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起立性調節障害と不登校

今回は、起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:以下OD)と不登校について記事をまとめたいと思います。

2021年9月にフリースクールHIROの開校を予定していますが、「ODの管理をフリースクールの中でもしっかりと行っていきたい」という考えのもと、活動プログラム等には、ODの回復のプロセスに寄与できる可能性があるものを様々な医療機関との連携の元に進めています。


起立性調節障害とは?

起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)はODは脳循環・神経調節の機能不全が原因の疾患です。ODの診断基準、治療方法については、日本小児心身医学会のHP等で確認できます。

http://www.jisinsin.jp/index.htm                     (日本小児心身医学会HP)
http://www.jisinsin.jp/detail/01-tanaka.htm                (日本小児心身医学会HP、OD解説のページ)

ODは10歳~16歳が好発年齢であり、性差としては、男性:女性=1:1.5~2.0と女性の方が多い状況です。罹患人口は、軽症例を含めると、小学生の約5%、中学生の約10%。重症は約1%。不登校の約3~4割に併存することが明らかとなっており、決して稀ではない思春期における疾病の一つであることが理解できます。

ODの治療方法として、Bio-Psycho-Social(身体―心理―社会)の3つの視点において、以下6つの支援が必要とされています。

①理解を促すことを主とした「疾病教育」                           ②起立の仕方、水分摂取の方法、運動の推奨などの「非薬物療法(日常生活上の工夫)」                                        ③OD児の「学校受入れ体制構築」                               ④ミドドリン塩酸塩処方などの「薬物療法」                             ⑤医療機関と教育機関との連携を含めた「環境調整」                         ⑥認知行動療法などをの「心理療法」                               (日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)説明ホームページより)    

6点を分析すると、薬物療法を除き、ODの治療方法の多くは心理的社会的側面へのアプローチの傾向が強く、医療機関だけで治療が完結することが少ない疾患であると考えられます。

さらに言えば、「障害」という名前がつくにも関わらず、支援や制度等が整備されている訳では決してなく、今後の課題の一つであると考えています。


不登校とは?

文部科学省の定義を参照します。

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により登校しない、あるいはしたくともできない状況にある為に年間30日以上欠席した者の内、病気や経済的な理由による者を除いた者

となっています。                                                不登校の人数に関しては多くのメディアでも取り上げられています。

「不登校」「隠れ不登校」など、不登校状態は誰しもがなる可能性がある、社会環境なのだと思います。

しかしながら、これは個人的な印象ですが、「不登校」という言葉が好きではありません。「不」「登校」という言葉では、どうしてもネガティブなイメージを持ちやすく、その社会の意識改革も含めて必要だな…と感じています。登校する場所を選べることが出来るようになればいいのに…と理想的なことを述べてしまうのですが、学校は学びの場所の選択肢の1つというイメージにしていきたいのです…。


起立性調節障害と不登校の関係

不登校になる要因としては様々なことが考えられます。以下は「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」を掲載します。

要員の1つが「心身の不調」です。中でもODは決して稀ではない疾病であると考えられています。プライベートコミュニケーションレベルではありますが、日本小児心身医学会で話をしたOD専門医の先生方との話では「不登校状態に陥っている子どもたちの多くがOD症状を訴えている」という話がよくあります。

岡山県は、不登校支援の一環として、岡山県教育委員会/生徒指導推進室が主となり、「起立性調節障害の対応ガイドライン」を作成しています。

全国に先駆けての取り組みがどのような経緯で行われたのか、作成する際にどのような意図があったのか、作成後の効果についてはどのようになっているのかなど…様々な観点で現地に赴きインタビュー調査をさせていただきました。そこには、岡山県独自の不登校に対する対策のノウハウが凝縮されていました。本当に素晴らしい取り組みであると思います。出来れば同じような取り組みを全国各地でも出来たら素敵だなと今でも考えています。まずは、私の現在の地域(埼玉県)から取り組みの一手を打てればと思い、今でも活動を思案中/一部実行中です(笑)

話はODの症状と不登校戻りますが・・・
ODは、朝は体調が悪い(頭痛・腹痛・めまいなど)が昼過ぎくらいからは元気いっぱいといったような様相を呈し、現在でも疾病としての認識に乏しく一種の「怠け病」として学校教育現場では取り扱われることも少なくないのが現状です。また、ODの診断を受けた後にも学校とどのように関わっていったらよいのか、学習の遅れ、友人関係のもつれなど、本人及び保護者の心配は絶えないのが実情なのだと思います。

一方で、ODの治療や支援(上述のODの6つの治療方法)は医療機関を中心として行われていますが、疾病を抱えた当事者及び家族にとって、医療機関内での支援は患者や家族の病院の中にいる時の一側面での関りに過ぎず、(当然に医療機関での関り/治療や支援がなければならないことも理解している上で)社会の中で生活する割合が多い状況下では、どのように対処していったらよいのか/学校との連携が大切というが、どのようにしたら良いのか?そもそも学校に言ったけどODの理解が乏しく話にもならなかった、どうしたらよいか分からないなどはよく聞く話です。             などなど、生活の中で困惑する状況がたくさんあるのが通常であると自身の経験からも考えています。

結果、親子ともに「ODの対応」と「不登校」という2つの悩みを抱えるものであると考えられます。


まとめ(対策など)

基本的には「対策」が重要だと考えています。
ODの診療をしている医療機関では、OD症状を抱え長期不登校に悩む子どもの「生活リズム調整を目的とした入院プログラム」を実施していたりします。しかしながら、退院後の生活のことを同時に考えなければなりません。入退院は生活リズム調整の中の一部である為、社会生活に戻った後も生活リズムを維持した状況を保てる環境整備が特に重要であると考えています。

全国各地を見てもODの対策を重点的に行っているフリースクールは、独自調査結果ではありますが見つかりませんでした。もしかしたら行われているのかも知れませんが、インターネット上では見つけることが出来ませんでした。

上記のことなどからも、社会生活の中でのODの対策について、何をどのようにしたら良いのかを考えることはとても大切なことです。しかし、ODに対しての専門的知識が乏しい中で対策をすることには多くの危険性があるため、きちんと専門家との協働の中で、特にフリースクールなどの民間機関の環境づくりが重要であると考えています。

最後に、基本的に「不登校は誰でも起こりうること、決して特別なことではない」と思っています。また、ODに関しては、体が辛くて学校に行くことが出来ないのに、周囲から怠け病という目で見られるなど、心も身体も傷ついてしまう可能性があります。当事者の気持ちとしては、たまたまクラスに一人なのかも知れないし、そうすると自分だけは特別と考えてしまうこともあるのかも知れません。しかし、「学校に行けない/行くことが難しい」ということ以外、他には何も変わらないのだと私は思っています。

学校に行くことが難しければその時間をどのように過ごすか…。

学校に行くかどうかを考える時間に使うのもよいと思います。これからの自分の生き方を考える時間に使うもよいと思います。ちょっと楽しそうなことをしてみようかなと考えて行動する時間として使うもよいと思います。体をゆっくりと休める時間としてもよいと思います。

ただ、将来、あの時に過ごした時間は自分にとって大切な時間だった。
という時間になって欲しいと思っています。学校に行くことが出来ていない時間を「よい時間」として捉えられるようにしていけたらいいなと考えています。

学校に行かずとも学べる場所がある。心身を休み整える場所がある。自分について考える場所がある。やりたいことが見つかる&できる。社会との接点となっている。など、フリースクールHIROでは、一人一人の心身の体調に合わせて対応していきつつ、各々の生き方を応援していきます。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。


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