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深川ワイナリー訪問記

もう1ヶ月以上も経ってしまったが、江東区にある深川ワイナリーを訪問。

フランスからやってきた友人を東京案内するにあたり、こちらのスポットをチョイス。

この友人とはなぜか日本茶で盛り上がった仲。
お茶だけでなくワインにも興味があるとのことで、はじめはこの数寄者と日本ワインを味わえるワインバーを探していた。

そしていろいろと情報収集しているうちに、ヒットしたのがこのワイナリー。そう、日本各地でワイナリーが増えていることは知ってはいたものの、23区内にあったのだ、ワイナリーが
※ちなみに令和3年1月時点で都内に6ものワイナリーがあるらしい(国税庁調べ)。

ワイナリーというと、地方の広大なぶどう畑の中に醸造場がある風景が浮かぶが、深川ワイナリーは、東京下町情緒のある門前仲町駅から歩いて数分。見た目はいたって普通のビルの中にある。

深川ワイナリー

「ほんな、本当にワイナリー、ここらにあるん?」

このフランスの友人はどこか不思議なところがたくさんあるのだが、その中でも特に不思議だったのが、関西弁を流ちょうに話すこと。

大通りから少し離れた住宅街のマンションの一階に、そのワイナリーはあった。

なんだかんだで閉店10分前。
本当は試飲がしたいけど門前払いされてしまうかな。
とりあえず、お邪魔してみよう。

入口はいるとすぐにカウンターが控えている。
決して広いとは言えない室内だが、果たして本当にここでワインを作っているのだろうか。

「いらっしゃいませ、どうぞ」

とてもさわやかなお兄さんが笑顔で私たちを迎えてくれた。

「試飲しても、いいですか」

「もちろんです」

お兄さんは嫌な顔一つせず、快くカウンターを案内してくれた。

「こちらからお選びください」

意外とたくさんのワインを作っている模様

「おすすめは何ですか?」

「ナイアガラのスパークリングはいかがですか。人気ですよ」

久しぶりに聞いたナイアガラ。確かアメリカ系のぶどう品種だったよな。
フランスの人には珍しいかもしれないと思い、こちらを注文。

ラベルが日本らしい

ちょっと濁りのあるスパークリング。
澱の香りがしっかり。

「あぁ、これは珍しいですね、ナイアガラをいただいたことはありませんが、見た目はオレンジワインに似ていますね」

このフランスの友人、私には謎の関西弁で適当なことしか話してくれないのに、ワインが目の前に出た途端、まるで別人のように変わったぞ。

「よくご存じですね。実はこれ、オレンジワインです」

オレンジワインは赤ワインと同じく、ぶどうの皮を漬け込んで醸造する白ワインだ。

ところでお兄さんも、ワインに詳しいですね。

「僕はフランスのボルドー大学でワインを学び、ブルゴーニュのワイナリーで修業をしてきました」

ここで一気に話が盛り上がる。

「フランスにいらっしゃったのですか。私もブルゴーニュでワインを学び、そこでソムリエの資格を取得いたしました」
(この友達もソムリエだったのか。というか敬語もちゃんと使いこなしているじゃないか)

それから2人の共通の知り合いなどがでてくる。
私もTwitterなどで一方的に知ってはいる。なんて世間は狭いのだ。

ワインつながりの輪は、ひょんなところで一気に広がるからおもしろい。

そしてこの若いお兄さん、実はこのワイナリーの醸造責任者のすごい人だった。

いつかワイナリーの道に進む夢を抱きながらも自分なりのキャリアを積むべく、しばらくパフューマーという調香の仕事に従事していたようだ。
調香士として香りの経験を積んだ後、ボルドーやブルゴーニュでワイン作りの経験を積み、帰国後は、念願の日本ワインの造り手に。
あぁ、なんて素敵な話なんだ。

おしゃべりしていたら、いつの間にか閉店時間を大分オーバーしていた。
メニュー表にある「木樽熟成」「海中熟成ワイン」がとても気になっていた私。

「あの、この樽熟成ワインがとても気になるのですが、これも試飲できませんか……」

「もちろんです」

閉店後も居座る私たちに嫌な顔一つせず、お兄さんは終始とてもさわやかだった。

「これは3年7カ月熟成させた山形のシャルドネです」

TOKYOラベルがいいね

高揚感のあまり、写真がぶれているが、同じ白ワインでも先のナイアガラのオレンジワインと全然違う。
色あい、透明感、濃さ……。

樽の香りというのか、はちみつやトーストの香りがグラス一杯にひろがっていた。

誰でも語れるふわふわしたことを友人に話しかけても、この不思議な友人は私の話など耳を貸さず、グラスに高い鼻を近づけたまま、しばらく無言でいた。どうした……。

カウンターの裏には、ガラス張りの醸造場が。
大きなタンクが並んでいる。

ポップなラベルは並ぶとなおさらかわいい

今回は閉店間際の訪問でかなわなかったが、定期的に醸造見学を実施しているようだ。
また、地元の東京海洋大学とワインの共同開発していて、海底でのワインの熟成の実験をしているらしい。
さらには近所の建物の屋上でぶどうを栽培していて、夏にはそのぶどう畑(?)にレストランが併設され、そこでこのワイナリーで生まれるワインが楽しめるらしい。

どんだけチャレンジャーなんだ、楽しそうすぎると思いつつ、これを実行に移すことの難しさよ。

いろんなことを挑戦し、また、地元も大切にしていて、江東区をはじめ地域のイベントにも顔を出してブースを出したりと、大小いろんなアイディアを練って盛り上げようとする姿をしっかりうかがえた。
私も頑張らなきゃ(何に)。

今回試せなかった海中熟成ワイン(グラス1500円)、夏が来たら、ぜひビルの屋上のレストランで試してみたいな。

ワイナリー情報


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