フードロスの解決へ、「農園パティスリー」を今冬オープン! 川崎市イチゴ農園の挑戦の日々(3)
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フードロスの解決へ、「農園パティスリー」を今冬オープン! 川崎市イチゴ農園の挑戦の日々(3)

一般財団法人コップ

時計の針を2020年5月に戻し、二人の出会いから、農園パティスリー”Slow Sweets”事業化までのストーリーを対談形式でご紹介します。

写真右:株式会社Slow Farm 取締役 安藤 圭太さん
写真左:株式会社Slow Farm Chef 関根 夏子さん 

ー面接での第一印象は?

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安藤:まず関根さんの履歴書を見た時に、”先輩だ! ”と思いましたね(笑)。関根さんとは出身校が同じだったんですよ! 

関根:ほんと、たまたま。 「あの先生、まだお元気ですか?」みたいな話で盛り上がりましたよね(笑)。

安藤:私は高校で野球を、関根さんはバスケットボールをやっていたから、体育の先生はあんまり変わってなくて。

関根:わー、まだあの先生お元気なんですねーって言ってね(笑)。

安藤:そんな感じで最初から話が盛り上がりました。その後、イチゴ農園にパティスリーを募集する今回の背景を伝えたら、関根さんのフードロスへの情熱がすごかったんです。

ー具体的にはどんな話を?

関根:安藤さんから、ロス品を使ってジャムやコンポートを作ってほしいといった話があって。「この量を普段捨てています」と写真を見せてもらったときに、「えー! こんなに捨てているんですか!? 」と、驚いてしまって。「いやいや、もったいなさ過ぎますよ!」と。ロス品を価値あるものにできるのはパティシエ側の人間なので、ぜひ一緒に働きたいと伝えました。

安藤:イチゴの収穫時期は12月~5月で、その後はオフシーズンに入ります。なので通年を通して事業運営するには、加工品を作ってストックして、6月~11月までの半年間、販売し続けられる仕組みを作る必要があります。

関根:そうそう。それで「通年で販売できるお菓子作りの体制を考えましょう」と安藤さんに伝えたんですよね。イチゴを乾燥させてパウダーにして、加工品の材料をストックするとか。そうすれば、捨てる予定だったものが価値あるものとして、お客さまに提供し続けられるんじゃないかって。

安藤:元々、パティスリーを作るつもりはなかったんですよ。フードロスのイチゴを使って、農園内でちょっとした加工品を作れればいいな程度の考えでしたから。関根さんとお話するまでは、新しい事業をひとつ立ち上げられるなんて思っていなかったです。面接したのは、関根さん一人。この方以上に最適な方はいないと考え、その場でSlow Farmにジョインいただけることになりました。

ーフードロスへの思いとは?

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関根:前の職場でもそうだったんですけど、スイーツを作る際は、できるだけ材料を無駄にしないで利益を出せるように心がけていました。「材料を無駄にしない」「失敗してもいかにリユースするか」は、現場ですごく考えながら仕事していましたね。

仕入れで農家さんを訪れると、ちょっと傷がついていたり、形が悪いものは市場に流さず廃棄してしまう。「(同じ味なのに、もったいない!) ちょっと傷があっても、こっちでカットするので全然大丈夫ですよ」と言っても、農家さんはホントに?って感じで遠慮されることが多くて…。

安藤:実は、農家はフードロスをあんまり気にしていないんですよね。だって、ロスが出たら畑に戻して肥料として活用できるわけで。ロスはロスだけど、循環はしている。ただ関根さんの話を聞いて、自分の中の意識が甘かったと思い直しました。ロスが出ても、来年はもっと上手くやろう、といった程度の意識でしたから。

関根:食材を廃棄することに強い違和感を覚えたのは、2011年の震災の影響ですね。前の職場で土日かけて作ったウェディングケーキが、震災の影響でキャンセルになると、作ったケーキはすべて廃棄になる。被災地は食料不足で困っているのに、私はまだ食べられるケーキや食材を大量に捨てている。自分は一体なにをしているんだろう、と。

日本のフードロス問題は、自分一人の力でどうにかすることはできない。けど、自分の力の届く範囲でできることは地道にやるべきだと考えるようになって、それからフードロスに強い関心を持つようになりました。

ーパティスリー事業化の決め手は?

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※オープン予定のパティスリー外観。

安藤:加工品の原料になるのは、フードロスとして扱われるもの、毎日廃棄していたであろうイチゴです。去年ストックできたのは、乾燥させたイチゴの重さで1トンぐらい。1年分には少し足りないんですけど、すごい量ですよね。イチゴで難しいのは、何日も置いていけないんですよ。傷んだらどんどんイチゴはダメになってしまう。 ロス品が出たら、その場でスタッフがカットして、乾燥させないといけないんです。

ロスになっていたものが、売り上げになるのは、もちろん経営面では大きいです。イチゴを栽培していると、どうしても夏の売上が落ちるんですよ。収穫時期の12月~5月までは売上があるんですけど、夏は他の野菜の売上に依存してしまうので。

ーSlow Sweetsのオープン予定は?

安藤:来年2月以降のオープンを目途に準備を進めています。関根さんには総合運営者のようなポジションでスタッフをまとめていただき、店舗運営や新しい商品開発も担当してほしいとお伝えしています。

関根さんなしには、Slow Sweetsは成り立ちませんよ。オープンに際して、いま組織を作っているところです。新たにパティシエとそのパティシエをサポートするスタッフ、店舗内での販売スタッフをそれぞれ1名ずつ採用したいと考えています。

関根:前の会社では複数の店舗運営を任されていました。その経験を活かして、一緒に働く方の給与はアップさせてあげたい。でもそれは会社の業績がよくならないと難しいじゃないですか。ちゃんと利益を生まないといけないというのは、常に考えていることですね。

ー販売のメインは? 

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関根: シーズン中はフレッシュなイチゴも採れるので、生菓子もおススメですけど、やっぱり一番のメインは焼菓子ですね。焼菓子はフィナンシェとマドレーヌ、2種類メインとなるものを用意しています。

安藤:関根さんは経営者の視点を持っていて、原価の考え方がすっごい細かいんです。ロス品のイチゴはグラム単位でいくらなのか、コストをしっかり算出している。商品1個当たりの原価が見えているので、利益も計算しやすいんです。

ーSlow Sweetsで目指したいことは?

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安藤:Slow Farmと一緒ですね。Slow Sweetsでも、地産地消で地元で栽培した果物やそれを原料にした生菓子を、地元で食べられるのはやっぱり贅沢なことですし、一つのライフスタイルとして、もっと広めたいと考えています。

たとえば、ケーキ屋さんで使われているイチゴって、酸っぱいイメージがありませんか。完熟のイチゴを使ったショートケーキって、なかなか見かけないですよね。

関根:ほんとそうなんです。いろいろルートを経て流通させる分、イチゴはダメージがない状態でパティスリーまで届けるのが大原則だった。そうなると、そのイチゴはしっかり実が硬くて、酸っぱくて。

ただ、完熟品をスイーツに使うとなると、別の苦労もあります。甘酸っぱくてトータルショートケーキ美味しいよねって考えて作られた食材の配分や工程を、すべて最初から考える必要が出てきたんです。

ー具体的にどんな工夫を?

関根:完熟だとイチゴの水分量やジューシーさがまるっきり違いますし、果肉の柔らかさも違ってきます。なのでスポンジもクリームも、イチゴとの全体的なバランスを見て作り直さなければならない。

クリームのボディ感はしっかり保ちつつ、スポンジとイチゴがちゃんと調和して、口の中で一緒に無くなっていくのが理想です。 

全ての商品で水分量と甘さ、身の柔らかさを調整しました。大変でしたけど、“わーこんなことも起こるんだ、わー!”みたいな感じで、商品開発は楽しかったですね(笑)。

―ショートケーキ、きっと評判になりますね!

関根:はい!評判になると思います。というか、評判にさせてみせます。今まで食べたことのない完熟イチゴのショートケーキ。ぜひみなさんにも食べていただきたいです。

ー今後の目標、やりたいことは?

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関根:目標というか、こうなったら楽しいだろうなと考えているのは、Slow Sweetsを地域の人たちのコミュニケーションの場にすることです。

お年を召したおばあちゃん達が声を掛け合って「それじゃあ、この後Slow Sweets行く? あ、〇〇さん、もう座っているー(片手を上げて手を振る)」みたいな世界になったら面白いじゃないですか(笑)。

安藤:街づくりの一環になってくれたらいいですよね! Slow FarmとSlow Sweetsがあるから、この近くに住むと価値がある、みたいになってくると良いなぁ。ここは都心から少し離れていますけど、流れる時間をゆったりと楽しめるライフスタイルを送れると、街自体にも価値が生まれてくるんじゃないかと。

そのためにも、「都市農業を産業化させる」ことが重要です。私たちの事業が持続的に成長し、新たな雇用が生まれ、街の一部として発展すれば、Slow Farmの近くにオシャレなアウトドアショップや自転車屋さんがオープンするかもしれません。そうした街づくりを経て、Slowで豊かな暮らしを広げていくのが、私の思い描く理想の未来ですね。

■取材の終わりに

「こちら良ければどうぞ。取材のお礼です」

岐路に着こうとする取材班に、わざわざ手土産を用意してくれた安藤さんと関根さん。

中を覗くと、イチゴの焼菓子(フィナンシェとマドレーヌ)とジャムが!
嬉しい!!

焼菓子を手に取り眺めていたところ、関根さんより親切丁寧な商品説明が。

「Slow Sweetsの焼菓子は、完熟のイチゴを低温でじっくり熟成乾燥させています。素材から丁寧に作っているので、完成までに3日かけているんです」

3日も…! すごい…!

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ジャムも手に取ったところ、ビンの外側から果肉が見えている!

”美味しそうですねー!”と伝えると、関根さんはニッコリ笑顔。

「完熟イチゴを使って、果肉を崩さずに色を残すのは、ものすごい大変なことなんです。煮るとグチャグチャになってしまうのを防ぎ果肉を残すには、ものすごーいデリケートな火加減と混ぜ方が必要で、納得いくまで何度も試行品を作りました。完熟だから溶けちゃうはナンセンス。溶けてしまわないよう、パティシエとしてなんとか解決を図らないといけない。それは自分への挑戦でしたね」

自宅に戻り、待ちきれずジャムをトーストと一緒にいただくことに。

イチゴの果肉がすごい! 
なんだか食べるのがもったいなくて、しばらく眺めてしまいました。

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いざ口に頬張ると、完熟イチゴそのものを食べている感覚。
甘さもちょうどよくて、美味しい~!

フィナンシェとマドレーヌも、イチゴ本来の爽やかな甘味があって、あっという間にペロリ。

なんとも贅沢なひと時でした。

Slow Sweetsのオープンが、待ち遠しい。
完熟イチゴのショートケーキ、一体どんな味がするんでしょうね。

Slow Farmさんは、「青山ファーマーズマーケット」に定期的に出店されているそうです。
オープンまでに、Slow Sweetsの焼菓子&ジャムを味わってみたい方は、ぜひ一度立ち寄ってみては? 

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Slow Farm 早野圃場 
住所:〒215-0016 神奈川県川崎市麻生区早野246 
電話:080-9665-3656 (営業時間10時~17時) 

■公式HP
https://www.slowfarm.jp/

■Facebook
https://www.facebook.com/Slowfarm.Strawberry/

■Instagram
https://www.instagram.com/slowfarm_strawberry/
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取材・文/藤波 あつし

(終わり)

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