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「笑顔は、どんな政治的メッセージより、届く」新アルバム”Brought Back Without Souvenirs “を発表する→(yajirushi)にインタビュー:その1)



ーアルバムのコンセプトは?
「3つある。前作よりも良いものにすること。ルーツを忘れないこと。そして、面白いアルバムにすること。1番目については、まあ当然だよね。聞いた人がどう評価するかはわからないけれど、少なくともおれたちとしては、前作と同じことをなぞるだのだけは避けたつもりだ。まあそもそもKumeが入って初めてのアルバム作りだから、同じなわけはないんだけどね。曲、楽器、録音のやり方…全てを前と少しずつ変えてみて、より良いものにしようと努力したつもりだよ。気に入ってくれるといいんだけどね」

「ルーツのことについては、前作の時よりずっと深く考えた。俺は元々、ボブ・ディランに触発されて歌うことを始めた。そして、ティーンエイジャーの頃から、ZEPとパンクムーヴメントがアイドルだった。大人になってからは、SKIP JAMESやSON HOUSEのようなフォーキーなブルース、JOHNNY CASHをずっと聞いていた。それをアルバムに反映させたかったんだ。」
「Jポップの誕生以来、日本のポップスとロックは、Jと名づければどんなことをやってもいい、みたいな風潮になったよね。それは裏返せば、伝統の軽視でもある。それは、音楽のコアにある、何か深遠なものを捨て去ることだし、音楽そのものが軽薄になる。他の人はそれでいいかもしれないけど、俺はそうなりたくなかった。やっぱりボブディランは偉大だよ。」

「音楽は作者のムードを常に反映していると思う。前作における俺は、ちょっとダウナーなムードだったから、それを映し出した、ちょっと暗くてメランコリックなものになったと思う。その後、トラブルをなんとか潜り抜けて、俺はちょっとだけ軽くなったんだ。それで、次作は前作よりもっとハッピーな聞こえ方にしたかったんだ。黒い革ジャンに黒T、スキニーなジーンズでシャウトする、いわゆる「陰鬱でかっこいい」ロッカーに聞こえるのだけは避けたかった。フツーに生活している人がクスッと笑えるような、そして、チョットだけうるっとくる、そんなアルバムになったと思う。そう、コミックバンドめいた何か、だね。」
「俺は北野武が好きだ。「ソナチネ」に代表される彼の映画に俺はだいぶ影響を受けている。その北野が一時期、コミックバンドを組んだことがあったんだ。それは無惨なほどの大失敗に、俺には見えた。だけど、北野がやりたかったことは理解できた。今作は、北野が失敗したことの仇討ちとも言える。」

「今作には、ロックという枠組みを外れた曲が何曲もある。フォークロアだったり、カントリーだったり、テクノめいたもの、ロリポップもある。カラフルなマテリアルだけどまとめる自信はあった。それは俺自身がルーツとブルースを忘れないでいたからだと思う。全部→でなきゃできない、って思えるんだ。だから買った人は、次に何が出てくるのか、楽しみにしてほしい。」

ーアルバムのタイトルについて。
「Brought Back Without Souvenirs」っていうんだけど、特にこのタイトルには意味はないよ。単に思いつきだけでつけたんだ。響きが良かったんだね。アーティストの中には、アルバムに込められた精神的意義をタイトルに象徴させようとする人がいるけど、俺は、そういう行為はダサいと思うんだ。アーティストとリスナーの関係は、双方の魂のぶつかり合いとは限らない。朝、ダイニングでラジオをつけて「ながら聞き」する人だっているだろう。」
「アーティスト側からしても、自分の曲たちがこういうメッセージを持っていると、リスナーに100%伝わってほしい、とは、俺は考えていないんだ。今作に込められたメッセージ、それはただ「楽しんでほしい」ということだけ。笑顔はきっと、どんな政治的メッセージよりも届く。戦下であってもね。俺はそう信じるよ」

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