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ショートショート♯12『男子宝石』

「カサベくんはアメジスト、ニッタくんはアクアマリン、ハムラくんはエメラルド…」

 GODIVAの空箱の仕切りに収まる一つひとつを取り出しては杏那のコメントするのへ、歴代の彼氏からもらったとして、いずれも原石とはどういうことかと目を丸くするわたし。

 これ全部プレゼントされたの、と聞くと、ううん、これはいわば戦利品。

「男のなかで、宝石が育つのよ。それが隣で寝てるときなんかに、不意に転がり出るの。それを拾ってコレクションしてきた」
「そんなの、ウソ」
「男と付き合ったことある女ならみんな知ってるよ。コレクションするかどうかは別だけど」
「それで、夜毎取り出しては思い出に耽るわけ?」
「思い出? なにそれ」
 杏那は苦笑する。

 杏那いわく、宝石を眺めて思い出に耽る女なんていないのだそうだ。その目に映るのは未来だけ。

「男子宝石にならずんばなんとやらよ。宝石が出たら、それでお別れ」

 杏那の手のひらで、宝石たちがカチカチと鳴った。

(410字)

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