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「あっちもこっちも捨てがたい…」移住先決め、最後は「直感」に従った

こんにちは、フリパラライターの豊田です。

ここ最近、知人から「移住した」「移住したい」という話を聞く機会が増えました。リモートワークの普及により、仕事を持ち運べるようになったことは、確実に移住のハードルを下げたと感じます。

私たちが移住を決意した2017年は、夫婦とも会社員で、リモートワークも一般的ではなかった頃でした。おまけに子どもは小学1年生、保育園児、そして末っ子妊娠中という状況で、フットワークが重くなる条件が揃っていました。この記事では、そんな私たちの移住プロセスを紹介していきます。

下記の「移住プロセス」のうち、この記事では4~7について書いていきます。(1~3はコチラ

1・したい暮らしを考える
2・ざっくり候補地を出す
3・情報収集
4・仕事の目処をつける
5・都道府県を決める
6・市町村を決める
7・家・その他を決める

4・仕事の目処をつける

移住を決意した私たちの前に立ちはだかったのは、仕事という壁でした。今は夫婦ともにフリーランスの私たちですが、当時は普通の会社員。独立するという選択肢は持っておらず、移住するためには「転職」しかないかな、と話していました。
そこでまずは、転職エージェントの知人に連絡を取り、地方に転職する場合、どんな選択肢が考えられるか、就職はできそうかなどを相談しました。結果、移住前と同等の給与や仕事内容の仕事は、一部の大きな都市にしかないことがわかりました

このように当初は転職を前提として動いていたものの、移住を検討する過程でライフプランや生活スタイルを見直したり、移住後に独立して働いている方の話を聞くうちに、一度会社員ではない働き方にチャレンジしてみようという気になっていきました。
どうやら夫にはもともと「いつかは独立したい」という思いがあったようで、移住の話をきっかけとしてそこに火がついたようでした。一方の私も、移住後の新生活が軌道に乗るまで、子どもたちを家で出迎えたいと考えていたこともあり、夫同様フリーランスの道を選ぶことにしました

夫婦同時に、移住とともに独立ということで、周囲には「思い切ったね」と驚かれました。ただ、いざとなったら就職できるような場所を移住地としたことに加え、移住で生活コストが下がることが、強い後押しとなりました。東京での高コストな生活を送っていたら、怖くてなかなかフリーランスへの転身に踏み切れなかったかもしれません。

さて、フリーランスで仕事をしている人の中には、場所に関わらず仕事ができる、という方も多いでしょう。それでも、移住後の仕事のストレスを減らしたり、仕事の可能性に幅を持たせ、移住後に後悔する可能性を低くするためにも、下記の観点を考慮した上で、移住先を考えておくと良いと思います。

・他の地域へのアクセスの良さ
・就職・転職する場合の職種の幅
・パートナーがいる場合、パートナーが移住先で就職・独立が可能か

移住先での仕事のつくりかたは人それぞれだと思います。けれどもある程度、移住前から仕事を「持っていく」ことができると、スムーズに移住生活をスタートすることができます。
私たちの場合も、独立後初の大きな仕事は前職の紹介でした。そのほか、業務委託元を見つけてから移住したパターンもよく聞きます。移住先で新しい仕事を始める場合も、最初は移住前のつながりで仕事をしつつ、徐々に地域の特性を理解し、人脈をつくっていくことで、スムーズに仕事を進められると思います。

5、都道府県を決める

私たちが「地方移住しよう」と思いついたとき、パッと思い浮かんだ移住先は、「札幌」「仙台」「福岡」の3都市でした。このうち、「札幌」と「仙台」は子供時代を過ごした場所ということもあり、都市の雰囲気や県民性等、ある程度わかっていました。

一方「福岡」には、私は一度も行ったことがなく、夫も2回ほど観光旅行で訪れたことがあるのみ。ただ「なんか良さそう」という印象があるだけでした。「まずはちゃんと見てみないとわからないね」ということで下見に行くことにしました。移住を思い立って2ヵ月後のことです。

ただ、下見といっても、福岡に対する知識が「屋台…太宰府天満宮?」程度だったため、そのままだと単なる観光旅行になってしまうのが目に見えていました。
そこでまた、ふるさと回帰センターに相談することにしました。

出発前日という急なお願いにも関わらず、想定している家賃と「通勤に便利」「海に近い」「子育て環境重視」といった暮らしに対する要望聞いてくれた上で、都心からベッドタウン、移住者に人気の海辺の街など見るべき箇所を6カ所ほどピックアップし、当日の行動プランも考えてくれました。
さらに、オススメ物件一覧や、学力テストの結果、こども医療費など子育て補助についての情報も添付してくれ、手厚いサービスに感動したことを覚えています。

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※曇天にも関わらず、海に入ってしまう子どもたち

そして当日、送ってくれた行動プランを元にレンタカーを借り、町を見てまわりました。

街の中心地は東京に引けを取らないくらい栄えているのに、少し車を走らせれば海や山が見えてきます。ほとんど海を見たことがなかった子どもたちは大はしゃぎでした。子どもが楽しそうに走っている姿をみて、いかに自分たちが常日頃、「子供がほかの人に迷惑をかけていないか」「子供が危険な目にあっていないか」に神経をとがらせているかを痛感しました。
何を食べても美味しいし、子供用の食器や椅子がどの店にも置いてあり、子連れでも気兼ねなく食事ができるのも嬉しいポイントでした。そして、福岡の人の、オープンで明るい人柄も印象的でした。

福岡以外にも、帰省がてら仙台の街をまわったり、都心への通勤が可能な鎌倉・三浦エリアも見にいきました。また、印象だけに引っ張られないよう、人口推移や年間を通しての気候、地震などの災害リスクなどデータ面での比較も行いました。また、「地方の教育はどんな感じなのかな?」「実家と遠く離れて、大丈夫かな…」など、不安を言語化しては夫婦で話し合い、データを調べて…という日々が続きました。

最終的に移住先を「福岡」に決定したのは「直感」です。実家が近い仙台も、仕事を変えなくていい鎌倉や三浦もそれぞれ魅力的でしたが、福岡への下見旅行のときに感じたわくわく感や、ここに住んでみたいなぁ…という思いを優先しよう、というのが、夫婦で最終的に出した結論でした。
行ってみて、もし合わなかったら戻ればいい、でも、「今行ってみたい」と2人同時に思えたのであれば、その気持ちを大事にしようと思ったのです。こうして、私たち一家は「福岡」への移住を決めたのでした。

移住体験談は数多くありますが、気候・食べ物・人や街の感じなど、相性の部分は、その場に行かないと絶対にわかりません。移住を考え始めたら、早いうちに一度、その場所へ足を運ぶことをオススメします。

6、市町村を決める

福岡県に移住する、ということは決まったけれど、ここからもまた長い道のりでした。どこの都道府県にも当てはまることですが、同じ県内でも、市町村区、さらにはその中の細かいエリアごとにまったく特色が違うのです

この頃はすでに、独立して仕事しようと決意していたものの、仕事で福岡都心へ行く可能性や、夫婦どちらかが会社員に戻る可能性も考えて、都心へのアクセスのいい市町村に絞って考えることにしました。一方、せっかく移住するのだから、福岡市の都心エリアではなく、自然がより身近に感じられるエリアがいいということは夫婦ともに一致した意見でした。

そうして候補に挙がったのは、福岡市の西エリアと、市内ではないけれど、福岡都心へのアクセスが良好である福津市、春日市、そして糸島市の4カ所。実際の暮らしを明確にイメージできるよう、下見前に住宅サイトで物件を探していくつかピックアップし、夫に2回目の下見に行ってもらいました。
現地では物件の内見とともに、周囲の環境や駅前の雰囲気、都心への距離や街の雰囲気などを確認、大量の写真とその場で感じた印象をLINEで実況してもらいました。また、要所要所でビデオ通話にしてもらい、自宅にいながら街の雰囲気を感じることもできました。

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※地下鉄の車窓から海が見えることに感動

そのほか、現地に住む友人や市役所の移住担当者の話も聞いた上で、都心との距離感と自然の豊かさのバランスがよかった「福岡県糸島市」に移住を決めたのでした。

住むエリアを決めるにあたって、福岡に住む友人たちの「本音の情報」は、大いに参考になりました。一方、移住候補先に知り合いがいなかった知人は、不動産屋さんからの情報をフル活用したそうです。長年その場所で不動産業を営んでいた方たちは、表には出てこない情報もたくさん知っています。複数の不動産屋にあたることで情報を集め、移住先を絞ったと言っていました。

7、家・その他を決める

ここまで来たら、いよいよ終盤、実際の家探しです。

移住先での家探しは本当に楽しかったです。東京時代も何度か引っ越しを経験しましたが、「居住快適性」「通勤利便性」「家賃」、すべての条件を揃った家をどうしても見つけられず、毎回「今回はどの条件をあきらめるか」を、夫婦ともにため息混じりで相談していました。
一方の移住先は、東京時代の半分ほどの家賃で、1.5倍ほどの広さの家がゴロゴロあります。駅まで1分だったり、海が近かったり、畑がついていたり、それどころか山がついていたりと、夢が広がる家もたくさんありました。夜な夜な住宅サイトを見てはお気に入り登録し、夫に下見に飛んでもらい内見、私はビデオ通話で確認しました。

検討するのは家だけではありません。子供たち3人それぞれの小学校、幼稚園、保育園のことも考えなくてはなりません。同じ市内の公立小学校であっても、1学年4クラスの大規模小学校から、全校生徒が10人にも満たない超小規模な小学校まで様々。また、住む場所によっては小学校や中学校まで3kmとかなり遠くなってしまうこともあり、家の候補が出てくるたび、最寄りの学校の場所と想定通学時間を確認していました。

公立一択だった小学校と違い、移住先の幼稚園や保育園は私立ばかり。それぞれ、ヨコミネ式やモンテッソーリ、キリスト教系や仏教系など特色があり、選択できる喜びがある反面、短期間で情報収集と判断をしなくてはいけないため大変でした。
土地勘のない場所なので、各幼稚園の住所を調べ、通える範囲なのかGoogleMapで確認し、空き状況を調べ、アポをとって見学と面談に行き…とやることは山盛りでした。

正直途中で疲れ、「もう適当でいいんじゃ…」と思うこともありましたが、「居住空間と子供の居場所」という最後の選択を間違えると、そもそも移住を志した意味がなくなる!とそのたびに奮起し、妥協せず粘りました。

結果として子どもたち3人とも、すっかり移住先に馴染んでくらしています。移住当時、保育園の年中だった長女は、移住先では幼稚園に転園しました。自由保育の新しい幼稚園は外遊びが好きな長女に合っていたようで、もともとの社交的な性格も手伝い、1週間後には方言を喋り出すなどあっという間に馴染んでくれました。

一方、移住当時2年生だった長男は、引っ越して半年ほどは「東京の方がよかった…」とつぶやくこともありました。「どうしても嫌なら東京に帰ろうね」と伝えつつ、内心ハラハラしながら様子を見ていましたが、新学年になり友だちが増えるとともに、学校生活を楽しめるように。今ではすっかり、家族よりも友だち優先。毎日の給食を楽しみに学校に通う様子を見て、ほっとしています。

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※内見の一コマ。気兼ねなく走れる戸建ての家は、自粛の際にとてもありがたかった

ところで、一般的に移住の際は、「最初は賃貸で様子を見てから、本格的に腰をすえる場所を探す」ことがセオリーと言われています。けれども、私たちの場合は、子供たちの転校・転園はこれが最後にしたかったので、仮住まいではなく、長く住むつもりで家探しをしていました。

ただ、条件が許せば、移住直後は仮住まいと考え、移住後にゆっくり家探しをする方がベターだと思います。私たちも入念にリサーチしたつもりでしたが、それでもやはり移住して1年くらい経つと、外からは見えていなかったエリアごとの特性が見えてくるからです。
私の住む市でも、マンションが多く都会的な雰囲気のエリアもあれば、昔からのコミュニティの結束が強いエリアもあり、利便性も雰囲気も本当に違います。できればそういった特性を掴んだ上で家探しをした方が、より理想の暮らしに近づけると思います。

2017年の夏に移住を決意し、家を決めたのが2018年の2月頃。約半年間の移住検討期間中は、判断が多くて大変でしたが、悩んだり、夫と大きく意見が対立したりしたことは不思議とありませんでした。

やはり最初の段階で、「こういう暮らしがしたい」をきちんとすり合わせていた結果だと思います。
「自給自足の暮らしって、ちょっといいよね」とか「やっぱり海のそばに住みたい!」と脱線しそうになったときも、「それって、最初に決めた『理想の暮らし』と違うよね?」とお互い軌道修正をしあえました。

コロナ下で、多くの人が自分の暮らしの再検討を始めています。気軽に下見旅行に行けないのがもどかしいけれど、移住に関する情報やサービスは、私たちが移住検討していた3年前とは比べものにならないくらい充実していきています。一人でも多く、理想の暮らしが実現できるよう、この記事が少しでもお役に立てたら何よりです。

【執筆】
豊田里美
早稲田大学第一文学部卒。ITベンチャー、住宅系の雑誌・Web編集などを経て、2018年家族5人で福岡県糸島市へIターン移住。現在はフリーランスのエディター・ライターとして、暮らし・働き方・移住等をテーマに活動中。Twitter @plumo_s

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