Zoomの「中の人」が語るリモートワーク使いこなし術
日本でもすっかり浸透した「リモートワーク」ですが、PCを職場から家庭やサードプレイスに移すだけがリモートワークではありません。
海外でのリモートワーク最新事情を、Web会議システム「Zoom」を提供するZVC Japanの佐賀文宣カントリーゼネラルマネージャーに聞いてみました。
海外はどう使ってる?リモートワーク最新事情
ZVC Japan カントリーゼネラルマネージャー 佐賀文宣さん
1992年に北海道大学工学部修士課程を修了し、日本アイ・ビー・エムに入社、PC部門で日本およびアジア太平洋地域担当プロダクトマーケティングやパートナーセールスを務める。その後、シスコシステムズ、ヴイエムウェアを経て、19年より現職。
日本でも多くの企業がリモートワークを取り入れるようになりました。とはいえ、まだリアルの会議をオンラインにしただけというケースが多いようです。今回は、Zoomが行っている最新の取り組みをご紹介いたしますので、みなさんの仕事をより効率するヒントにしていただけたらと思います。
まずは、海外でWeb会議システムを取り入れたリモートワークの最新事例を3つご紹介しましょう。
オンラインとオフラインのハイブリット事例3選
まず一つ目が、弁護士事務所がZoomを使った事例です。
コロナ禍でロックダウンが長期化した米・テキサス州では、裁判所が閉鎖された際に、有名な弁護士事務所・Smyser Kaplan & Veselka(SKV)がZoomを活用しました。SKVは裁判の手続きに、Zoom MeetingsとZoom Roomsを使い、リモートで18人の証人を尋問したり、何百点もの証拠を陳列したり、事前に録音した証言を裁判で共有するなどを試み、見事民事訴訟で勝訴。1億5800万ドルの損害賠償を受けることができました。
海外で柔軟な司法制度を取り入れている国ではこうした先進事例も出てきています。日本でも口頭弁論でのWeb会議が取り入れ始められており、今後の司法制度改革によって民事訴訟のオンライン化も進むでしょう。
二つ目が、盲導犬を指導するための相談サービスをリモートで行った事例です。
カナダの視覚障害者団体であるCNIB(Canadian National Institute for the Blind)は、Zoomを通して盲導犬の指導についての相談サービスを提供しています。
たとえば、盲導犬ボランティアは犬の行動を観察してクライアントに修正を提案したいのですが、実際に訪問することは難しいことでした。しかし、Zoomを利用することで、犬がクライアントと一緒に散歩する様子をリモートで観察し、遠隔で提案ができるようになりました。また、Zoomを利用することで、目の不自由な人も、住んでいる場所に関わらずオンライン相談会やサポートグループに気軽に参加できるようになりました。
CNIBと似たケースは日本でも始まっています。大分県や新潟県では、高齢者や障がい者向けに、Zoomを使ったリモート福祉や相談サービスを始めていますが、今後は私たちも自治体のサービスのオンラインシフトに向けたサービスをますます拡大していく考えです。
三つ目が、さまざまなプラットフォームと統合することで、リモートワークの効率化を図った事例です。
米・カリフォルニア州に本拠を置くテック系の会社・Workatoでは、ZoomのAPIを積極的に利用しています。
要するに、開発者はZoom Developer PlatformのAPIを利用し、Zoomのビデオと音声を、他のサービスや個人で開発したアプリに自由に統合できるというわけです。たとえば、営業チームが見込み客とのZoomミーティングの動画を、音声をAI解析するCRM「Gong」に自動アップロードするという仕組みを作りました。これは、社内の営業のコーチングに活用されたと言います。
このように、Zoom APIをさまざまなツールやプラットフォームとつなぎこむことで、リモートワークの効率化を図る企業もあります。
日本は対面を重視する文化であり、ビデオやオンラインコミュニケーションの浸透度は他国に比べるとそこまで進んでいませんでした。しかし世界的なパンデミックの影響からオンライン文化の浸透は急速であり、後れを取っていた医療や行政サービスの分野でも、徐々にオンライン化の議論が進みつつあります。DX推進の流れとも相まって、幅広い分野でのデジタル環境が整うことにより、オンラインとオフラインのハイブリッド社会が実現されることを期待しています。
オンラインでもリアル以上に充実した会議にする方法
ここまで最新事例を話してきましたが、そもそもリモートワークの真の目的とは、大切な人に「リアルで」もっと会いに行けるようになることではないでしょうか。
本当に会いたい人、大切な人には、やはりリアルに会うことが一番です。オンラインのコミュニケーションを日常的に取り入れることで、効率が上がり、時間に余裕ができるようになります。そうすることで、大切な人と会う時間を作ることができるわけです。オンラインとリアルの両立で、コミュニケーションはもっと豊かになるのではないでしょうか。
大切なのは、会議という概念を忘れることです。会議をオンラインからリアルに置き換えるというよりも、もっと広い意味でのビジネスや生活に、リモートの良さを取り入れる発想と勇気が大切だと思います。
これまで私たちは、企業や団体の中での会議をオンラインで実施しようとしてきました。しかし、コロナ禍を境として、企業や団体からは、その先の一般消費者や市民に対して、これまで対面で提供してきたサービスをオンラインで届けることができないかというご相談を多くいただくことになり、この1年はその解決のためのチャレンジをしてきました。
まだ課題として残っているのは、エッセンシャルワーカーなど、どんな環境でも現場に行き続けなければいけない方々への取り組みです。エッセンシャルワーカーの仕事の10%でもオンラインを持ち込むことができれば、日本全体の安全性や効率は飛躍的に向上するというデータがあります。
「中の人」が教える、Zoomの便利機能はこれだ!
Zoomの使い方として、私がまずおすすめしたいのは、まずは「カメラをオンにすること」です。
そもそも対面で会うときに顔を隠しませんよね。オンラインでもそれが当たり前だと思って利用することで、リアルに近い豊かなコミュニケーションにすることができます。
また、セキュリティの観点からも有効です。声だけで周りに誰がいるかわからない状況で会議をすることは、情報漏洩などセキュリティ上のリスクも高まります。
また、大人数のミーティングやウェビナーなどで大変役に立つのが、「breakout rooms」の機能です。
たとえば、各部門のミーティングなどではリーダーしか話さないことが多くなりがちです。しかし、breakout roomsを利用することで、少人数のグループに簡単にグループ分けして、情報共有や議論ができます。また、指示された時間になると、元のミーティングやウェビナーに戻ることができます。
もう一つおすすめしたいのが、「Dashboard」です。
Dashboardはビデオコミュニケーションの管理機能ですが、これを利用すると、音声やビデオの接続が悪いなどのトラブルが発生した場合に、すぐに原因を特定することができます。
また、各ユーザーの利用時間・量などのデータを簡単に確認できるので、リモートワーク中でもセキュリティー対策などの管理がどこからでもできます。
こうしたオンラインの機能を生かして、オフラインに役立ててみてください。
情報提供:フリーランス協会・賛助企業 ZVC Japan株式会社
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