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ファッションは誰のために

「その日」Ms. Frenzyは、徹夜明けで軽くシャワーを浴び、ノーメイクで『自分さえ良ければいい』という楽チンファッション(ダメージジーンズにテロテロの無地Tシャツ)もちろんネイルもしてないし、アクセサリーもつけず出勤。これは駆け出しのデザイナーとして馬車馬のようにひたすら働いていたとある20代前半の9月のお話し。

デザイナーの卵

その頃のMs. Frenzyは、美大を卒業して数年の下っ端デザイナーとして任された担当の仕事のほかに、先輩デザイナーのアシスタント、社長の秘書のような雑用もするという激務をこなしていた。(若いってすごいね)激務をものともせず軽やかにこなす姿は社内でも好評でみんなに可愛がってもらっていた。その結果、キャパオーバーという事態になるとは知らずに「もっとできます」をアピール。

日に日に増えるタスクは、表面張力でギリギリ器からこぼれない水のように増え、ある日突然決壊することに・・・。

激しい睡眠不足でもモチベーションが高すぎたMs. Frenzyはアドレナリンが出ることで平均睡眠時間3時間でも十分と言い切り、実際は1分1秒でも寝たいので削られる身支度時間。クライアントと会う時はジャケットを羽織ったりして誤魔化せばなんとかなる程度の適当で自分さえ楽チンであれば良い服装になっていった。そう、デザイナーとしてあるまじき方向に。

「その日」

そんな適当ファッション状態になっていたある日、冒頭に書いた「その日」がやってきた。徹夜明け、通勤電車内で仮眠して出勤。流石にヘロヘロ状態ではあったが、今日はデスクワークして帰るだけ、クライアントに会う予定もないし、急な外出が入ってもジャケットを羽織ってなんとかなると高を括っていた。
時は刻々とすぎ、夕方5時を回った頃電話が鳴り、先輩デザイナーが出た。
「それは素敵なお誘い。ではMs. Frenzyも連れて伺いますね」
と言って受話器を置いた先輩デザイナーはMs. Frenzyに向かって
「Aさんが高級フレンチ予約してあったのだけどお誘いした方2名が急用で行けなくなったのでぜひ代わりにどうかとお誘いくださったけど、一緒に、あ、、、、」

先輩はMs. Frenzyをじっと眺めて言葉を飲み込んだ。
若いとはいえノーメイク、連日の激務でヘロヘロの仕上がり、ファッションは手前勝手なテロテロファッション。
「今日のその格好では連れて行けないわね、さすがに・・・。残念だけど他の人を誘うわ」とあっさりチャンスを棒に振ったのであった。

自分では予約すらできない
紹介の方しか入店できないと聞いていたレストランだった
クライアントのAさんは以前「もう少しレディーになったら連れて行ってあげよう」と言ってくださっていた、社交辞令かなとも思ったけど、もしそんなチャンスがあったら素敵と心躍らせたレストラン。

自分のスキルアップにだけ集中し、自らのファッションにおける視覚伝達というファクターを忘れていた若かりし日のMs. Frenzy。調子に乗って、体力に任せ、デザイナーとしてどうあるべきかを俯瞰して見つめることができなくなっていた罰。あっさりと目の前に訪れたチャンスを掴めないという事態に愕然とした。

チャンスを棒に振った結果

この経験で学んだことは

  • ファッションは自分以外の一緒にいる人のためにする

  • 仕事は休息を含め望ましいボリュームを目指してお引き受けする(まあ無理することも多々あるけど)

  • 最低限のお化粧直しの道具は持ち歩く

  • チャンスは突然訪れる事もあるので用意周到にしておく

  • 俯瞰して物事は捉えるべき

  • さまざまな角度で見るべき

  • あらゆる可能性を考えて最小限の用意を心がけるべき

そして、素敵な仕事をする人は大抵、素敵な装いをしていることを知った。自分のためだけでなく、人のために、相手のために、を考えれば身繕いが洗練されることも当然のことだと知った。高級な服を着るということではなく、そういった心構えで選んだ服装は、急なデートのお誘いにも耐えられるということを知った。そう、仮に推しのバンドTシャツでもボトムは素敵なフレアスカートを着ていれば、カジュアルダウンしたオシャレなファッションにも十分なり得るのだから。

『仕事は心でするものだ』

「その日」の経験によって『仕事は心でするものだ』という原則を深く心に刻み込むことができ、同時にこの日を境に、いつデートに誘われてもOKな姿でいることを心がけるようになったMs. Frenzyは、そのおかげで何度も急に訪れた素敵な時間や経験を得るチャンスをモノにしてきた。

たかがファッション
されどファッション。

自分だけ楽だったらいいというファッションを否定するわけではありません。でもそれはホームウエアでと心がけて😉



FrenzyBeach(フレンジー・ビーチ)
商業デザイン20年超プロデューサー&デザイナーの日本人ニコイチ夫婦Unit。全体のプロデュースは夫Mr. Frenzy、作画をはじめアートワーク制作は妻Ms. Frenzy、という役割分担で活動。NFT、独自IP化に挑戦中。

↓作品紹介サイト


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