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『松聲館』の在り方 【比べない体育 No.10】

船橋インターナショナルスクールで、『古武術で遊ぼう』のクラスを担当してくださっている身体思想家の方条遼雨さんと共に、比べず、体を育んでいくための場について学びを深めるため、『比べない体育』という講座を開いています。詳しくは、こちらのnote記事へ。

この記事は、2021年5月開催分の講義ノート~【比べない体育 Vol.9】~のつづきです。◆は方条さんのお話、◇は参加者の方のお話です。 

◆甲野善紀先生の『松聲館』の在り方

私が学んでいる甲野善紀先生の『松聲館』は、組織を全く作っておらず、全国に世話人さんがいるけれども、甲野先生の弟子っていう人は一人もないんです。みんな弟子と名乗る、尊敬を込めて。でも、師匠は、弟子認定はしていないんです。皆、甲野先生を慕っていて、それぞれにやってきて、それぞれ勝手に教室を始めたりするんです。

私は甲野先生の教室アシスタントをしているのですが、以前新しい発見を伝えたらとても興味を持って下さって、どちらが弟子だかわからないくらいに何度も技を受けて下さったんです。そして、その場で先生が私の技をもとに新しい技を発見して、ちょっと試させてと他の人に技をかけたりする。そんなネットワークが甲野先生の周りにはあるんです。

一般的には、弟子が先生に「こんな技あるから受けて」とはなかなか言えないものです。でも、我々の関係だと言えてしまうんです。とはいえ私ぐらいだったりもするのですけど(笑)。

そういうやり取りで先生がすごく感謝してくれたりもして、私も感謝している。けれど、何の契約もしていないし上納金も払っていないんです。ただ、要所要所でそれぞれが恩返ししている。でもそれも個人的にそうしているだけなんです。そうしろと言われたわけでもなく、したくなっちゃうんです。ものすごく受けた恩恵が大きいから。

だから、本当にその人がものを教えるに値する人ならば、ガチガチの組織を作らなくても勝手に人は来るはずなんです。逆に、何らかの理由で縛り付けるのは自信がないから。恐ろしいことを1つ言うと、結婚とか恋人というラベルなんかもそうですね。本当に魅力があれば、そんなラベルを付けなくても相手は去っていかないものです。でも、不安だから夫婦だよねと確認したり、浮気はダメだよね、ルールは守らなきゃねと言ったりする。そして、実像とだんだん合わなくなってこんがらがったりする。

本来の在り方同士の繋がりにまかせていれば、去るべき時は去るし、来るべき時は来るし、関係性も楽になるかもしれないと思います。

様々なルールは、あたかもいいことのように使われているけれど、その裏では未熟さを隠すベールのような役割も果たしてしまっています。

それぞれの自由を担保しながら、だけど軽やかにつながって、何らかの繋がりゆえの色合いが現れてくるのが、場というものが創りだす組織だと思っています。

そして、人の身体もそういうものだと思っています。

Vol.11につづく

講師/方条遼雨
文責・写真/あおいえりか

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