猿楽通りの一夜(前編)
大晦日の夜9時、片想いを背負って猿楽通りに駆ける。
理由は下記をご覧ください。
1)そこに発見したばかりの1軒の喫茶店があるから。
2)マスターは「レコードをかけて明け方まで営業する」とツイッターで呟いたから。
3)マスターは村上春樹が好きだから。
4)僕も村上春樹が好きだから。
5)僕は自由(独身)だから。
6)(「猿楽」との名前は可愛すぎるから)
日本の大晦日の雰囲気は中国の大都市で過ごす大晦日と似ているとずっと思っていた。寒くて冷たい。何故なら皆は自宅、もしくはどこかの部屋で、家族か恋人か友人(この3者は同じ人の場合もあるかもしれないね。面白い。知り合いたい)と過ごすから、外は無の世界。
後楽園駅に着いたら、人混みに驚いた(東京ドームにジャニーズカウントダウンのイベントがあるらしい)。そして多くの女性の方が似ている格好をしていることにも驚いた。
9時半@猿楽町、猿楽通り(やはり可愛いな)
店は混んでいないことに感謝申し上げる。東京の電車・地下鉄路線図(ダウンの柄)を着ている大学生のように見える一人の男性はカウンターの脇に座り、コーヒーを飲みながらノートに何かを書いている。もう一人の女性の方は反対側の脇席に座っているから、カウンターの真ん中を選んだ。今晩は安西水丸の短編集『左上の海』を読む。
然し目をすぐに腕章をつけているもう一人の男性の方に奪われた。彼が沢山のレコードが置いてあるテーブルの前で佇み、一枚のレコードを手にとり、かけた。神聖な領域で何をするんだと叫ばんばかりだった。もう1回見れば、腕章に「レコード係」と書いてある。
神聖な領域にいる神聖なあなたは尊いと叫ばんばかりだった。
コーヒーも音楽も美味しかった。時々中国語でSiri先生に「这是什么歌?」(これは何という曲?)と尋ねた。もうすぐだ。
…3、2、1!ハッピーニューイヤー!
空(シャン)気(パン)に酔った僕は赤かった。
つづき
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?