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信頼をしっかり積み上げて、代替されない存在になろう〜ワンランク上のフリーランスになる!〜

外資系コンサルティング会社を経て、現在、講師業や執筆業など、幅広く発信されている清水久三子さん。

「コンサルティング会社で学んだ考え方やビジネススキルは、独立後の自分の事業にも役立つことが多い」と語る清水さんは、実際、今まで仕事が途切れたことがなく、各方面で引っ張りだこだそう!

そんなプロフェッショナル・フリーランスの清水さんに、フリーランスとして一皮むけるための極意をご紹介いただくのが、本連載「ワンランク上のフリーランスになる!」です。
第2回目のテーマは「信頼をしっかり積み上げていく術」。どうすれば「信頼残高」が増えるのか、教えてもらいました!


そもそも、信頼残高とは何か? 

ところで、皆さんは「信頼残高」という言葉を聞いたことがありますか?
これはスティーブン・R・コヴィー氏の著書『7つの習慣』(キングベアー出版)の中で言及されている考え方で、人間関係における信頼のレベルを指し、相手との信頼感や安心感の強弱を銀行口座の残高に例えたものです。 

相手からの信頼が増す行為を「預け入れ」、相手の信頼を損ねる行為を「引き出し」として、相手の中にある信頼口座の残高を増やしていくことが大事だと説いています。
信頼残高が高い関係では、相互理解やコミュニケーションが円滑に進み、協力しやすくなり、低い関係では、誤解や対立が生じやすくなるということは想像しやすいでしょう。

信頼残高の中身

信頼の3つの特徴

会社員として働く場合には、所属している会社への信頼がベースにありますが、フリーランスとして働く場合には、ゼロから信頼残高を積み上げていくことになります。信頼残高を増やすにあたり、まずはその特徴を理解しましょう。

特徴①: 増えにくく、減りやすい

これはイメージしやすいと思いますが、すぐに信頼を得るのは難しい一方で、一度失ってしまった信頼の回復は難しいもの。常に積み上げることを意識し続ける必要があります。

特徴②:どれくらい残高があるのかお互いに分からない

銀行口座のように通帳がないので、残高がどれくらいあるのかが自分では分かりません。何気ない行動によって知らない間に残高が減っている可能性もあります。自分はAさんに対しての残高が100だったとしても、Aさんは自分に対して50の残高しかないということもありえるわけです。

特徴③: 付き合う人の数だけ口座がある

信頼口座は、一人ひとりとの人間関係にそれぞれ開設されます。付き合う相手が100人いれば100の口座があるわけです。たとえば、同じクライアント企業でも担当者Aさんとの口座の残高は高いけれど、新担当者Bさんとの口座ではお互いの残高が少ないので、積み上げるところから始めるということになります。

これらの特徴を踏まえ、フリーランスとしてどんなふうに信頼を積み上げていけばよいのかお話しします。

信頼性は3種類ある

一口に信頼と言いましたが、フリーランスとして提供するサービスに対する信頼には3つの種類があります。それぞれの特徴と高め方を見てみましょう。

①外在的信頼性:自分の周囲、外部から得られる信頼性

一つ目の外在的信頼性は、外部の権威に裏付けられた信頼です。
たとえば、専門家や顧客、コミュニティからの評価など外部からの評価です。フリーランスの場合には、受発注プラットフォームでの評価やSNSのフォロワーなどもこれにあたるでしょう。

現代はSNSによってその人がどれくらい信頼されているかが見える化されている時代と言えます。
私は書籍の執筆や寄稿などをしている関係で編集者の知人が多数いますが、執筆依頼をする際には、その人のSNSのフォロワーの数や反応を参考にするという方は意外といらしゃいます。フォロワー数を増やすことにやっきになる必要はありませんが、SNS上での評価はないよりはあったほうが信頼性が高まります。

②内在的信頼性:提供するサービスやアウトプットへの信頼性

二つ目は自分が提供するサービスやアウトプットの信頼性です。
どういったクライアントにどんなサービスを提供してきたのか、どのようなメディアに掲載されたのか・・・などこれまで積み上げてきた実績です。 

ホームページを持つことの是非は色々あると思いますが、初めて仕事を発注する側の気持ちになってみると、内在的信頼性を高める実績情報をポートフォリオとしてホームページに見える化しておくことは仕事を始める前に信頼残高を高める一つの手段と言えます。
また、クライアント担当者は自分に対して高い信頼残高があったとしても、会社への説明として実績情報が目にみえる形になっていたほうが説得しやすいでしょう。

③主体的信頼性:自分自身への信頼性

信頼残高というと、この三つ目の自分自身への信頼が思い浮かぶ方も多いでしょう。
フリーランスは自分自身が商品でもあるので、主体的信頼性を高めることは自分の競争優位性を築くことにもつながります。
とはいえ自分を信頼してもらう誠意ある行動は自分の気力や時間というリソースを大きく費やすことにもなります。忙しかったり、疲れていたりすると、分かっちゃいるけどできません・・・ということもあるでしょう。

そこで、できるだけ自分をすり減らさずに、効果的に信頼性を築いていくのかやり方をご紹介します。

自分をすりへらさずに、主体的信頼性を高めるには?

では、信頼を高める6つの行動と具体的な実践方法です。 

①相手を理解する

相手を理解するためには相手の話しを聞くことにつきますが、実際には自分ばかりが話してしまいがちです。相手への理解を深めるためには以下のことを行なってみましょう。 

打合せなど相手と対面する際に聞くことを3つ準備しておきます。聞く内容は仕事に関することでもそれ以外でも構いません。聞いた答えをノートなどにメモしておきます。打合せ後のメールや、次回の打合せの時にメモを見てその内容について触れるようにします。 

これは美容室や飲食店などでよくやられていることです。その日にお客様から聞いた話しをメモしておき、数ヶ月先に来店した時にはそのメモを見てから接客するのです。
相手を理解していてもそれを伝えなければ残高はなかなか増えません。これを習慣化することで理解も深まり、相手にもそれが伝わります。

②小さなことを気遣う

クッション言葉は、相手に対して思いやりを示すことができるため、気遣いを見せるうえで効果的な手段の一つです。クッション言葉とは、相手に直接的な意見や要望を伝える前に、相手の意見や状況に配慮するために使われる言葉のことを指します。

たとえば、「申し訳ありませんが」「お手を煩わせることになってしまいますが」「こちらの都合で恐縮ですが」「お疲れのところ恐縮ですが」などが挙げられます。クッション言葉を使うことで、相手に対して無理強いをせず、相手の気持ちや立場を配慮した言葉遣いをすることができます。
クッション言葉や相手を気遣う言葉などをパソコンにフレーズや文章ごと単語登録しておくことで気遣いを見せることも楽にできます。 

他にも相手を重要視していることを示すためにできるだけ早く対応するということも必要になりますが、他の仕事などもあり常に即レスできるとは限らないでしょう。
そういった場合には「只今、〇〇中のため、〇〇までに返信します」など自動応答メールをセットしておくなど、相手が不安にならないような対応をしておきましょう。 

③約束を守る

約束を守ることが重要なのは当たり前ですが、更に重要なのはできない約束をしないということです。
約束をする際には、「こういう条件であれば実行できる」という前提や「こういう状況になった場合には実行できない」というリスクを明確にしておきましょう。ここで認識の違いがあると、自分がいくら約束を守ろうと努力をしたとしても、相手は突然約束が破られたと思われてしまいます。

④誠実さを示す

可能であれば提供するサービスやアウトプットを相手が事前に見たり、試したりすることができるようにしておくのは信頼につながります。
私の場合は研修講師として講義をしている場面を録画しているものをお見せしたり、本契約をする前にお試し期間としてコンサルティングサービスの一部を体験していただくなどを行なっています。

こういった行いは相手の不安を理解したうえで、どういうアウトプットを出すのかを見せることで、誠実な行動をとるという意思を見せているわけです。

⑤冷静に前向きな対応をする

トラブルがあった時などに、ネガティブな感情を表に出しすぎてしまうと信頼残高はマイナスになりがちです。トラブルになると「これは大変だ。困りましたね」「あの時こうしておけばよかった。」「〇〇のせいだ」などネガティブな言葉になりがちです。こういう時に感情的にならずに前向きな発言をすることで信頼残高はプラスされます。

たとえば「大丈夫です。解決策を検討しましょう」「そういっていただけて助かります。」「これを機会に改善点をあらいだしましょう」「こういう失敗から成功している事例もたくさんあります」「今回の件でたくさん勉強させてもらいました」などです。トラブルの時こそ、信頼残高をプラスにするチャンスだと考えてみましょう。 

⑥信頼残高をチェックしてみる

 上記のように信頼残高を高める行動を意識的にとることは大切ですが、どれくらい積み上がっているかは自分では分からないもの。
そこで、残高チェックをするための聞き方をいくつかご紹介します。

<仕事開始前:期待の確認>
「アウトプットや進行で特に重要視していることは何ですか?」「過去の仕事で何か困ったことなどありましたか?」

<仕事進行中:問題やリスクの確認>
「これまでの進め方で変えたほうがよいことはありますか?」、「今、何か不安を感じていることはありますか?」、「ざっくばらんに気になった点などありましたらお聞かせください」 

<仕事終了後:満足度の確認>
「今回特にご満足いただいたのはどこですか?」、「次回以降の参考にさせていただきたいので、簡単なフィードバックシートへのご記入をお願いします」

仕事終了時は納品物のやりとりや、ラップアップミーティングなどがありますので、そのタイミングでフィードバックシートについて頭出しをしておくとよいでしょう。

フィードバックアンケートは、最近ではGoogleフォームなどで簡単に作成でき、相手の入力の手間もそれほどかかりません。一度作成しておけば次も使えますのでおすすめです。

また、どうしても自分では聞きにくい場合には関係者を通じて聞いてもらうというのも一つのやり方です。思いの外、きつい評価が出てくることもありえますが、逆にそれを知らないでいることのほうが、更なる残高のマイナスにつながるでしょう。 

信頼残高が増えれば、代替されない存在になれる

こういった仕事を進めている段階や終了時に積極的に評価を求めたり、改善しようという姿勢も信頼残高のプラスにつながります。

信頼残高は一朝一夕で積み上がるものではありませんが、信頼残高をプラスにすることは、代替不可能な存在になることでもあります。自分なりの信頼残高積み上げメソッドを作ってみてください。


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清水久三子
大手アパレル企業を経て、外資系コンサルティング会社にて企業変革戦略チームや人材育成部門のリーダーを歴任し、2013年に独立。ビジネス書の執筆やメディアへの寄稿、講演、研修講師などの活動を行う。国内では20冊、海外翻訳で10冊の著書を出版し、年間登壇は140日を超える。(2022年現在) 
著書は、『プロの資料作成力』『一流の学び方』(東洋経済新報社)、『1時間の仕事を15分で終わらせる』『一生食えるプロのPDCA』(かんき出版)『働くママの成功する中学受験』(世界文化社)他多数。Official HP:https://andcreate-official.com

 

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