四川飯店で培った中華魂をフォーシーズへ!熱血料理人・木村治郎さんにインタビュー
「ピザーラ」などを展開するフォーシーズグループが、中華を手掛けているのをご存知ですか?
現在フォーシーズでは、野菜がたっぷり摂れる中華を提供する「華菜樓」、
町中華をコンセプトにした「萬来」を中心に、系列店を含めて3店舗展開しています。
今回、華菜樓、萬来 料理長・木村治郎さんにインタビューすることができました!
実は競争率が低い中華料理人の世界。
だからこそ燃えるんです。
中華の料理人を目指す人って正直少ないんですよ。
当時僕が通った料理学校での和洋中の人気の割合は3:6:1でした。
でも自分からすると、調理中に火が燃え上がって華やかで、中国4000年の歴史とまで言われている中華って奥深くて面白いんじゃないかと。
希望者が少ないという状況もかえってやる気を引き起こしてくれて、中華の道に進むことになりました。
そもそも僕が料理人を目指すきっかけは、高校時代にあります。
柔道で高校に進学した僕は、高校3年間を寮生活で過ごしました。
そこで配膳や食事を振る舞う楽しさを知っていったんです。
高校卒業後の進路を決める時、柔道かそれ以外の道を選ぶ大きなターニングポイントが訪れました。
これまでは柔道に全力を注いできましたが、3年の寮生活を通し芽生えた料理への興味や人に奉仕する喜びから、武蔵野調理師専門学校に進学することに決めました。
柔道の道を勧めてくれる人もいた中で、僕の調理師学校に行きたいという気持ちを尊重してくれた両親には感謝していますね。
体育会系、体力勝負な四川飯店での日々
料理学校で中華料理を学び、卒業後の就職先は四川飯店でした。
当時NHKの料理番組で見た陳建民さんが印象的で選んだのですが、「あそこは厳しいからやめておけ!」と先生たちに止められたんです。でもどうしてもと反対を押し切り応募したらなんと合格しちゃいまして。(笑)
気づけば20年近く働いた場所になりました。
四川飯店での最初の3年間は体力勝負。振り落とされないよう、無我夢中にくらいつく期間でした。
「料理は見て学べ」という文化のもと、調理場に立てる機会はそうそうなく、この3年で入社時に16人程いた同期は2、3人にまで減りました。
転機は4年目でした。陳建一さんが「料理の鉄人」に出演したことで中華料理に火がつき、四川飯店にも料理人が増えることになったんです。
初めは雑用だった仕事も、次第に包丁を持たせてもらえるようになり、鍋も振れるようになり…「料理はやっぱり面白い」と再確認しました。
初めてお客様に振る舞った料理は、鶏肉とカシューナッツの炒め物でした。
何度も練習して、まかない料理として作ってはいましたが、商品として作るのはまた違った緊張があって。
お客様に満足していただけるだろうか…と震えながら作ったのはいい思い出です。
「料理は愛情」陳建一氏の背中から学ぶ
実は、陳建一さんから1から10まで手取り足取り指導を受ける、ということはありませんでした。
なぜなら基本的に「見て覚えなさい」が教えでしたので、「感じて覚えろ」「五感を鍛えなさい」といった言葉が今も心に残っています。
「料理人は感覚を研ぎ澄まして料理するのが理想だ。もてなす相手のことをどれだけ想って料理を作れるか。だからこそ五感を鍛えることが重要なんだ」と教えられました。
一番大切なのは【料理は愛情】だということ。これは外せません。
年を重ねるごとにポジションも上がり、「陳建一 麻婆豆腐店」や「スーツァンレストラン 陳」の立ち上げ業務に携わるようになりました。
麻婆豆腐の専門店は当時珍しく、初日には整理券を配るほどのお客さんが来てくださったのを覚えています。あの頃の僕は日本で1番麻婆豆腐を作っていたのではないでしょうか。(笑)
フォーシーズと出会う
四川飯店在籍時、立ち上げ業務で最後に携わった店舗の向かい側に、フォーシーズの手掛ける「BIKiNi」が入っていて、それがフォーシーズとの出会いです。
四川飯店の次に、どのような環境で中華をやろうかと考えた時、フォーシーズが自社の中華を盛り上げたいと考えていると耳にしました。
「中華を盛り上げたい」という熱意に僕自身ワクワクしたので是非一緒にやらせてくださいと、「華菜樓」にやってくることになったんです。
華菜樓に来て、はじめに手がけたメニューは坦々麺と麻婆豆腐でした。
当時お店で提供されていたこれらの料理は辛くありませんでした。
僕は四川料理をやってきたものですから、四川発祥のこれらの料理にはどうしても辛さが欲しくて、チームと話し合いながら今の味へと変化していきました。
現在「華菜樓」ではベースは四川ですが、広東、上海、北京…それぞれの地域の料理をそろえた総合中華として食事を提供しています。
コロナの逆風の中、新ブランド「萬来」に挑戦
コロナの打撃を華菜樓はもろに受けました。テナントの入っている商業ビルが営業を再開しなければ、華菜樓も営業できません。
しかし、ここでコロナに負けてはいけない!
新しいことにチャレンジしようと「萬来」に着手し始めました。
華菜樓と違い、こちらは”町中華”をテーマに、気軽に立ち寄れる中華料理店を目指しました。
店内の雰囲気やメニューには昭和を匂わす懐かしさもあるのではないでしょうか。
2021年、コロナの逆風の中オープンしたお店ですが、お客様や色々な方のお力を借りて2023年を迎えることができました。
メニューを見てもらうと分かるのですが、「華菜樓」は様々な料理を少しずつ召し上がってもらえるような料理が多く、「萬来」は一品料理をメインに、シンプルなザ・中華で取り揃えています。
同じ中華でも方向性が違うので僕自身やりがいがありますし、様々なニーズに応えられるのではと思っています。
中華料理は美味しい!
みなさん中華を食べると「美味しい!」と言ってくださる。それは間違いありません。
しかし、「中華って味は美味しいけど、野菜は少ないし、たくさんの油を使っているし、太るんじゃないか」とも思われがちなんですよね。
確かに実際中華料理って、野菜があまり使われていません。
でも考えてください。ヘルシーと言われているオリーブオイルだって油は油。そもそも油は0カロリーなんです!
なので中華は太るなんて思わず、野菜をたっぷり使った「華菜樓」に食べに来てほしいですね。
そしてもうひとつ。
こんなに美味しい中華料理ですが、料理人のなり手が少ないのが現状です。しかし逆転の発想で、なり手が少ないからこそ、この道に入れば引く手数多で長い間料理人として腕を振るうことができると思うんです。
料理人に興味のある方、中華料理が好きな方には是非この世界に入ってきていただいて、一緒に中華を盛り上げたいです。お待ちしています!!
家庭でできる中華のひと工夫
家庭ではなかなか専門店のような美味しさを生み出すのが難しい印象の中華
すぐに真似できるポイントを教えていただきました!
ご家庭で中華を作って起きてしまいがちなのは、家庭向けコンロの火力の限界から、料理の水分量が抜け切らずベチャベチャになってしまうことです。
そこで是非実践していただきたいのは、ちょっとした下準備をすることです。
シャキシャキ野菜炒め
店舗では野菜を油通しするのですが、流石にご家庭では難しい。そこでできるやり方として、「湯」通しがあります。
①フライパンに野菜を茹でる水を用意する。そこに塩と油を少々入れることで沸点が上がります。
②沸騰したら硬い野菜(キャベツや白菜)を入れて湯通しする。
③ざるにあけて水気を切り、あとは他の野菜と一緒に通常通り炒める。
この工程を入れるだけで、家庭の火力でも、無駄な水分のないシャキシャキした野菜炒めになります。
麻婆豆腐
豆腐を下茹ですることで、調理中余分な水分が出るのを防げます。
焼きそば
①麺を先に焼いて一度取り出す。
②野菜を炒めたところに焼いておいた麺を入れ、味付けをし、さっと混ぜたら完成。
麺を先に焼くことで、余分な水分を吸わせずカラッとした仕上がりになります。
パラパラチャーハン
①熱したフライパンに油を入れ、高温状態にする。
②卵をフライパンに入れ、しっかりと炒める。
③米を加えて混ぜ合わせる。
先に卵に火を通すことで、卵の水分を米が吸わなくなるのでパラパラチャーハンになります。
どの中華料理にも、味付けとしてごま油やラー油をプラスすると風味が増すのでおすすめです。特に餃子は、最後にごま油をひとたらしして少し蓋するのがポイントです。
下準備は少し手間に感じてしまうかもしれませんが、これらをするだけで味は格段に変わります!
料理は愛情。このひと手間に愛を込めてご自宅でも中華をより楽しんでいただきたいです。