見出し画像

2023年9月に読んだ、おすすめの本 その2

9月に読んだ本の中で、おすすめの本を紹介する第2回です。今回は、発売済みの『絵本/児童文学/JA文学 等』から5冊を紹介します。

🌟発売済み「絵本/児童文学/JA文学 等」

「風の丘のルルー⑥ 魔女のルルーと魔法使いの塔」 村山早紀 著
風の丘にルルーが住んみ始めてから20年が過ぎた。ルルーが両親や姉を失う原因となった100年以上前からの魔女への偏見がほぼなくなったのは、病を癒やす彼女の働きがとても大きい。 そんなルルーが、盗賊を率いる(まだそのような存在がいるとは予想しなかった)悪しき魔法使いである青年の暗い執念と、はるか昔に都を封じた善なる魔法使いの努力と無念。そして、人知れず存在する2人の優しい幽霊の願い。それぞれの想いに触れる。
このシリーズは、長きに渡って(見た目は少女のままの)ルルーの精神的な成長を描いてきた。そして残すはあと1巻。

「ソラモリさんとわたし」 はんだ浩恵 著
小学生6年生の美話とコピーライターのソラモリさんとの、夏休みの間の交流。 鋭い感性の言葉のやり取りに読み言ってしまう。そこで美話は何を感じ、何に気づき、なぜまた歩み出せたか。彼女のストレートな一人語りに、笑い、悲しみ、共感し、そのして応援して欲しい。
そして、はんだ浩恵先生のデビュー作である本書(2011年)を読んだら、2023年10月6日に発売の続編「満月のとちゅう」(既にNetGalleyでゲラを先読み済み)もぜひ読んでほしい。

「とっておきの詩」 村上しいこ 著 市居みか
小学生の頃、国語で詩を書くのは本当に苦手だった。まず「何をテーマにすればいい?」、次に「どうに書けばいい?」と疑問符だらけだった。
だから、これの本を読んで、グループで作り合うこんな楽しい詩の書き方があるとは想いもしなかった。これなら、小学生の頃の僕でも詩が嫌いにはならなかったろう。 きれいな言葉でなくても、技巧なんてなくても、その時の心が滲み出ていればそれは詩。書く子も教える人も読んでほしいな。

「暗闇に能面ひっそり」 佐藤まどか 著
4年生の宗太の子気味良い語り。ホラーチックなタイトルは、宗太が能面の真髄に触れる場面。そして能と面の幽玄美を目の当たりにし、能面という伝統的なものづくりを体験する。そんな経験が、宋太に自分のまわりの人間関係に目を向けさせていく。 文と絵が支え合って綴られていく、宗太の未来に向けた物語。
ふと思い立ち、佐藤まどか先生が書かれた児童文学で読んだ作品の中から、ものづくり/芸術に関係した作品を並べてみた。
 『一〇五度』……工業デザイナー
 『アドリブ』……フルート奏者
 『ノクツドウライオウ』……靴職人
 『スネークダンス』……アートパフォーマンス
 『トーキングドラム』……ストリートライブ
 『暗やみに能面ひっそり』……能面
伝統的なものづくりや未来に向けてのものづくり、さらに様々な芸術に挑む様子。1作でも大変な取材などが必要だと思うのに、なんと多様な。更にイタリア在住なのに舞台を日本にして。 頭が下がる思いだった。

「ココロノナカノノノ」戸森しるこ 著 カシワイ
寧音には母親の胎内にいる時に消えた双子、VanishingTwinの野乃が。比企には誰にも見えない友だち、ImaginaryFriendのスウが、ともに寄り添う。CommonRealityは存在しない。一人一人が生きる、それぞれの現実が存在する。そんな互いの現実を認め合うのが、これからの多様性の時代において相手を大切にする第一歩だと思った。
そして、Introductionを読み返して、これを「誰」が書いたのか、そしてその想いを感じて、改めて涙ぐんだ。
読み手である子ども達に、人の多様性をしっかり伝えた初の児童文学「ぼくたちのリアル」(2016 講談社児童文学新人賞など複数の文学賞を受賞)でデビューした戸森先生。彼女はそのスタンスを貫き、多様性を扱った児童文学アンソロジー「君色パレット」全3巻では、全体のシンボルと言うべき第1巻「ちょっと気になるあの人」の第1話を担当して「日傘のきみ」を書いた。このように、常に一歩先を描いてきた戸森先生の、また新たな一歩。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?