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悪循環から抜け出せないフェラーリ——F1フランスGP決勝

前記事で記載したルクレールのクラッシュは、本人のミスが原因だったようだ。無線で叫びまくったスロットルの問題も「戻らない」のではなく、クラッシュしたタイヤバリアから抜け出そうとした際に「踏み込めない」ことを訴えていたようだ。

チームはドライバーを守って欲しい

ルクレールがレース後に「自分のミス」と認めたころ、ビノット代表はスロットルトラブル再発を即座に否定したという。双方の発言の時系列順が不明だが、私にはビノットの発言はドライバーにやや冷たいように映った。

ドライバーがトラブル原因でのクラッシュを主張した場合、チーム監督は、たとえドライビングミスが濃厚だとしても「原因を詳細に分析しなければならない。ファクトリーに戻ってデータをチェックする」と、ドライバーをかばってその場は収めるコメントを出すのが普通だ。今回のビノットのコメントは、例えが悪いが、デイモン・ヒルのミスに冷たく当たり続けた90年代半ばのウィリアムズを思い出させた。

クリスチャン・ホーナーやトト・ウォルフはこの手のコメントのさじ加減がうまく、エンジニアへの疑念を晴らしつつもドライバーの顔を立てるバランスを忘れなかった(もっとも、矛先が他チームに向かうことも多かった。さらに付け加えるなら、トトの場合は机やヘッドセットが犠牲になるケースもあった)。

今回の件は全面的にドライバーが非を認めている以上、ビノットは状況を正確に伝えることに徹しただけかもしれない。しかしながら、ルクレールを記者たちの前で「針のむしろ」状態で晒すのもいかがかと思う。

クラッシュ後の一瞬の憤りののち、我に返って顔面蒼白となったルクレールの姿が痛々しい。彼が無理をした責任の一端は、これまでの数レースを作戦ミスで棒に振ったチームにもある。大事なドライバーをしっかりケアして欲しい。

(7月28日追記)
autosportの「クラッシュのルクレールを批判から守るフェラーリF1代表」の記事によると、通常はチーム代表とドライバー2人で臨むレース後の定例会見を、今回はビノットだけが出席し、ルクレールをかばう配慮をみせたようだ。マッチポンプのような記事になってしまい申し訳ない。

サインツにフェラーリの災厄が降りかかる

ルクレールが消えてから、『フェラーリの災厄』はサインツへ一身に降りかかった。

  • セーフティーカー中のタイヤ交換での無理な発進指示がたたって5秒ペナルティ

  • チーム側が無線で罰則の内容を「5秒のストップ&ゴー」と伝えたところ、サインツに「5秒加算ペナルティだろ!」と訂正される

  • 一度サインツからのタイヤ交換の提案を却下して「ステイアウト」を指示しながら、数周後にやっぱりタイヤ交換するよう指示。しかもサインツはペレスとの激しいバトルの最中だった。

無線の内容が正しいか疑ってかからなければならないとは。ドライバーはさぞかしストレスが溜まることだろう。

https://video.twimg.com/ext_tw_video/1551523719666757633/pu/vid/888x514/HvLSgtj_nRKprcvF.mp4?tag=12

一連の無線についてもビノットは「チームの作戦は問題なかった。サインツとのコミュニケーションも円滑だった」と語っているが、ルクレールの件よりこのコメントの方がよほど真偽が疑わしい。

フェラーリはここ数年、「速さはあるけどトラブル続き」→「ピット作戦も失敗」→「チームの士気が下がり安全策に走る」→「その隙をライバルチームに突かれる」→「ドライバーが腕でカバーしようと無理してクラッシュ」、の悪循環を演じてきた。特に2018年は。このままでは「→お家騒動」という強烈なバッドエンドも思い浮かぶ。

せめて鈴鹿までタイトル争いが続いて欲しい。。。

フランスGPでのフェラーリの収穫は、マシンの総合力ではレッドブルにいまだ負けていないことを示せたことだ。気温の高い状況でのタイヤの使い方はフェラーリに分がありそうで、直線で負けてもコーナーで稼ぐ傾向が見て取れた。

また、予選でルクレールにポールポジションを取らせるためのチームプレーは圧巻だった。フェラーリもきっちりプランニングすれば狙った結果は出せる。サポート役のサインツも素晴らしい働きを見せた。

持ち上げたり、けなしたりでフェラーリには申し訳ないが、このままではチャンピオンシップが終わってしまう。63ポイント差の状況は厳しいが、夏休み前のハンガリーで勝てればまだ踏ん張れる。がんばれ!フェラーリ!

今回のGP後、2018年スペインGPのライコネンのリタイア後に泣きじゃくったこの子の写真がTwitterの至るところに貼られていた。この子が泣かずにすみますように!

その他、書ききれなかったこと

  • フランスGP決勝同日の鈴鹿日本GPチケット争奪レースははるかに過酷なレースとなりました。しばらく、あのサイトの画面と文字化けしたエラーメッセージは見たくない。

  • 前年、接触が頻発した姿とはうって変わり、ライバルに前に出られても冷静沈着なフェルスタッペンは成長の跡を感じる。逆に言えば、ルクレールがこれくらいの落ち着きを身につけるにはタイトル争いを1回経験してから、となるのだろう。

  • 今季自己最高2位につけたハミルトンはさすが。レース中に機器の故障で水分補給できなかったようで満身創痍のレースだった。アゼルバイジャンに続き、体力的に厳しい状況が続く。ドライバーが床に寝転がるシーンは初めて見た。

  • アロンソ6位は素晴らしい。オコンの順位を考えても、アルピーヌが「ベストオブレスト」とは必ずしも言えないと思うが、きっちりノリスらを抑えるのはさすが。

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