本日の本請け(2022.7月・8月)
7月・8月に読んだものと、そのときのお茶請けならぬ「本請け」。
『生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術』泡坂妻夫(新潮文庫)
先月読んだ『花嫁のさけび』が面白かったので、他のも読みたいなあと思い、恩田陸が『月曜日は水玉の犬』で言及もしていた袋とじの文庫本を購入しました!
まずは短編として読み、袋とじを開けると短編で読んだページは長編の1ページになってしまう……というしかけ。
読んでみたくて久しぶりにわざわざネットで注文して取り寄せたので、お菓子も「並ばないと買えないやつなんだよ」ともらった特別なものにしました(笑)。
袋とじを開けていくの、どきどきしました。
開けてしまった後はどこが最初に読んだページかわからなくなってしまうかな、と思ったんですがあ、ここ!と少しわかったときに不思議な感覚がありました。
脳内で進行している袋とじを開けた後のお話の中で、たまにデジャビのように開ける前のお話がよぎって、なんか「前世の記憶」を見るのってこういう感じなのかな〜という、今までにない読書体験でした。
『夏子の冒険』三島由紀夫(角川文庫)
函館に行く予定があったので、「函館が出てくる話」を読むことにして選定しました。
クマが出てくる話とは知らず。
自分は、クマが一番怖いのです。コメディー調でとても面白かったのですが、クマへの恐怖でそんな気分になれず(笑)。
最後こうなるんじゃないかな、と思っていた終わり方でしたがすごくまとまっていて一気に読めてしまいました。
知っている場所もちらほら。函館以外もあちこち出てきました。
おばあさん・おばさん・お母さんのトリオがすごく映像で浮かびました。おばあさんを高畑 淳子さんでイメージしていた。
クマ退治のときの描写、匂いの書き方がすごくてなんだか獣臭さが未だに周囲にあるような気がしてしまう。
『榎本武揚』安部工房(中公文庫)
函館に行くので「函館が出てくる話」を読もう第二弾でした。
榎本武揚をよくわかっていなかったので、ちまちまWikipediaを見て歴史上にあったことを確認しつつ読み終わりました。
歴史の登場人物って、教科書では太字とセットでこれをやった人!というだけでおしまいという感じがあります。
織田信長だと楽市楽座とか、田沼意次だと賄賂政治とか。けれど、人生の中でいろいろなことをするし、意見や立場が変わることもあるし、と当たり前なんだけれど思ったり。
近い時代の人だから資料や事実が多くわかっているというのもあるんでしょうが。
ただどちらかというと榎本武揚のことより、旅館の主人の心情や悔恨やじゃあどうすればよかったんだという思いがぐるぐるとして身につまされてしまいました。が、甥があっさりしているのもわかる気がする。
『はたらく魔王さま!おかわり!』和ヶ原聡司(電撃文庫)
はたらく魔王さま!の本編の合間合間の短編集。ごはんがたくさん出てきます。
キャラクターたちが好きで読み続けていますが、東京名物の話は素直に感心してしまった(笑)。
本編後の話も見てみたいなあと思っています。
特に、真奥とちーちゃんは最終回の最後のやりとりが普通になるまでどういった過程を経たのか気になっているので。
『三体X 観想之宙』宝樹 (著)、大森 望 (翻訳)、光吉 さくら (翻訳),、ワン チャイ (翻訳)(早川書房)
『三体』シリーズの二次創作が本になったもの。
『三体』シリーズはずっとオーディオブックで聴いていたのですが、早く読みたくて今回は電子書籍で。と思ったらもうオーディオブックが出ていました。読むのに時間かかってしまったので、この『X』も聴く方にすればよかった、とちょっと後悔。
登場人物の名前や用語を、音で覚えてしまっているので……。
『麦本三歩の好きなもの』住野よる(幻冬舎)
読書会でおすすめされたもの。ちょうどAudibleにあったのを見つけたので聴いてみました。
朗読の悠木碧さんがすごい!
憎めない三歩のキャラクターを、声で、読み方でとってもかわいらしく表現してくれてかつ聞き取れないところがない!
朗読でなくなってしまう危険性もあるというかあんまりキャラを演じられると、オーディオブックではやりすぎでは?と思ってしまいそうだけど、この本の語り口にピッタリの読み方でずっと楽しかったです。
三歩は散歩が好きなのですが、同じようによく晴れた休日に散歩しながら聴いたらピッタリでした。
友人と水族館に行く章は夜に家で聞いたのですがシチュエーションがなんだかそれもぴったりでなんだか深い溜息をついてしまいました。
不器用ながら一生懸命な三歩と一緒に、自分も何か踏み出せた気分。とても良かった。
『ぼくはホワイトで、イエローで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ(新潮文庫)
文庫本買うとほしいブックカバーがもらえるときに本屋に行き、何か買わねばと思って、なんとなく手に取り、そのまま読まずに置いていた本。
ちょっとペラっと見てみたら、一気に読み終わってしまいました。
もっと早く読めばよかった!
なんとなく、「ぼく」の自伝?的なものだと勝手に思っていました。以前に読んだ『僕には数字が風景に見える』と表紙から受ける印象が似ていたのかな?
イギリスで暮らす日本育ちの筆者と、息子さんを中心としたエッセイ。
エンパシーの話が特に面白かった。テレビなどでEU離脱などのニュースを見ていたけれど、そのニュースが発されている国では本当にそこで「日常」を生きている人がいるんだよな、と当たり前のことなのにはっとしてしまいました。
『ぼくはホワイトで、イエローで、ちょっとブルー2』ブレイディみかこ(新潮社)
というわけで続けてすぐ2を読みました。
本屋さんで本を買おうかなと思ったんですが、すぐ続きを読みたくなって電子を購入してしまいました(笑)。
「ぼく」と筆者のおじいさんの関係が好きでした。むしろ言語が話せたら行き違いになることもあるのかなあ。
「ぼく」が日本に来たときに投げつけられている言葉に胸が痛くなると共に憤りを感じたけれど、自分だってそれに連なるようなことを考えてないか、と思うとちょっと己を振り返ってみてしまった。
ここでこのシリーズを終わり、とできる潔さも良い。これ以上追い続けるのはお子さんのプライバシーとしても良くないもの、と思った。それが理由かはわからないのだけれど。
『他者の靴を履く』も読みたい。
『紅だ!』桜木一樹(文藝春秋)
エメラルドグリーン色にぱっと目を惹かれて、たまにはいいかなと思って久しぶりにジャケ買い。
東京・新大久保が舞台。「道明寺探偵屋」という紅と橡の探偵バディの物語。
桜木一樹久しぶりだ!と思ったのですが、読み応えが掴めないまま終わってしまった感じ。二人の確執となった事件もオチが読めてしまい、いまいち心躍らず。因縁はできた気がするので、ここからなのかな?
「結局GOSICKどうなったんだっけ?」と思い出してしまった。REDは読んだ気がするのだけど。
『神の子どもたちはみな踊る』村上春樹(新潮文庫)
久しぶりに村上春樹を読みたくなって、しかしいつもなんとなくで終わってしまうためAudibleでじっくり聴くことに。
高校生の頃、村上春樹ってよくわかんないと思いつつ、なんとなく理解できると頭が良くてカッコイイ気がして果敢に挑戦し続けてきたのですが、ずっと「うーん」と思っていました。
ハルキストの友人に「短編かエッセイを読むといいよ」と言われてそうしてみると、なんだかすごくスッと入ってきてそれ以降、長編も含めて楽しめるようになりました。
加えてAudibleで聴くと、既にそこに朗読している人の解釈が入っているからでしょうか、すごくわかりやすいような気がします。もしかしたらそこが気になる人もいるのかもしれないけれど、自分は好きでした。仲野さんの落ち着いた声がよかったです。
特に好きだったのは『アイロンのある風景』。情景がとても想像できて目の前に焚き火があるみたいで、そこに寄せる登場人物たちの気持ちまで入り込んでしまいました。
暑い夏の日に聴きながら散歩したのに、なんだか寒かった。
『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』相沢沙呼
ドラマになる、というのを見て「よく本屋さんで見かけるなあ」とそのときは思っただけだったのですが、Kindleですごく安くセールをしていたので読んでみました。
最初は「うーん、読むのやめようかな、今やめてもセールだったし惜しくないし」と思ったのですが、読み切ってよかった……。
実はトリックはわかっちゃったのですが、その後の謎解きがすごかった!
久しぶりにごりごりにミステリに脳を動かした感じ。
また、「泡坂妻夫に通じるものを感じるような、たまたま最近読んだからかな?」と思っていたらあとがき読んだら著者が好きだということがわかりやっぱりー!となんだか嬉しくなってしまいました。
ドラマ楽しみだなあ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?