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Q.会社を辞めると、もう社会保険には入れないんですか?

こんにちは。社労士の山口あす香です。
フリーランスやパラレルワーカーになりたい、と思っている会社員からよく聞かれる疑問にお答えする本連載。今回のテーマは「社会保険」です。

Q.会社を辞めると、もう社会保険には入れないんですか?

→会社の任意継続に入るか、法人化して社会保険に加入する手がある。扶養が多い人は、国保よりも社保がお得になるケースも!

会社を退職して、気になることの一つに「退職後の健康保険をどうするか?」があると思います。

会社を辞めた後、どんな選択肢があるのか

フルタイムで会社員として働いていた方は、協会けんぽや健康保険組合等の社会保険に加入していた方が多いでしょう。ここからは社会保険については協会けんぽを前提にお話ししていきます。

日本は国民皆保険制度をとっているので、退職後も何かしらの健康保険に加入する義務があります。

会社を辞めた後に加入する健康保険として、思い浮かぶのは何でしょう?

「国民健康保険」という方が多いのではないでしょうか。
国民健康保険の加入するのは、下記のような方々なので、その通り!です。

・自営業の人
・退職した人
・家族の職場の健康保険に扶養家族として加入していない人

それでは会社を辞めると、国民健康保険への加入となり、もう社会保険に入れないのでしょうか?
答えはいいえ。
それぞれ条件はあるものの、他にも下記のような選択肢があります。

①任意継続保険に加入する
②ご家族が勤める会社の社会保険の被扶養者として加入する
③法人化して社会保険に加入する

順番に説明していきます。

①任意継続保険に加入する

任意継続保険とは、会社を退職するなど健康保険の被保険者の資格を喪失したときに、一定条件のもとに本人の希望により、個人で継続して加入できる制度です。

保険料はざっくりというと、今まで給与から控除されていた保険料の倍になります。在職中は約半分の保険料を会社が負担してくれていたので、退職後は会社負担分の保険料も支払わなければいけません。

倍の負担というとかなりの負担に感じますよね。ただ、保険料には上限があります。現在、退職時の標準報酬月額30万円を基にした額が上限です。
また、保険料は原則2年間変わりませんし、扶養家族の方の保険料はかかりません。

傷病手当金および出産手当金を除き、原則、在職中と同じ給付を受けることができます。

2年間という期限はあるものの、収入が多かった方ほど任意継続保険を選んだ方がお得になるケースが多いでしょう。

ただし、加入については注意が必要です。まず、次の2つの条件を満たしていることが必要です。

・退職日までに会社の健康保険に継続して2か月以上加入していること。
・資格喪失日(退職日の翌日等)から20日(20日目が土日・祝日の場合は翌営業日)以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること。

なお、郵送で提出する場合は、20日以内に書類が到着している必要がありますので、早めに送るようにしましょう。

そして、2年以内でも保険料を納付期限までに納付しなかったときは資格を喪失してしまうので、納付漏れがないようにチェックしましょう!口座振替の手続きをしておくと安心です。

参考:協会けんぽ 健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat650/

②ご家族の会社の社会保険に被扶養者として加入する

フリーランスとしてスタートするか転職活動をするか、まだ迷っているという場合もあるでしょう。ご家族が会社員の場合は、ご家族の会社の社会保険に被扶養者として加入するという方法もあります。

参考:被扶養者とは?
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3163/1959-230/

加入条件を説明しましょう。

被保険者であるご家族の方と同一世帯の場合は、年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1未満の場合は、被扶養者として加入できます。60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者のある方の年間収入の基準は180万円未満です。

「2分の1未満である場合」というのは、例えば被保険者(会社員のご家族)の年間収入が200万円であれば、被扶養者は100万円の以下の収入が加入条件になります。100万円であれば、年間130万円未満の条件も満たしていますので、被扶養者になれるということです。ですから、独立したばかりで年間収入が130万円以上見込めないのであれば、家族の扶養に入るのは一案でしょう。

ちなみに年間収入は退職前ではなく、退職後の見込み収入で判断されます。退職後は雇用保険の失業給付を受ける方も多いと思いますが、収入見込みには失業給付や公的年金、健康保険からの傷病手当金、出産手当金も含まれることを覚えておきましょう。

ここで失業給付についての例を見ておきましょう。
・自己都合の退職
・退職時の年齢が30歳以上45歳未満
・被保険者だった期間が10年以上20年未満
・離職前6か月の賃金総額2,500,000円
この例では、失業給付の総額だけで約800,000円になります。(会社都合の離職、就職困難者の場合は計算式が異なります)

失業給付(失業手当)の手続きについては過去記事にも掲載しておりますので、ご参照ください。

Q.独立しようか迷っているのですが、失業手当はもらえないですよね?
https://note.com/frepara/n/n7b5a668a8dd0

また、130万円未満というのは健康保険に関しての収入です。
税金や扶養手当の収入の条件を見ておきましょう。

・所得税
配偶者控除を受けられ、所得税がかからない給与収入の条件は、103万円以下です(給与所得のみの場合)。

参考:国税庁 パート収入はいくらまで所得税がかからないか
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1800.htm

・住民税
自治体によりますが、およそ100万円を超えるとかかってきます。お住まいの自治体のホームページ等を確認しておきましょう。

・会社の扶養手当
会社により異なりますので、規程等を確認しておきましょう。

今後の働き方や見込み収入を良く考えて手続きするようにしましょう。

健康保険に関する詳細は、被保険者の会社や会社の住所を管轄する年金事務所に確認してください。

参考:※日本年金機構 全国の相談・手続き窓口
https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html

③法人化して社会保険に加入する

ある程度の規模で事業をしたい、従業員を雇用したいなど、会社設立を視野に入れているケースでは、法人化して社会保険に加入するという選択肢もあります。

法人成りすると、会社として会社負担分の社会保険料の支払いもありますので、コストはかかりますが、条件を満たせば、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金などの支給を受けることができるというメリットもあります。

会社設立には準備期間も必要なので、一旦は任意継続保険や国民健康保険に加入するという方もいらっしゃるかもしれません。

国民健康保険について

以上、社会保険に加入するための3つのパターンについて説明してきました。最後に、冒頭でもお伝えした自営業の人、退職した人、家族の職場の健康保険に扶養家族として加入していない人が入る国民健康保険についても簡単に見ておきましょう。

国民健康保険は社会保険のような「扶養」の制度はなく、基本的に傷病手当金(※コロナ特例あり)、出産手当金の支給はありませんが、災害、失業、倒産、その他の事情によって保険料減額の申請ができる「減免」という制度があります。

保険料は前年の所得、世帯の人員に応じて決定されますので、あらかじめ保険料の概算を把握しておくことも大切です。

お住まいの市区町村によって保険料が変わりますので、正確な数字は窓口に問い合わせるのは前提ですが、「保険料はだいたいどれくらいかな?」と確認したい時にシミュレーションができる市区町村もありますので、利用してみるのも良いですね。

●東京都江戸川区保険料シミュレーション
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e053/kurashi/iryohoken/kokuho/hokenryou/hokenryo_simulation.html

また国民健康保険の加入手続きについては、退職後14日以内という期限があります。

これまでご説明した通り、健康保険の加入手続きにはそれぞれ期限があります。

手続きが遅れてしまうと、やむを得ない理由がない限り、任意継続保険は加入ができない、国民健康保険は遅れた期間にかかった医療費は全額自己負担になってしまうなど、大きな負担が発生してしまいます。

退職後に慌てないように、退職前から健康保険についてどうするのかしっかりと考えておくと良いですね。併せて、年金加入の手続きも忘れないようにしてくださいね。

退職後にどの健康保険を加入するかは、ご自身の状況や今後の働き方によって変わってきます。それぞれの保険制度の特徴や手続きについて知っておくことは、とても大切です。

(寄稿)山口 あす香
プレインスタイル代表/社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント
/健康経営エキスパートアドバイザー/フリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザー
大学卒業後、金融機関に入社。その後、ライフスタイルの変化に応じて正社員や派遣社員、パートタイム社員など様々な形態での働き方を経験する。ユーザー系IT企業では、管理、総務部門に8年間所属。現在は社会保険労務士、キャリアコンサルタントとして活動しながら一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会のジョブ創出プロジェクトに従事。「健やかに自分らしく働く」人を増やしたいとの想いで活動中。

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