見出し画像

初めての消費税申告もこれでOK!フリーランスが押さえておきたい確定申告のツボ 2024年版

2024年はインボイス制度の開始以来、初めての確定申告。所得税はともかく、消費税の申告は初めてというフリーランスや副業ワーカーも多数いると予想されます。

そこで本稿では今キャッチアップしておきたい、確定申告のトピックをギュギュっとご紹介!『フリパラ』でもおなじみの税理士、宮崎雅大さんに消費税を中心に、申告時に気をつけるべきポイントを教えていただきました。また、年々利便性の高まるe-Tax(電子申告)にも注目。国税庁の方から、e-Taxの活用メリットを解説いただきました。

※この記事は、フリーランス協会主催「【2024最新版】確定申告アップデートポイントまるわかりセミナー」(2024年2月9日開催)をもとに作成しました。

トピック1 確定申告は下準備がカギ! e-Taxでサクッと進めよう

2023年度の所得税の確定申告期間は、2月16日~3月15日と例年同様。けれどもe-Taxでは期間前の受付も可能。「早い人は1月に申告を済ませ、既に還付を受けている人もいますよ」と宮崎さん。準備さえ整っているのなら、今すぐ申告するのがよさそうです。

宮崎雅大さん。セミナー登壇時には参加者から拍手の嵐が!

とはいえ漏れなく滞りなく申告するには、下準備がポイントに。下図の観点でチェックするとよいでしょう。特にマイナポータルとe-Taxを連携できると、作業はかなりラクになります。

「ただし、マイナンバーの電子証明書の暗証番号を間違えてロックがかかるなどして、e-Taxとの連携がうまくいかない場合も。直前に判明して、3月15日に間に合わないということがないよう、あらかじめマイナポータルとマイナンバーカードを紐づけしておくなど、着実に準備を進めておきましょう。また念のため、控除証明書が手元に揃っているかも確認しましょう」

余裕を持った準備には、スケジュール管理も重要に。宮﨑先生曰く、時間枠をあらかじめ確保しておくことがおすすめだそうです。

「フリーランスは時間の融通が利く分、打ち合わせなどを優先させて自分の作業を後回しにしがち。申告作業をする日をカレンダーに組みこんで、強い気持ちで時間を死守しましょう」

トピック2 インボイス制度開始後初の申告 押さえたい消費税のポイントはココ!

■3種から選ぶ 消費税の計算方法

そして今年の確定申告、インボイス登録をした人たちにとって最大の注目はやはり消費税。
(※インボイス登録をしていない免税事業者は、消費税申告の必要はありません。例年通り所得税申告だけ行ってください)

消費税には、大きく3つの納税方法があり、どれを選択するかによって、申告の手間や納税額が変わってきます。
インボイス番号登録のために新たに課税事業者となり、2年前の売上が1000万円以下だったフリーランスなら、「2割特例」を選ぶのが圧倒的に得策です。

「大手企業などが使う本則の申告方法では、売上における消費税総額と、経費で既に支払っている消費税とをそれぞれ集計し、差額を算出しなければなりません。しかし経費ごとに消費税率が8%か10%どちらになるのかや、支払先のインボイス番号を調べる必要があり、かなりの手間がかかります。

対する「簡易課税制度」は、支払った消費税を集計せず、ザックリ見なしで計算できる中小企業やフリーランス(2年前の売上が5千万円以下)向けの制度
さらに、今年からはフリーランスや小規模事業者(2年前の売上が1千万円以下かつインボイス登録のために新たに課税転換した事業者)向けの負担軽減措置として、2割特例が選択できます。

2割特例は、売上のうち消費税に該当する金額の2割、つまり売上全体の約2%程度を支払うという制度。税率区分や支払先のインボイス番号を確認する必要がないうえ、カメラマンやITエンジニアなど仕入れがそこまで発生しないフリーランスなら、2割特例のほうが本則よりも納税額が少なくなる傾向があります

2割特例について、さらに詳しく知りたい人はこちら!
国税庁特設サイトhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_2tokurei.htm
フリーランス協会セミナーレポート
https://blog.freelance-jp.org/20221223-16905/

■売上(受け取った消費税)の集計方法

次に押さえたいのが、売上消費税の集計対象となる期間。インボイス制度のために課税転換した人は、課税事業者となった日付をチェック!

「インボイス制度のスタートは2023年10月1日からです。開始日に間に合うよう登録した場合、2023年の消費税の課税対象となるのは10月1日から12月31日までの3カ月間。2023年の1年間ではないことに注意してください。10月1日以降にインボイス登録した人は、登録した日以降の売上消費税を集計します。また、インボイス事業者登録日を2024年1月1日からとした人は、今回の消費税申告は不要です」

そしてもうひとつ気をつけるべきは、「売上日」の定義です。請求書の日付や報酬の受取日と必ずしも一致しないことに注目します。セミナーでも売上日の考え方に関して、多数の質問が寄せられました。

「会計の基本は“発生主義”。たとえば2023年の12月中に納品して、報酬は翌年の1月に入金という場合、報酬をもらえる権利が発生したのは前年の2023年なので、2023年の売上に該当します。売上日が2023年の10月1日(登録事業者となった日)から12月31日に当てはまるものを、集計しましょう」

■これも売上対象に!? 消費税申告の盲点をおさえよう

所得税と消費税の売上の概念は、若干異なります。消費税の売上とは、事業活動で得られる収益すべてのこと。ということは、仕事で使っていた自動車やパソコンなどを売り払って得た下取り価格も、消費税の集計対象になります。

「これまで所得税のみ申告していた人は、意識することのなかった観点かと思います。ちなみに簡易課税制度では、これらは第四種事業に相当します。フリーランスで簡易課税制度を利用している人は、第五種事業で登録している人が多いと思います。本業での売上と固定資産の譲渡による売上では、みなし仕入率が異なる点に注意しましょう」

■支払った消費税の集計方法

続いて、支払った消費税の集計方法も確認していきます。
インボイス登録すると、事務作業が大変になるという噂を耳にして戦々恐々としているフリーランスもいるかと思います。これは、あくまで本則の集計方法を採用した場合の話です。

大企業や仕入原価が多い業種などで簡易課税制度や2割特例を使わない(使えない)場合は、納税額を計算するために、領収書のインボイス番号確認や、税率毎の区分集計が必要です。少額特例制度で、1万円未満の支払いはインボイス番号が無くても仕入税額控除可能ですが、いずれにしても昨年までは無かった作業が増えるのは大変です。

一方で、2割特例や簡易課税制度が使えるフリーランスは、こうした面倒は一切不要
売上高を基準にみなし税率で計算するため、受け取った領収書や請求書のインボイス番号有無や、消費税率は特に気にしなくて大丈夫です。

国税庁の確定申告書等作成コーナーの入力画面に沿って売上高を入力すれば、納付金額が自動計算されます。本則の納税方法で申告した場合の消費税額との比較もできますので、それなりに仕入原価があってどっちがお得か知りたいという方は、比較検討してみてくださいね。

それから納税した消費税は、所得税の申告において経費になることも、課税事業者なら絶対知っておきたいポイント!

「所得税申告の際、納税した消費税は事業に付随する費用として、経費にできます。消費税も含めて売上高を計上し、その上で経費欄に「消費税」または「租税公課」の項目を設けて記載するとよいでしょう。
集計した年(未払消費税等◎◎円/消費税等◎◎円として今回の申告で経費とする)または支払った年(来年の申告時に経費にする)、どちらに計上しても大丈夫です」

トピック3 e-Taxとマイナポータルの連携を活用せよ!

■初期設定さえできれば利便性を実感できるはず

今や確定申告のスタンダードとなりつつある、e-Tax(電子申告)。国税庁・個人課税課によれば、昨年(令和4年分)の申告では592万人がe-Tax経由で申告書を提出していて、全体の3分の2にあたるといいます。

さらに今年は、マイナポータルとの連携対象が拡大。中でも諸条件を満たした給与所得の源泉徴収票との連携が可能になり、会社員と並行して個人事業を営む人には朗報といえます。

「ほかにも収入や控除に関係するさまざまな情報が自動的に紐づけされ、手入力する手間が大幅に省けるのがマイナポータル連携のメリット。最初こそセッティングを必要としますが、一度済ませば申告作業の負荷が格段に減るはずです。e-TaxはUIの向上にも力を入れており、スマートフォンからの申告も可能です。ぜひご活用ください」(国税庁)

この場合はどうなの…? 消費税申告のギモンを解消

セミナーの最後は、税理士の宮崎さんが視聴者からの素朴なギモンに答えるQ&Aコーナーでした。とめどなく多くのご質問を頂き、時間を30分延長して答えられる限り答えていただきました。このレポートでは、特に消費税申告に関するQ&Aをピックしてご紹介します。

Q 簡易課税制度選択届出書を提出済みですが、2割特例に変更できますか?

A 簡易課税制度選択を届け出している方でも、2割特例の利用条件を満たしていれば、申告時に2割特例を選択することができます

Q 取引先にはインボイス登録を奨励する会社、登録しなくていいという会社、登録しなくてもこれまでどおり仕事を発注すると言ってくれる会社など、いろいろです。登録事業者になった場合、すべての売上に対して消費税を納めなければならないのでしょうか?それとも、インボイスを奨励した会社からの売上分に限って消費税を計上すればいいのでしょうか?

A 登録事業者になることを選択した場合は、売上全体が消費税の課税対象になります。取引先の意向は関係しないため、区別せずに売上集計してください

Q クレジット決済など年をまたいで引き落としされた分の経費は、消費税を本則で計上する際、どう扱えばよいのでしょう?

A 売上の集計方法のところで説明した「売上日」と考え方は同じです。サービスを受けた時点で相手に売上が発生しますので、年内に発生した経費と考えます。ということで、仮に今年の1月に引き落とされる場合でも、今回の消費税申告で集計する対象になります。

Q 本則方式で申告する場合、支払先の領収書にインボイス登録番号の間違いや書き忘れがあったら、修正して再発行してもらう必要はありますか?それとも登録番号を知っていれば、すべて仕入れ税額控除の対象と扱って良いですか?

A 本則の申告方式で仕入れ税額控除するためには、領収書に正しい番号が記載されている必要があるため、修正して再発行を依頼するのが良いです。ただし、2割特例や簡易課税制度で消費税申告をする場合は、番号は特に気にしなくて大丈夫です。

Q 昨年10月1日付で課税事業者登録しましたが、売上は0円で支出のみでした。このようなケースの場合、消費税の申告は不要でしょうか?

A 売上が立っていない場合は消費税の申告をしなくても問題ありませんが、大幅な赤字となり支払った消費税額が多い場合には、還付を受けられる可能性もあります。還付を受けるためには、通常の申告書に加えて『消費税の還付申告に関する明細書』(集計内容を補足説明するための書類)を作成し提出する必要があるため、その手間と還付金の額を天秤にかけて検討するとよいでしょう。なお、還付申告した場合は、納税申告した場合よりも、税務署からのお尋ねがきたり、追加資料提出を要求されたりするケースが多いため留意してください。

Q インボイス登録をしたものの、海外との取引が大半です。消費税の対象にならないはずですが、税務署から目をつけられないかヒヤヒヤしています。

A ポイントになるのは、税務署から指摘を受けたときに、輸出免税などの対象となる取引である証明ができるかです。よって海外取引の請求書など証明となる書類をまとめておいて、いつでも提出できるようにしておくとよいでしょう。中には、後から税務署から問合せが来るのを避けるため、申告時に証明書類を一緒に提出している方もいますが、そこまでするかどうかはご自身の判断でよいかと思います。

Q 昨年初めて予定納税をしました。今回の申告で注意したいポイントを教えてください。

A 申告時に予定納税で納めた分を記載しないと、税金を多く支払うことになるので注意が必要です。申告書様式でいうと㊿が該当します。必ず入力しましょう。

その他にも沢山のQ&Aがありましたが、全てをご覧になりたい方は、フリーランス協会のマイページでアーカイブ動画を公開しているので、ぜひご覧になってみてください。

教えてくれた人
宮崎雅大(みやざき・まさひろ)
2016年10月に宮崎雅大税理士事務所を開業。スタートアップや起業まもない顧客が多く、個人事業主からの相談も多い。クラウド会計導入など、業務効率改善に関する提案にも定評がある。確定申告・決算へ向けてゆるく帳簿を付けるもくもく会「ゆるちょぼ」を不定期で開催。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?