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「100%オーガニックな村」を実現させたミカエルさんの話

こんばんは。このnoteでは時々、フランスワイン界で活躍しているすてきな人たちを取り上げています。

今回は、南仏ヴァール県にある人口950人の小さな村・コランス(Correns)にあるワイナリー「ドメーヌ・アプラ」のオーナー、ミカエル・ラッツさんについて。

白ひげと風にたなびくヘアーに穏やかな表情が印象的(?)

彼は毎年夏にワインのオークションを開催しています。
それには理由があって、オークションで資金を集め、彼の生まれ故郷でもあるコンゴ民主共和国でのオーガニックな農業環境の構築に必要な費用に充てるためです。

今年開かれるオークションには、このコランス村にワイナリーを所有しているハリウッド俳優のブラット・ピットをはじめ、近隣の村にワイナリーを持つジョージ・クルーニーやジョージ・ルーカスもオークションに参加して出品することがフランスのワインメディアのオンライン記事に取り上げられていました。

さて、この和やかそうなおじいさんですが、彼はワインづくりと農業の持続可能性から、経済的に貧しい村が抱える課題の解決に挑戦した行動力のあるお方です。

コランス村はプロヴァンスのワイン街道の端に位置する、AOCコート・ド・プロヴァンスの生産地で、村の特産品もワインです。


村のロゴに「ビオ(BIO)」の文字が


大学で農学を学び、植物の検疫関係の事業を展開していたラッツ氏は、「化学物質に依存する今の農業を続けていたら、この業界には明るい未来がない」ことを実感します。

1960年代に父親がはじめた実家のワイナリーにて化学製品に頼らないオーガニック農法を取り入れました。

その後、事業の傍らコランス村の議員、そして4期にわたり首長を務め、1997年にフランスで最初の「100%ビオ(オーガニック)の村」づくりを宣言しました。
ワインづくりが主産業の貧しいコランス村に「オーガニック」の思想を取り入れた村おこしを実践します。

オーガニックな村づくりにあたり、まずはワイン生産者からオーガニック農法への勧奨をはじめます。
はじめは当然のごとく農家からの猛反発を受けます。しかしオーガニック農法がどれだけ自分たちの土地にメリットがあるか、そしてオーガニック農法に切り替えても収益が上がることを相手が納得するまで説明し続けた続け結果、ほぼすべての生産者がオーガニック農法に切り替え、次第に野菜、園芸、山羊、養蜂、養鶏の生産者などにも波及し、「フランス初の100%ビオの村」の実現を果たしました。

2008年にブラッド・ピットと当時の配偶者のアンジェリーナ・ジョリーが購入し、結婚式を挙げた「シャトー・ミラヴァル」はこの村にあります。
彼らがこのシャトーを選んだのも、このシャトーがオーガニック農法に切り替えていたことが土壌にあったからに他なりません。

また、この村は学校給食にビオを取り入れています。給食の材料のほとんどが地元産のものです。彼にとって、子どもたちが「食べる」ことは「読み書き」と同じくらい大事なことであり、子どもたちが「食べる」行為を尊重することが地球の未来を決定づけるという思いから、給食を通して食の生産,消費、食品の廃棄を学ぶ機会を設けたようです。

さらにこの村では、ソーラーパネルの活用で電気の大部分を自給自足するなど、環境に配慮した取り組みを展開しています。
長らくこの村に住んでいる人によれば、こうした取り組みのおかげか、最近は姿を消した虫たちが再び自然の中に姿を現すようになったとか。人口は950人程度ですが、この30年で2倍に増えているそう。
持続可能なまちづくりを続ける村の取組みが結実しはじめているのかもしれません。

ラッツさんとは直接関係がありませんが、南仏つながりでロゼワインに関するフランスの記事(日本語訳版)をご紹介します。

南仏では有名人のワイナリー所有で土地価格の高騰や労働環境の変化が起きているという、ロゼ人気の裏側を社会的にとらえた面白い記事です(本文は有料)。


その他参考記事:
ラッツさんの英文記事

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