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世界観をビジュアルで伝える、ブランディングにおけるデザインの仕事

こんにちは。FRACTAのBrand Creative局デザイナーの内田です。

今回はFRACTAに入社して2年目の自分が、仕事のなかで日々思っていることや壁を感じていること、ブランディングにおけるデザインの仕事がどういうことなのかについて書いてみようと思います。

ブランディングに興味があるデザイナーさんにも、ブランド運営に携わりたい、また携わっているという方、またデザインについて興味があるけど良くわからない、とい言った方にも読んでいただければ幸いです。

ブランドにおける世界観

第一に、ブランドにおける世界観は大切です。
あらゆるブランドが乱立し、差別化を図ることが難しくなっている現代において、コアファンを作り事業を継続するためには必要不可欠と言っても良いでしょう。

スターバックスのブランドガイドラインには、ロゴ、ブランドカラー、ブランドフォント、写真のトンマナ、イラストレーションとそれらの使用比率が定められています。

https://creative.starbucks.com/

これらは目に見えないブランドの世界観や価値観を、ビジュアルで定義したものです。

人魚のロゴや緑のカラーがなければ、一見スターバックスなのか、他のコーヒー屋やカフェか区別がつきません。

貰えるとちょっと嬉しくなるようなコーヒーカップや、思わず入りたくなる店舗での体験、季節による商品展開も味気ないものになってしまうかもしれません。

これらのブランドにおける「世界観」は、最終的にはグラフィックデザイナーによって定められたガイドラインを元に、一定の品質を保って展開されます。

「世界観」や「デザイン」が利益と結びつくのか疑問に思われがちですが、(予算の都合上真っ先に削られてしまったり、実際に妥協せざるを得ないことも多いです。)素敵なコーヒーをパッケージを見て買ったり、音楽のアルバムや雑誌を装丁で「ジャケ買い」したり、素敵な世界観やデザイン自体が、「買いたい」「体験したい」という気持ちを生みだします。継続購入にも顧客の満足度や信頼に直結するため、一度定めたら継続的に価値を生み出せる優れた仕組みでもあるのです。

ブランディングとデザインの関係性が知りたい方はこちらの書籍をお勧めします。

参考 :「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと

▼関連noteはこちら

デザイナーに必要な、感覚をことばにする力

ここで、デザイナーとはどのような仕事なのか?少し話してみようと思います。

デザイナーはグラフィックデザインで色と形、アイデアなど、目に見えない抽象的な感覚を、手や知恵、工夫を凝らして目に見える形にする仕事です。

参考 :「ポール・ランド、デザインの授業

狭い意味でグラフィックデザインを説明するとすれば、「ある概念を目に見える形で設計し表現する行為」ともいえます。

そしてそれは手や目などの五感を駆使したアウトプットで表現されるため、微妙な感覚の違いによってデザインの「質」が大きく変わります。この微妙な感覚の違いは「センス」や「美意識」となってデザイナーが持つものですが、クライアントや顧客には非常に理解されにくいものだと感じています。

当たり前ですが、クライアントはビジネスとして依頼してきます。
「素敵だね」「かっこいいね」という身体的、感覚的な話を、デザイナーが「なぜなのか?」「どういうメリットがあるのか?」と説明できなければ、クライアントは最適なデザインを選ぶことはできません。

しかしデザイナーとして思っていること、感じていることをうまく説明するには毎回のようにとても苦労します。
そこで、「なぜデザインの仕事は説明が難しいのか」を自分なりに考えてみました。

デザイナーは0.1mm単位の形の違いや色の違いにこだわる

デザイナーが紙の裏表を触って、「ちょっと表面がデコボコしているので、他の紙と比べて印象が違います。」みたいなことをいう時があります。

この他にもデザイナーは

「この紙は優しい感じがして良い紙である」
「このフォントの微妙なアールがあるのとないのでは全く異なる」
「背景色に少しグレーの色を敷くと画面が引き締まる」
「特色を使うと発色がよくなる」
「文字詰めやカーニングをすると見た目が心地よくなる」  など

色や形に対しての数mm単位でこだわりを持っています。

こういったデザイナーが持っている超微妙なニュアンスの違いは、言葉では決して説明しきれず、そして実際に見せてもほぼ同じかもしれません。

しかし、美しいロゴをデザインする時や、ユーザーにストレスのない体験を作る際にこの微妙な差異は重要になります。

スターバックスで例えると、ほんの少しのカップの厚みや、発色の良いロゴなどによって手にした時の高級感やちょっとした高揚感、また熱くなりすぎず持ち運びもしやすいなど情緒面、機能面において、ユーザー体験の質に大きく左右するのです。

デザインが損なわれると、ユーザー体験の質は大きく下がります。
(実際に文字が小さくて読みにくいマニュアルや、目印がなく開けにくいパッケージなどにうんざりして、思わずAmazonで低いレビューをつけたくなる、といった経験は多いのではないでしょうか。)

デザイナーはこれらの一見誰も気にしないような感覚的な違いに、より敏感な人々だと言えます。

奥深い文字の世界へはこちら:
フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

言葉と感覚の解離

突然ですが、かき氷のシロップはメロンもいちごも同じ味だという話があります。実はシロップの味は同じものですが、緑はメロンの味、赤はいちごの味、という思い込みで、実際の味までもが変わっているように感じているという話です。

このように言葉が感覚を定義することはよくあります。

ワインで例えると、ワインの渋みは「渋い」や「まろやか」という軸があって初めて比較可能なものになります。

実際に五感で感じている繊細で微妙な味の違いを、「渋い」という言葉にした瞬間に脳は「これは渋いという味」と認識してしまいます。この時、1000万通りある繊細な「渋み」のグラデーションの微妙な感覚は、ただ一つの「渋い」という言葉に置き換えられ、圧縮されます。
Zipファイルのように、感覚から言葉へ「圧縮」することもあれば、逆に言葉から感覚へ「解凍」することもあります。

「赤くて酸っぱい梅干し」という言葉を目にした時に、脳内で酸っぱい梅干しの味が呼び起こされ、実際に唾が出てくるような感覚になるのはこのプロセスです。

このように言葉には感覚を呼び起こす効果もあるため、「言葉」⇄「感覚」の変換は常に行われます。しかし、「赤くて酸っぱい梅干し」だけではそれがどのような形か、質感はどうか、何個あるのか、どんな赤色なのか?を説明することは不可能です。

ブランディングに置き換えると、ブランドを言葉で定義したとしても、実際には10000万通りある微妙なイメージの違いを目に見える形に変換する作業が残っているのです。

ブランディングにおけるデザインは概念からビジュアルへの変換

ブランド立ち上げ時において、ブランドがペルソナやターゲットを「言葉」で定義していくのに対し、デザイナーは「絵」で定義していきます。

写真や絵や、言葉や、図形などあらゆる視覚表現を駆使して、そして先人たちが残していったデザインの知恵を生かして抽象的な概念を形にしていくのです。

「写真は自然光で撮るのか?落ち着いたトーンで撮るのか?」
「色はどんなトーンで、どのように展開するのか?」
「ロゴはどんな印象でどのように使えるものがふさわしいのか?」
「ユーザーの人物像はどんな人か?」
「イラストは手書きが良いのか、シンプルな図形が良いのか?」

クライアントとのやりとりの中ではこの抽象的な「言葉」と「イメージ」への変換を行ったり来たりするので、最初は戸惑われる方もいるかもしれません。

デザインの判断軸をどう作るか?

ビジネスにおいて、これらのデザインを決める時に、感覚的に「良い」「悪い」ははっきりしていても、それが判断軸になることはありません。もしブランドに合う色やロゴを提案したとしても、どれも良い感じがしてしまいどれを選べば良いのかわからない、ということが多くあります。

ここで、再現可能な方法としてFRACTAで実際に使っている、判断軸の作り方をいくつか紹介します。

・イメージボード
・マトリクス
・市場やターゲットとの符合性
・言葉による印象の定義
・メリット/デメリットの定義
・ランニングコストや継続可能性

ブランディングのデザインは実際の制作物だけでなく、これらの手法があって初めて成立すると言っても良いかもしれません。

実際にブランディングにおけるデザインの仕事では、数年先も生き残れるようなものを考える必要があるため、抽象的な議論をする時間や、思考し説明する時間が多くなり、通常のデザインの仕事よりもプロジェクトが長期におよびます。
より多くの作品を残すために手を動かしたいデザイナーにとって、これは多少ジレンマかもしれません。

体験を共有するデザイン

実際にデザインを目にするのは、バックグラウンドや考え方の全く異なるクライアントやユーザーです。

ブランドとユーザー
ビジネスと美意識
ミクロとマクロ
抽象と具象

それらの対立する事象を行ったり来たりしながら、柔軟にあらゆる考え方を取り入れ、時にデザインの原則や自分の価値観も大切にし、ブランドを概念から最適な「形あるもの」に落とし込んでいくことが、FRACTAのデザイナーの仕事だと思っています。

その中でデザイナーが大切にする「感覚」や「美意識」、「クオリティの違い」を元に、クライアントやエンドユーザーに最適なアウトプットをどのように提供するのか?
それはブランディングにおいて非常に重要なポイントですが、理解されづらく説明も難しいです。

欧米社会を発端にし、経営においてのデザインの重要性が見直されるようになってしばらく経ちますが、日本のような堅実で生産重視型の側面もある社会において、実際に「デザイン」がどういうものなのか、世の中への浸透度はまだまだ低く、この先の大きな課題だと思います。

参考:世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」

ここでは具体的な解決策は提示できませんが、一つ鍵となるのは、一緒になって違いを体験してもらうことのような気がします。ワインでいうと一緒に飲んでみよう、色の違いを見てみよう、香りを体験してみよう、ということです。

デザイナーにもブランドにも、「いろんなブランドを実際に体験してみる」「街や自然に出て色々なものに触れてみる」「実際に五感を使ってデザインの違いを触ったり、見たり味わったりしてみる」「提案にオフライン性を取り入れてみる」など

「実際に自分で素敵な世界を体験してみる」という当たり前と思われていたことが重要になってくるのかもしれません。

頭を使って図を見せたり、言葉を尽くしたりしても伝わらない違いのようなものは、五感を使って一緒に体験することによって、ユーザーにもクライアントにとってもブランドがより実感を伴ってわくわくできるものになると思います。


FRACTAはブランドの立ち上げから強化、DX、体制構築まで企業の成長に寄り添い伴走するトータルブランディングパートナーです。ブランドの挑戦をテクノロジー、クリエイティブ、ビジネスの力で支えます。

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