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病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第10話「鎮咳去痰薬」

おちおち咳もできない!コロナで注目、咳と痰の薬

この記事は2020年の3月下旬に書いているのですが、巷では寝ても覚めても新型コロナウイルス感染症の話題で持ちきりです。

※わお、ここまで書いたらこんなメッセージが表示されたよ(笑)。

コロナ

この季節には当たり前だった筈の「咳」に、誰もが敏感になっています。

こんなニュースもある位ですから、おちおち咳もできません。

人目が気になること以外にも、咳が長引くと睡眠不足になるわ、食欲も体力も低下するわで、当事者には極めて切実な問題です。

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咳(咳嗽)は持続期間により次の3種類に分類されます。

❶急性咳嗽(3週間未満)
❷遷延性咳嗽(3週間以上8週間未満)
❸慢性咳嗽(8週間以上)

❶の原因は風邪(ウイルス感染症)、❷❸の原因は咳喘息が最多です。

❶はウイルスや細菌を含んだ痰を排出させるための咳(湿性咳嗽)ですが、❷は痰が出なくなっても気道に炎症が残っているために起こる咳(乾性咳嗽)の割合が多くなります。

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そんな時、頼りになるのが「咳止め(鎮咳薬)」です。

とはいえ、咳は生体防御反応。

気管内に貯留した分泌物や異物を気管外へと排除するための仕組みですから、無闇に止めていいものでもありません。

なので、その辺りの塩梅(あんばい)がわからず、使用を躊躇(ためら)っている方も多いのではないでしょうか?

今回は「咳」の薬(鎮咳薬)と、その主な誘因の一つである「痰」の薬(去痰薬)について解説していこうと思います。


主な鎮咳去痰薬の種類と特徴

※本稿は「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」を参考にしていますが、市販薬に絞ってご紹介していきます。

≪咳を止める成分(鎮咳薬)≫

中枢性麻薬性鎮咳成分 ~効き目は最強だがデメリットも多い~
咳中枢の働きを抑えることで咳を止める成分です。「麻薬性」という言葉が気になるかもしれませんが、市販薬に使用されている成分は低濃度なので、法的な麻薬としては扱われません(家庭麻薬と呼ばれます)。

≪代表的な市販薬≫
❶ジヒドロコデインリン酸塩:「パブロンSせき止め」など
❷コデインリン酸塩:「アネトンせき止め錠」など


ただ、コデイン類は効果が高い反面、デメリットも多い薬です。

一つ目は薬物乱用です。低濃度とはいえ、大量に服用すれば立派な(!?)麻薬です。2018年に薬物依存などで全国の精神科で治療を受けた10代患者の4割以上が、咳止めや風邪薬などの市販薬を乱用していたことが厚生労働省研究班の実態調査で分かっています。「消えたい」「死にたい」などと考え、生きづらさを抱えた若者が、一時的に意欲を高めるために市販薬を乱用するケースが多いとのことです。

※後述しますが、コデイン類は「咳止め」であると同時に「下痢止め」でもあります。それを大量に服用するということは頑固な便秘になるのは必至。薬剤師的には・・・(切羽詰まってとはいえ)乱用する気が知れません。

二つ目は呼吸抑制です。「咳止め」が咳中枢に作用することは既にお話しましたが、その作用が強過ぎると、まれに呼吸困難や窒息死を起こすことが知られています。厚生労働省は2017年より12歳未満の小児への処方を制限することを決定しています。また、喘息発作時の咳にも使用できません。

三つ目は消化管運動抑制です。先述の通り、服用すると高確率で便秘になるほか、悪心・嘔吐・口渇などの副作用が出やすい薬です。


中枢性非麻薬性鎮咳成分 ~効果は弱めだが便秘気味の方向け~
コデイン類と同じく咳中枢の働きを抑えることで咳を止める成分です。効果としてはデキストロメトルファンがコデインとほぼ同等とされ、ノスカピンはそれより作用が弱いとされています。麻薬性に比べ効果は落ちますが、副作用は軽いため既に便秘や排尿困難といった症状がある方に向いています。

≪代表的な市販薬≫
❶デキストロメトルファン臭化水素酸塩:「エスエスブロン液L」など
❷ノスカピン:「カイゲン咳止錠」など


気管支拡張成分 ~元々は喘息治療薬・ドーピング禁止薬も~
気管支を広げ、呼吸を楽にすることで咳の症状を緩和します。dl-メチルエフェドリン塩酸塩は多くの風邪薬に配合されている成分ですが、ドーピング禁止薬(興奮薬)に該当するためアスリートの方は要注意です(よく引っ掛かります)。テオフィリンやメトキシフェナミン塩酸塩は喘息の治療にも用いられる成分です。

≪代表的な市販薬≫
❶dl-メチルエフェドリン塩酸塩:「ジキニン顆粒A」など
❷テオフィリン:「ミルコデ錠A」など
❸メトキシフェナミン塩酸塩:「アスクロン」など


抗ヒスタミン成分 ~アレルギー性の咳に有効~
鼻炎薬や風邪薬を中心に多くの市販薬に配合されています。主な働きは、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻の症状の緩和・改善ですが、アレルギー性鼻炎由来の咳にも効果を有します。眠気・口渇等の副作用があります。

≪代表的な市販薬≫
(d-)クロルフェニラミンマレイン酸塩
:「新コルゲンコーワ咳止め透明カプセル」など


≪痰や炎症を緩和・改善する成分≫

去痰成分 ~痰を止めるのではなく出しやすくする薬~
気道の内側は線毛という毛で覆われており、気道から分泌される粘液で薄い膜が形成されています。この成分は気道からの粘液分泌を増やすことで、痰を排出しやすくします。

≪代表的な市販薬≫
❶グアヤコールスルホン酸カリウム:「サトウ 新トニン咳止め液」など
❷グアイフェネシン:「コフト顆粒」など
❸ブロムヘキシン塩酸塩:「ストナ去たんカプセル」など
❹L-カルボシステイン:「クールワン去たんソフトカプセル」など


消炎酵素成分 ~のどの痛みや腫れにも効く・卵アレルギーに注意~
痰や鼻水などのネバネバ成分(ムコ多糖類)を分解することで、痰の排出を促す成分です。炎症を抑える働きもあるため、のどや鼻の粘膜の腫れにも効果を発揮します。ただ、原材料が卵白であるため、卵アレルギーの方には向きません。

≪代表的な市販薬≫
リゾチーム塩酸塩:「ルルアタックEX」など

実はこのリゾチーム塩酸塩、病院の薬としてはほぼ「絶滅」しています。

2016年3月、本薬について厚生労働省再評価部会において「現時点での医療上の有用性は確認できない」との見解が示され、販売中止と自主回収が行われています。

※なお、リゾチームの軟膏製剤(リフラップ)と点眼薬(ムコゾーム、リゾティア)は対象外。


【コラム】ゴホン!といえば、の「あの薬」

咳と痰の薬と言えばこのロングセラー商品、そう「龍角散」を外す訳にはいきません。発祥は江戸時代後期。200年もの伝統を有するこの薬は微粉末状で水なしで服用でき、キキョウ・セネガなどの生薬サポニン成分がのどの粘膜に直接作用し、咳を鎮め、痰を切り、炎症を鎮める効果があります。


鎮咳去痰薬の使い分けのポイント

咳は様々な要因で生じるため、適切な使い分けが大切です。

まずは「基礎編」から。

≪咳の状態から判断≫
乾性咳嗽(「コンコン」「コホコホ」といった痰のからまない空咳)
中枢性鎮咳成分
・湿性咳嗽(「ゴホゴホ」といった痰のからむ湿った咳)
気管支拡張成分・去痰成分

≪のどの状態から判断≫
・「のどの不快感」や「イガイガした感じ」がある場合
⇒ 気道にうるおいを与える液剤、トローチドロップなども

≪咳以外の症状からの判断≫
・「発熱」や「鼻炎」の症状もある場合
総合感冒薬鼻炎薬


ここから先は先述の診療ガイドラインを元に、鎮咳去痰薬の疾患別の使い分けについて解説していきます。

鎮咳薬(咳嗽治療薬)の現状に関するステートメント
1.(前略)可能な限り原因疾患を見極め、原因に応じた特異的治療を行うことが大切である。中枢性鎮咳薬の使用は出来る限り控える。
2.様々なエビデンスが年々増加しているものの、咳が主要評価項目でなかったり評価方法に問題がある研究が多い。多種多様の治療薬選択における標準化はいまだ十分ではなく、臨床現場での有用性を念頭に本ガイドラインの改訂に至った。

このように、鎮咳薬はエビデンス的にはまだカオス状態のようです。

ただ、少なくとも言えるのは、咳の原因を突き止め特異的治療を行うのが原則であり、中枢性鎮咳薬は軽症の場合や他の方法が無効な場合に限定して使用すべきだということがわかります。


では、原因疾患毎に薬物療法に関連するステートメントを紹介します。

A.感染性咳嗽・感染後咳嗽

感染性咳嗽とはどのような概念か
感染性咳嗽の原因微生物はウイルスが最も多く、咳嗽は自然消退するのが大きな特徴である。急性咳嗽の最も頻度の高い原因であるが、感染症による咳嗽は原因微生物が排除されても後遺症状(感染後咳嗽)として残るため、遷延性咳嗽の原因としても高頻度に見られる。

感染性咳嗽の治療の原則は【推奨度B・エビデンスレベルC】

活動性でピークを過ぎていない活動性感染性咳嗽で、抗菌薬治療の対象となる原因微生物は肺炎マイコプラズマ、百日咳、肺炎クラミジアであり、マクロライド系抗菌薬を選択し、非活動性でピークを過ぎている感染性咳嗽では経過観察とし、抗菌薬は使わない。

感染後咳嗽の治療法と患者指導は【推奨度B・エビデンスレベルB】
通常、自然軽快する。遷延した場合には中枢性鎮咳薬などによる非特異的鎮咳治療を行う。


B.慢性気道炎症性疾患

COPD(含慢性気管支炎)の慢性喀痰症状に喀痰調整薬は有効か
【推奨度B・エビデンスレベルA】
喀痰調整薬は、COPDの非増悪時の症状の改善効果は明らかではないが、増悪を抑制するため、使用することを提案する。

COPD増悪の抑制にマクロライド長期療法は有用か
【推奨度B・エビデンスレベルB】
マクロライド長期療法は慢性気道感染症における喀痰減少効果があるため、特に慢性気道感染症を併存しているCOPD患者においては喀痰症状の改善が期待され、実施することを提案する。

COPD(含慢性気管支炎)の増悪時における治療はどのように行うのか
【推奨度B・エビデンスレベルB】
抗菌薬、コルチコステロイド内服、気管支拡張薬
による治療を行う。激しい咳嗽や多量の喀痰を訴える場合には、鎮咳薬や喀痰調整薬が実臨床で処方されることが多い。
副鼻腔気管支症候群(SBS)に対する治療は
【推奨度B・エビデンスレベルC】
SBSに対する第一選択薬は14・15員環系マクロライド系抗菌薬である。
びまん性汎細気管支炎(DPB)の病勢コントロールと予後改善にマクロライドの少量長期療法は有用か【推奨度A・エビデンスレベルC】
DPBの病勢コントロールと予後改善にマクロライドの少量長期療法は有用であり、実施することを推奨する。

DPBの喀痰から緑膿菌が繰り返し検出される場合に除菌は必要か
【推奨度C・エビデンスレベルB】
DPBに対する各種抗菌薬による緑膿菌の除菌治療は、一時的な増悪頻度の減少をもたらす可能性があるが、長期的な効果は期待できない。

DPBの慢性の喀痰症状に喀痰調整薬は有効か
【推奨度B・エビデンスレベルC】
DPBの慢性の喀痰症状に喀痰調整薬が有効なことがある。

DPBの喀痰コントロールに対する14・15員環系マクロライド系抗菌薬(EM、AZMなど)の使い分けはどうするべきか
【推奨度B・エビデンスレベルD】
マクロライド系抗菌薬の投与はEMより開始し、6ヶ月間無効例はMAC症除外の上でCAMあるいはRXM、AZMへ変更する。

DPB増悪時の喀痰コントロールにマクロライド系抗菌薬以外の抗菌薬は有効か【推奨度B・エビデンスレベル-】
DPB増悪時における喀痰増加に対しては、喀痰細菌検査施行の上、エンピリックに抗菌薬を開始する。特に進行症例では緑膿菌をターゲットとする。
気管支拡張症(BE)の慢性の喀痰症状にマクロライド少量長期投与は有効か【推奨度B・エビデンスレベルB】
マクロライド長期投与は、BEの喀痰量軽減や増悪頻度抑制などの点において有用な可能性があり、使用することを提案する。

BEの慢性の喀痰症状に喀痰調整薬は有効か
【推奨度B・エビデンスレベルB】
BEの慢性の喀痰症状に対して、一部の喀痰調整薬が有効な可能性があり、使用することを提案する。
従来型の副鼻腔炎と好酸球性副鼻腔炎の咳嗽の臨床像は
従来型慢性副鼻腔炎では鼻閉・鼻漏(後鼻漏を含む)・頭痛を、好酸球性副鼻腔炎では嗅覚障害をきたしやすい。

従来型慢性副鼻腔炎と好酸球性副鼻腔炎の治療法は
【推奨度B・エビデンスレベルB】
従来型はマクロライド少量長期投与を行う。好酸球性副鼻腔炎では安易に治療を開始せず速やかに耳鼻咽喉科専門医に紹介し指示を仰ぐ。


C.気管支喘息、アレルギー関連疾患

気管支喘息の喀痰症状にマクロライド系抗菌薬は有効か
【推奨度B・エビデンスレベルB】
既存治療に対するAZMの追加は喘息の喀痰症状の改善にも有効であり、症例により使用することを提案する。
アトピー咳嗽の臨床像は
アトピー素因を有する中年の女性に多い。咽喉頭の掻痒感を伴う。咳嗽が多い時間帯は、就寝時、深夜から早朝、起床時、早朝の順に多い。

アトピー咳嗽の治療は【推奨度B・エビデンスレベルB】
ヒスタミンH1受容体拮抗薬
および/または吸入もしくは経口ステロイド薬が有効である。
喉頭アレルギーの病態と分類について
喉頭アレルギーは、喉頭におけるⅠ型慢性アレルギー疾患であり、その原因抗原により、季節性喉頭アレルギーと通年性喉頭アレルギーに分類される。

喉頭アレルギーの治療は【推奨度B・エビデンスレベルC】
ヒスタミンH1受容体拮抗薬の内服
が基本となる。他に漢方薬の有効性を示す報告がある。


D.胃食道逆流症(GERD)

GERDの咳の発生機序は
GERDとは胃酸や胃内容物が胃から食道に逆流することによって何らかの症状や合併症が惹起された場合を指す。咳の発生は、逆流が下部食道の迷走神経受容体を刺激し、中枢を介して反射的に下気道に刺激が伝わる機序と、逆流内容が上部食道から咽喉頭や下気道に到達し直接刺激する機序とによる。

GERDに伴う慢性咳嗽に有用な治療法と患者指導はあるのか
【推奨度B・エビデンスレベルC】
食事療法、肥満の回避に加えてPPIを第一選択薬として使用するが、メタ解析での有効性は限定的であり、多くの症例で消化管運動機能改善薬を併用することを提案する。


E.間質性肺炎(IP)

IPでの咳嗽の機序は
IP(特発性肺線維症;IPF)では咳反射の感受性が亢進している。

IPの咳嗽の臨床像と診断方法は
IP(IPF)では80%以上に咳嗽を伴っており、通常は乾性咳嗽である。

IPの咳嗽の対応の仕方は【推奨度B・エビデンスレベルC】
IPの咳嗽に対して、咳反射を抑制する直接的治療薬(中枢性鎮咳薬、知覚神経に作用する薬、気道炎症を抑制する薬など)を使用する。


F.腫瘍

胸部悪性腫瘍による咳嗽の対応の原則は【推奨度B・エビデンスレベルC】
原疾患の治療が優先されるが、無気肺、閉塞性肺炎、悪性リンパ管症などが咳嗽を誘発し、QOLを著しく損ねる場合がある。喀痰調整薬や鎮咳薬、場合によってはステロイド薬全身投与を行う必要もある。


G.異物

気管支異物は慢性咳嗽の原因となるか
気管支異物の半数以上に咳嗽を認める。多くは2週間以内に摘出されるが、特に小児の場合に異物誤嚥のエピソードが不明確で、異物の多くがピーナッツなど植物性のX線透過異物であることが多く、原因不明の慢性咳嗽として取り扱われてしまっていることがある。


H.睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

咳嗽診断における睡眠時無呼吸症候群の位置付けは
慢性咳嗽におけるOSASの割合は33~68%である。

OSASの治療により咳嗽は改善するか【推奨度A・エビデンスレベルB】
OSASに合併した慢性咳嗽に対してCPAP(持続陽圧呼吸療法)が有効である。


I.高齢者における咳嗽

高齢者における咳嗽の特徴は
高齢者の慢性咳嗽の原因疾患で頻度の高いのは、欧米では喘息、後鼻漏、GERDであり、わが国では咳喘息、SBS(副鼻腔気管支症候群)が多く、非高齢者とほぼ同等であるが、特にSBSの割合が高いことが特徴的である。また、咳嗽を呈する高齢者においては、種々の咳嗽の原因となる疾患が複合して存在することを考慮しなければならない。

嚥下反射の低下した高齢者の咳嗽治療に関する注意点は

【推奨度B・エビデンスレベルB】
誤嚥性肺炎の予防薬としてACE阻害薬は誤嚥のハイリスク患者に限って有用であるが、アマンタジン(シンメトレル)、カベルゴリン(カバサール)、テオフィリン(テオドール)は推奨されず、シロスタゾール(プレタール)は出血の危険性があるので使用すべきではない。


J.薬剤による咳嗽

咳嗽を誘発する代表的な薬剤は
咳嗽を誘発する薬剤の代表としては、高血圧治療薬として使用されるACE阻害薬があげられる。

薬剤による咳嗽の診断法、対処法は、また原因薬の再投与は可能か
【推奨度B・エビデンスレベルB】
ACE阻害薬による咳嗽の治療および対処法として、①まずACE阻害薬の投与を中止してみる、②必要な場合の再投与は中止4週以降可能、③中止できない場合には咳嗽抑制薬の投与、④ARBに変更する。


K.職業性・環境因子

職業性・環境因子による咳嗽の特徴は
特定の職場環境やその他の環境因子により発症・増悪し、その環境を離れると消失・軽快し、戻ると再発・増悪する。

職業性・環境因子による咳嗽の治療は【推奨度A・エビデンスレベルA】
原因の職場や環境因子からの曝露の回避が第一選択である。


L.小児

小児の慢性咳嗽の原因として頻度の高いものは成人と同様か
成人と異なり、小児の慢性咳嗽では、喘息、副鼻腔疾患からの後鼻漏症候群の他、百日咳やマイコプラズマ肺炎などの下気道感染症による咳嗽の頻度が高い。

小児における咳嗽に中枢性鎮咳薬は有効か
【推奨度C・エビデンスレベルA】
中枢性鎮咳薬は咳嗽の特異的治療になり得ないため、合併症を伴い患者のQOLを著しく低下させる咳嗽の場合に限って使用するのが原則である。

小児の喀痰を伴う咳嗽に対してコデインを含めた鎮咳薬の使用の考え方は
【推奨度D・エビデンスレベルC】
小児における喀痰を伴う咳嗽に対して鎮咳薬の有効性は限定的で安全性は年齢に依存し、コデインの使用は原則禁忌である。

小児の慢性の喀痰の症状に対して喀痰調整薬は有効か
【推奨度C・エビデンスレベルA】
小児における慢性的な喀痰に対して喀痰調整薬の有効性は限定的である。

小児に対する喀痰調整薬の種類による効果の違いはあるか
【推奨度C・エビデンスレベルB】
小児における慢性的な喀痰に対する効果に喀痰調整薬の種類による違いはない。
クループとはどのような症状か
上気道炎(感冒)症状が先行した1~3日後に、犬吠様咳嗽、吸気性喘鳴、嗄声、呼吸困難などの症状が出現する。

クループ出現早期に有効な治療法は【推奨度B・エビデンスレベルB】
アドレナリン(ボスミン)吸入
の方がステロイド薬と比較して効果発現時間は早い。しかし、アドレナリン吸入の作用時間は2~3時間と短いため、注意が必要である。

クループにステロイド薬の効果はあるか【推奨度A・エビデンスレベルB】
ステロイド薬はクループの全ての重症度に有効である。軽症例からデキサメタゾン0.15mg/kgの経口または筋注の単回投与が推奨されている。
小児の感染後の咳嗽は一般にどれ位の期間続くのか
小児急性呼吸器感染症による咳嗽の多くは、1~3週間以内に自然軽快する。

小児の感染後の遷延性咳嗽の原因として多い原因微生物は
小児の感染後の遷延性咳嗽の原因微生物は、百日咳、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、ライノウイルス、RSウイルスなどが多い。
小児喘息の咳嗽の原因は
気道平滑筋の収縮に関連した咳受容体への刺激の他、慢性の気道炎症による咳嗽の被刺激性の亢進、気道分泌過多による直接的な刺激が考えられる。

小児の喘息発作(急性増悪)に伴う咳嗽の治療は
【推奨度A・エビデンスレベルD】
小児の喘息発作(急性増悪)に伴う咳嗽治療には、喘息発作のコントロールが基本となる。

小児の喘息の慢性の喀痰症状に喀痰調整薬は有効か

【推奨度-・エビデンスレベルD】
喀痰症状を含む小児気管支喘息長期管理において、喀痰調整薬の効果は明らかでない。

小児の肺炎・気管支炎の急性の喀痰症状に喀痰調整薬は有効か
【推奨度-・エビデンスレベルD】
喀痰症状を含む小児の肺炎・気管支炎治療において、抗菌薬との併用に関し有効性が示唆されるが、十分なデータはない。


以上、終盤は専門的な内容が非常に長くなってしまいました。

ただ、ひと言に「咳」と言っても、その背景には様々な原因が隠れていることがおわかりいただけたと思います。


最後に「市販の咳止めを第一選択とすべきではないケース」をご紹介して終わりにします(下記の場合は医療機関を受診してください)。

■3週間以上咳が止まらない場合
⇒ 気管支喘息、アレルギー性鼻炎の他、肺結核や肺がんなど重大な病気が隠れている可能性があります。

■体温が38.5℃以上ある場合
⇒ インフルエンザを含む風邪や気管支炎などの疑いがあります。


まとめ動画を作ってみました。おさらい用にどうぞ。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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