見出し画像

“CREATURES” 出演アーティスト紹介 (1):Very Ape

ヴォーカルとドラムの2ピースである。これをバンドと言っていいのか、概念スレスレのところでやはり、バンドである。しかも、極上のバンドである。刮目すべし。但し、カッと見開いた貴方の目は、いつの間にか涙で溢れているであろう。こんな編成で、心に染みる、しかも激しいバンドを、俺は見たことがない。

人生をそのまんま歌ったいわば「体当たり」の歌は、気をつけないと、忽ち「シロート臭さ」の崖に落ちてゆく。しかし彼らにはそれが微塵もない。それは恐らく、歌詞の譜割とリズムの、ほぼ完璧な同期のおかげだろう。これこそが、プロの芸である。

だが、それとは別に、俺は彼らの歌にしばしば、なんと言うのだろう、空しいような、ひとり語りのような、無人の体育館で叫んでいるような、そんな感じを受ける。ドラムもどこか、突き放したような、冷ややかな手触りだ。彼らの歌の宛先は、体育館をぐるっと回って、自らに降ってくる。そしてこれが、Very Apeの強烈な魅力になっている。

俺は唐突に、Trickyを思い出す。「Maxinquaye」から「Juxtapose」にかけてのトリッキーは、自身の凄惨な生い立ち、現状に対する怒りを、誰も考え付かなかったリズムに乗せて、歌った。否、歌ったというより、うめいた。Very Apeは叫ぶ。でもどちらも、(おそらく)その方向は、実は客の方向ではない。虚空だ。虚空に向かって放たれる言葉。こんなに虚しいことがあるだろうか?彼らを孤独にしてはならない。「寂しいのは、お前だけじゃない」彼らの優しい心を知った俺は、こう思って聴いている。

カート・コベイン。ビリー・コーガン…Very Apeもまた、90年代のオルタナティブの心象を持っている。

Very Ape “(3,2,1)Action!!!!”

https://youtu.be/NidNIIgY6a8

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?