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エネルギー消費量の実績を振り返ろう  ~1985年間レビュー~

こんにちは。
1985の代表理事の辻です。
 
1985では家庭のエネルギー消費量を標準家庭の半分以下(エネルギーハーフ)にすることを目標にして活動していますが、一昨年から1985の会員を対象として、それぞれが設計、施工した住宅の1年間のエネルギー消費量を専用のシートにとりまとめて共有する、「年間レビュー」に取組んでいます。
まだまだ会員内で浸透しているとは言い難いですが、今後、こうした取組みが内外問わず広がっていくことを期待して、結果の振返りも交えながらまとめてみたいと思います。


年間レビューの目的・意義

「年間レビュー」の目的は、大きな目標(エネルギーハーフ)に対して、まずは足元の結果(年間のエネルギー消費量)をまとめ、目標に対する現在地点(達成具合)を把握し、それを今後の我々の取組みに活かしていくことです。
 
各会員が結果を把握することで、目標達成へのそれぞれの課題や改善策が見えてくるので、それを自社の家づくりや情報を提供してくれた住まい手さんの暮らしにフィードバックすることができます。いわゆる省エネをテーマとしたPDCAサイクルですね。

さらに、会員同士の結果を共有できれば、より自社の課題が明確となり、改善策への議論も深まると思います。これは会員が集まって取組むことのメリットだと思いますし、1985のチームとしての現在地点も把握することができます。
 
とはいえ、結果の収集は、個人情報ということもあり、手間のかかる作業です。ゆえに実際にはなかなかハードルの高いものではありますが、「省エネ性能」という家づくりの重要な項目において、自分たちの仕事の結果が明確な数値として確認できることになるので、「モノづくり人」にとってはとても価値のあるものだと思います。
 
また、それらの結果は、自社の「社会貢献度」として捉えることもできます。実はこの意識は、脱炭素社会へ向かう時代において、とても重要なものだと個人的には思っています。

それぞれの会員が自分達の仕事の社会的な貢献度、言ってみれば「環境スコア」なるものを把握し、それを対外的に発信できれば、新たな展開を生むことができるのではないかと。
それも年間レビューへ取組む目的の1つです。

年間レビューの中身

次に、年間レビューの具体的な中身について説明します。

・レビュー対象は、データ取得が可能となる直近の1年間に、自社が引渡したすべての住宅(今年であれば2022年の1年間)

・上記の対象となる住宅の1年間のエネルギー消費量のデータを取得(今年であれば2023年の1年間)

丸1年間のデータ取得が必要なため、引渡した年とのズレが生じるので少々ややこしいですが、新築だけでなく、大小のリフォームも含めたすべての住宅を対象にしています。

年間レビューシート(メイン)
邸別エネルギー消費量記入シート

上表が「年間レビューシート」のメインシートです。
地域や世帯人数など必要項目を入力すると、地域別基準値(標準的な家庭)に対するエネルギー消費率が算出されるようになっています。

小さくて見にくいかもしれませんが、シートの上部にある「会社全体の年間1985アクション判定」の合計が、50%(エネルギーハーフ)以下になっていれば、目標達成ということです。
 
下表は、邸別の1年間のエネルギー消費量を入力するシートで、ここで算出された数値をアナログ的ではありますが、上表の年間レビューのメインシートに転記して使用します。
 
ポイントは、1件1件の住宅で目標達成を評価するのではなく、新築やリフォームも含めた自社の1年分の仕事の結果で評価しようとしていることです。
その意図は、小規模なリフォーム住宅の場合では省エネ化への限界があるため、エネルギーハーフという目標達成は厳しいですが、再エネなどの搭載も含めて大幅な省エネが見込める新築や大規模リフォームで、その分を補ってトータルで評価しようというところにあります。

そしてそれらをまとめて、1985のチームとしての達成度合いを評価し、これからの取組みの糧としていきます。

全体結果の振返り

では、既に実施し、とりまとめた結果を振り返ってみたいと思います。データの概要は以下の通りです。

・2021年及び2022年の2年間の合計
・データの合計は43件(新築がほとんどでリフォームは1件のみ)
・再エネ(太陽光発電)搭載率は70%(設置量平均6.7KW)
・ほぼ6地域
 
データの合計が43件とやや物足りないのは、1年目の記入シートに太陽光発電による売電量を差し引く項目がなく、売電量をカウントしていない住宅が多くあったため、残念ながらそれを除外したことが影響しています。
昨年からは、それを教訓として新たに入力項目を追加したので、除外案件が無くなりました。

上表が結果の一部を添付したものです(見やすくするために地域などの情報を一部非表示にしています)。
以下、全体の結果をざっくりとまとめてみました。

■ 年間1985アクション判定(エネルギー合計) 11%
 
目標の50%以下(エネルギーハーフ)を一応クリアしているものの、以前のコラムでも書いたが(2050年ビジョンとその具体(後半))、新築の目標はリアルZEH。今回のデータがほぼ新築であることからして、0%以下(正確には少々違うが)を概ねの目標達成ラインとすべき。しかしそれには残念ながら若干届かず。

・最高省エネ率 -130%
 
太陽光発電10KW搭載、外皮性能(UA0.42、ηAC0.9、ηAH2.3)
-100%以上というのは、該当する標準家庭の1件分以上の省エネに貢献しているということ。
決して再エネ設備だけに頼った結果ではなく、ちゃんと建物自体の性能がベースとなっているところがgood。

・再エネなしの最高省エネ率 63%
 
外皮性能(UA0.37、ηAC1.0、ηAH1.5)
建物自体の性能は文句なしだが、残念ながら「エネルギーハーフ」には届かず。

・最低省エネ率 283%
 
外皮性能(UA0.51、ηAC1.9、ηAH3)、
建物性能の割には意外にもエネルギー消費量がとても多い。
LPガス多消費(効率の悪い設備機器の使用など)のライフスタイルが要因の1つか。

他に外皮性能などの平均値をまとめておきます。
・UA 0.42W/㎡K
・ηAC 1.1
・ηAH 2.0
・BEI(再エネあり) 0.39
・BEI(再エネなし) 0.64


細かな考察はまた別の機会にしてみたいと思いますが、家庭の省エネは、建物の外皮性能の優劣だけではなく、住まいの大きさや間取り、設備機器の選択、その使い方も含めた住まい手の暮らし方などによっても、大きく変わることが改めて読み取れます。
つまり、良き結果を得るためには、再エネ(太陽光発電)の提案も含めて、つくり手として向き合うべきことが、まだまだ多く存在することを意味しているのだと思います。

また、こうした結果を把握することで、思っていたよりもエネルギー消費量が多い家庭を見つけ出すことができます。今後、そのような家庭に対して省エネに向かうアドバイスをしていくことが、住宅のつくり手としての重要な役割になると思います。
それは住まい手にとってのメリットだけではなく、「省エネの底上げ」という社会的なメリットも生み出します。

地道な取組みではありますが、そうしたアドバイスによって積み上げられた省エネもまた、社会的な貢献に繋がっていくということを自ら意識してもらいたい。その意識はこれからの時代を良き方向へ変えていく意義のあるものだと思います。


今後、会員内の浸透度を高めて、新築だけでなくリフォームの結果も含めて、どんどんレビュー数を増やしていきたいと思っています。
多くの結果が集まれば集まるほど、さらにいろいろなことが見えてくるでしょう。

そして、節目となる2030年には、過去の住宅も含めてできる限りレビューして「2030年の現在地点」をしっかり把握することが当面の目標です。
 
ちなみに、会員以外の方でも1985アクションナビに登録、入力すれば算出できますし(1985アクションナビ)、ご希望があれば年間レビューシートを送付することもできますので、ご興味のある方は事務局までご連絡ください。
 
さあ振り返ろう!


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