇で再生するものはわたし自身のスピリットだ」と書いてあります。
良い余暇は自分の内面の豊かさに繋がる、ということだと思います。
余暇は古代ギリシャ語で「schole(学校)」、ラテン語では「otium(教育)」という意味。
古代ギリシャ人やローマ人にとって余暇は休むことではなく、自分を成長させる必要不可欠な活動だったそうです。
忙しい現代に生きる私たちにとって、お休みの日に仕事に備えて体を休めることは大切です。ただもし少し余力があれば、古代ギリシャ人やローマ人を見習って、余暇時間を自分を再生させる時間として使ってみるのも有効かもしれません。
余暇で得た気づきや学びが自分を豊かにし、仕事にもよい影響をもたらしてくれるように思います。
自分の仕事は好きですか?
人生のかなりの時間を費やす仕事です。
だからこそ、その仕事時間がハッピーだったらきっと毎日がハッピーになるはずですよね。
・起業家精神で自分が自分のオーナーになる
・結果も大切だけれど、その過程も同じくらい大切にする
・自分の再生の為に余暇時間を使う
このあたりを意識して、今以上に自分の仕事が好きだと言えるようになりたいなと思います。
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