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メディアは日本の安全保障への「脅威」か?

テレビ、新聞などといったメディアと呼ばれる仕事に携わっている人々は、正義感に溢れている方々が多いと思う。そして、彼らはその気概を持って仕事をすることで権力への監視者としての役目を果たしてきた。

しかし、その正義感が空回りする場合がある。日本の防衛問題に関する報道をする時である。

日本は軍事大国の道へ突き進んでいる?


先日の河野防衛大臣の記者会見において、日本のミサイル能力向上は周辺国への脅威として映らないのかという質問をした記者が居た。

確かに、日本の軍事予算が増える、自衛隊の攻撃能力が向上するという事柄だけを取り上げたら、懸念が湧くのも分からなくはない。これらの事柄から、日本が再び軍国主義の道を歩んでいる、再びアジアの近隣諸国を侵略するのではないかという、結末が連想されよう。

しかし、筆者はこの記者の質問の背後に隠れている、今の日本の現状に過去の負の遺産を投影させるという意図は、いささか狭いモノの見方ではないのかと思う。なぜなら、周りの東アジア諸国の軍拡の度合いを居てみると、日本の自らの国の安全保障に対する見方が甘く思えて仕方ないからである。

まずは、中国を見てみよう。


中国は1990年代以降、社会主義経済から資本主義経済への変遷を遂げたおかげで、莫大な富を築き上げることに成功して、1949年の建国時とは比べられないほど豊かになっている。しかし、その一方で、生みだされた富の多くは軍事費の方にも回されている。

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上記のグラフから分かるように、経済成長とともに中国はすさまじい軍拡にも励んでおり、軍事費は右肩上がりに増えている。そして、彼らはこれらの軍拡は防御的なものであると明言しているものの、国連海洋基本条約を無視した南シナ海での海洋進出が防御的な意図に基づいていると考えることには無理がある。

そして、中国のみならず、日本から最も近い国である韓国の軍拡も見逃すことはできない。


1990年代の初め、韓国と日本の軍事支出差は3倍ほどだったが、過去20年間で日本は段階的に、韓国は大幅にそれぞれ増額しており、その差は縮まっている。2018年現在、韓国の軍事支出は43.2兆ウォン(約4兆1840億円)で、日本の約85%となっているという。(抜粋)

韓国の軍拡は、北朝鮮の急速な核・ミサイル能力の向上に対する対抗措置としての見方もできるが、日本の潜在的な脅威を想定した軍拡であるという見方もできる。なぜなら、軍拡で予算を増額されたのは北朝鮮との陸上戦を戦うことが想定されている陸軍だけではなく、海軍も同様であるからである。

韓国が海軍の増強で意図していることは中国、ロシアに対抗するためではない。なぜなら、韓国はロシアと中国との間に紛争につながる領土問題を抱えていないからである。しかし、日本とは竹島を巡って対立しており、解決の糸口は見出すことが出来ない。それゆえ、日本が竹島確実に奪え返せないようにすることが海軍増強の目的であると筆者は考えられずにはいられない。

そして、韓国による潜水艦の開発、空母の導入の検討しているというニュースは筆者の懸念に拍車をかけている。

中国や韓国に対する筆者の懸念は杞憂に過ぎないかもしれない。先ほど述べた国々は純粋に防御的な意図で軍拡をしているだけで、筆者が彼らの意図を正確に解釈できていないのかもしれない。

しかし、軍事力が持つ二面性、攻撃的且つ防御的な側面について考えると、彼らの軍事力が日本に対して使われないとも言い切れない。

そのため、最悪のケースに備えて、日本がこれらの国々との間の軍事力のギャップを埋めるのは当然でないかと筆者は考える。

だが、筆者は日本政府が自らが置かれている安全保障環境を怖いほど楽観視しているとしか思えない。


安倍首相が2013年にハドソン研究所で行った皮肉を交えたスピーチが、日本と近隣諸国の軍拡の度合いの違いについて示唆している。

そして本年、我が政府は、実に11年ぶりに防衛費を増額しました。
 いったいどれだけ、と、お知りになりたいでしょう。
 でもその前に、日本はすぐそばの隣国に、軍事支出が少なくとも日本の2倍で、米国に次いで世界第2位、という国があります。
 この国の軍事支出の伸びを見ますと、もともと極めて透明性がないのですが、毎年10%以上の伸びを、1989年以来、20年以上続けてきています。
 さてそれで、私の政府が防衛予算をいくら増額したかというと、たったの0.8%に過ぎないのです。
 従って、もし皆様が私を、右翼の軍国主義者とお呼びになりたいのであれば、どうぞそうお呼びいただきたいものであります。(安倍首相 2013年)


この2013年のスピーチはいかに日本が安全保障環境の激化に対応できていないかを示しており、今まで危機感を持ってこなかったことが逆に驚きである。そして、日本の軍拡に積極的なタカ派と目される安倍総理は、就任以後、着実に日本の防衛力を高めてはいる。しかし、タカ派である安倍総理でさえ、防衛費の比率はGDPの1%以上を越さないという原則を守り続けけて来た。

どうして日本はここまで高まる脅威に対抗し、現状に適応していくことができないのか?

答えはメデイアによる報道により、日本の防衛政策に携わる当事者たちは手足が縛られているからである。

日本の防衛の選択肢を狭めるメディア

日本が直面する脅威に対応するたびに、国際社会の平和への貢献を示すたびに自衛隊の海外派遣を実施するたびに、メディアは負の側面を強調し続けてきた。

そして、それらの事象が起こるたびに「戦争になる」、「軍国主義に逆戻りだ」などなど、国民の不安をひたすら煽る言論を発信してきた。

そのため、国民、政治家らは軍備増強に対して極端なアレルギーを持つようになり、日本をより安全にしようと行動した政治家は悉くメディアによって潰された。

そして、そのメディアに圧力に屈したのも安倍総理、その人である。安倍首相率いる自公連立政権の最大の強みは衆参両院で三分の二を保持していることだった。(2019年の選挙により参議院で三分の二を割れてしまったが)そこまでの議席数を保持していれば、いかなる法案も採択することができ、憲法改正につながる国民投票も実施できる。しかし、そんな最強の安倍政権であっても、憲法解釈を辛うじて変更させることが限界点であった。彼もメディアにより軍国主義者のレッテル張りに苦しんだ一人である。

空回りした正義感からの脱却

誰も戦争を望んでいない。そんなことは自明の話である。しかし、日本の軍備増強だけを取り上げて、国民を間違った方向に誘導するメディアらの報道姿勢はいかがなものか?


日本を危機的な状況に追い込んだのは中国ではなく、メディアであったと将来の世代に非難される未来が訪れないようにするためにも、日本の防衛問題について報じるメディア関係者は適格な国際情勢認識を持ってほしい。

今一度、メディアは自分らの影響力を考慮して、日本の安全を貶めることがないよう気を配っていただきたい。

参考文献



https://www.recordchina.co.jp/b661263-s0-c10-d0144.html



https://news.yahoo.co.jp/articles/f5d68bf3a809cde08c99fa9f8544cfcfb7d009a2



https://globe.asahi.com/article/12260549


http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0925hudsonspeech.html


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