■台湾に残る日本語-烏龍麺
多種多様な食文化を受け入れている台湾は、麺料理の激戦地でもある。
牛肉麺から台南名物の担仔麺、戦後に大陸から逃げてきた中国人が広めたのだろう、炸醬麵や刀削麺の店があれば、日本のラーメンもある。厳密には麺ではないが、台湾ならではの米粉も存在する。
その中で受け入れられている日本の麺がある。うどんである。
台湾のうどん食歴は意外に古く、おそらく日本統治時代にさかのぼるのではないかと推測している。
丸亀製麺も台湾に進出しており、驚くなかれ台湾全土にすでに40店舗以上もある。
台湾では、うどんを「烏龍麺」と表記する。発音は北京語で「ウーロンミエン」である。
字面から烏龍茶の親戚か何かを想像するかもしれない。24年前、私が初めて台湾に足を踏み入れた時、うどん屋に並ぶ「烏龍麺」の文字を見て、
私「烏龍茶と何か関係あるのか?」
台湾のうどんは烏龍茶から出来ているのか?そんなまさかな…麺も白いし…と考えてしまった。漢字から来る連想力のパワーはすごいものである。
当然、烏龍茶とは何の関係もない。
■なぜ「烏龍麺」なのか
実は、中国や香港でのうどんの中文表記は、烏龍麺ではなく「烏冬麺」である。
香港ではまれに烏龍麺の表示を見ることがあるが、中国では「烏冬麺」一本である。
「烏冬麺」は北京語で「ウードンミェン」、つまり「うどん」の音訳であり、音訳としてはむしろこちらの方が正確である。
ではなぜ、台湾のみ「烏龍麺」となったのか。
これには、台湾語の音韻が関係する。
黒輪(おでん)の項でも述べたとおり、台湾語にはdまたはdzの音がLに変化してしまうという癖が存在する。
台湾語を学問として体系づけた王育徳によると、日本統治時代の内地人向け旧制中学受験の面接の際、本島人(台湾人)には「ざ行」「だ行」をひたすら言わせる試験があったという。
具体的には、「どろどろ」「ラジオ」などを発音させる。台湾人は、「ろろろろ」「らりお」となってしまうのである。
こうして、入試で本島人の訛りがないかのチェックをして篩にかけていたという。
うどんも同様に、「ど」が台湾語の音韻変化で「ろ」に変わってしまい、「うろん」と戦前から言われていたのであろう。戦後に「烏龍」と当て字をされ現在に至る。
これが、常識的にそうだろうと考える説である。
しかし、これには異説も存在する。
西日本、特に関西や九州の人間は、無意識にうどんを「うろん」と言うことがある。私も「けつねうろん」(きつねうどん)と発音していたお年寄りを何人か見たことがあるし、私本人も東京のうどん屋に言わせれば「うろん」と言っているそうである。
起源うんぬんは関係なく、今日も台湾でうどんが台湾住民の胃袋に消えていくのである。
=外部リンク=(姉妹ブログより)
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