Q.国民年金を払わないとどうなるの?
こんにちは。社労士の山口あす香です。
フリーランスやパラレルワーカーになりたい、と思っている会社員からよく聞かれる疑問にお答えする本連載。今回のテーマは「国民年金」です。
Q. 国民年金を払わないとどうなるの?
→国民年金を支払うのは義務。延滞金が発生したり、最後には差押えも! 制度を知って、自分に合った納付方法を選択しよう!
最近、SNSでも話題になった国民年金未納による差押さえのニュース。一定の知名度のある人気漫画家という点に加え、高額な差押さえ金だったこともあり、印象に残った人も多いのではないでしょうか?
以前、会社を辞めたら年金がどのぐらい減るのか、解説いたしました。
今回は、国民年金を支払わないとどうなるのか? 後から払うことはできるのか?などについて解説していきます。
国民年金はなぜあるの?
私たちは、生きていくなかで様々なリスクを抱えています。たとえば、死亡する、年を取るなどは、誰にでもいつかは起きることですが、障害を負うなどの不慮の事態はいつどんなタイミングで起きるか予測できません。公的年金制度はこうしたリスクを、社会全体で備えようという制度です。
基本的には、現役世代が支払った保険料を高齢者等の年金に充てる「世代間の支え合い」という考え方で成り立っています。
だからこそ、公的年金制度の1階部分である国民年金は、日本国内に住んでいる 20 歳以上 60 歳未満の方の加入が法律で義務付けられています。 払うか払わないかを選択できるものではないんですね。
※会社員や公務員の方は加えて、2階部分の厚生年金に加入します。
現役世代にとっては「少子高齢化が進む中、自分が年を取った時に本当に払った分が戻ってくるのだろうか?」と不安を感じることもあるかもしれません。
しかし、障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に支払われるもの。現役世代の方でも受け取ることができるのです。
国民年金って誰が入るの? どんな種類があるの?
ここで国民年金の被保険者、つまりどんな人が加入義務があって、どんな種類があるのか説明しましょう。
国民年金の被保険者には3種類あります。
・第一号被保険者(国民年金):学生や自営業者等
→各自で納付する
・第二号被保険者(国民年金、厚生年金):会社員、公務員等
→給与から天引きされ会社が納付
・第三号被保険者(国民年金):第二号被保険者に扶養されている配偶者
→自己負担なし
会社にずっと勤務しており、第二号被保険者だった方は、フリーランスになり第一号被保険者になった時に、手続きを忘れてしまうことがないように注意が必要です。
特に、独立後はバタバタしがちです。あらかじめ必要な手続きをリスト化しておくと良いでしょう。
国民年金を「未納」する前にできること
国民年金は加入が義務なゆえ、経済的に保険料の支払いが困難になった場合の免除や納付猶予の制度があります。
上記のようにきちんと手続きをしていれば、以下のメリットを受けることができます。
受給期間や年金額への影響は、下記の図の通りです。
延滞金はいつから発生するの?
では、もし「免除・猶予」の手続きをせず、「未納」の状態が続くとどうなるのでしょうか? 日本年金機構のホームページに記載されている内容を簡単にご紹介しましょう。
つまり、「納期限→納付勧奨→最終催告状の送付→督促状の送付」というように何段階も踏んだ上で、延滞金が発生します。
上図の通り、督促状の指定期間内に納付すれば、延滞金はかかりません。一方で、督促したにも関わらず納付されなかった場合は、本来の納付期限に遡った期間の延滞金が発生します。
また、延滞金の発生と共に、滞納した保険料を回収するための滞納処分に入ります。 年金機構が財産を調査し、その後「差押予告通知書」が届きます。「差押え」の実行はその後です。 いきなり差押えをされることはありません。
延滞金ってどのぐらいになるの?
たとえば令和4年4月分の国民年金保険料を、納付期限である令和4年5月31日に支払い忘れた場合を例に算出してみましょう。
もし、4カ月後の令和4年10月1日に納付した場合、延滞金はどれぐらいになるのでしょう?
金額は、納付期日の翌日から3カ月を超えたどうかで、変わってきます。
【3カ月以内の場合】
延滞金の割合=2.4%
6月〜8月末までの延滞金=16,500円×2.4%×92日÷365=約100円(99.8136…円)
【3カ月を経過した場合】
延滞金の割合=8.7%
9月の延滞金=16,500円×8.7%×30日÷365=約118円(117.9863…円)
つまり、4カ月分の延滞金の額は、
99.8136…円+117.9863…円=217.7999…円(50円未満の端数は切り捨て)で、延滞金は200円になります。
以上のように「免除・納付猶予」と「未納」は全く違います。そのままにせず、支払いが難しい場合はきちんと申請手続きをしましょう。
また、もちろん納期限までに支払うのが大前提ですが、うっかり支払いを忘れていた! という場合には気づいた時点で早めに支払うことが重要です。
ちなみに、国民年金の支払いは、国民年金法で「被保険者本人だけでなく、世帯主や配偶者も保険料を連帯して納付する義務を負う」と示されていることをご存知でしょうか。ご家族の財産を差押えられる可能性もあるんです。
本人だけではなく、家族にも迷惑がかかることをお忘れなきように!
自分に合った方法で納付の管理を!
忙しかったり、出張続きで、電話に出られない場合や届いている郵便物をすべてチェックできない事もあると思います。しかし延滞金が積み重なって大変なことになる前に郵便物をチェックする日を決めるなど、ルーティーンを作るようにしてはいかがでしょうか。
また、うっかり納付漏れを防ぐために口座振替の手続きやまとめて前払いをしておくこともオススメです。ちなみに前納や口座振替を当月末振替にすると割引が適用されますよ。
「免除・納付猶予」は前年の所得で判断されますが、失業や廃業による特例免除もありますので、支払が難しいなと思ったら、早めにお近くの年金事務所に早めに相談するようにしましょう。
日本年金機構 全国の相談・手続き窓口のリストはこちらから検索できます。
https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html
過去記事でも、退職時の年金や社会保険についてまとめていますので、参考にしてくださいね。
Q.会社を辞めると、もう社会保険には入れないんですか?
Q.独立しようか迷っているのですが、失業手当はもらえないですよね?
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