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晩秋の乾燥と薬膳

澄んだ空気、美味しい旬の味覚。秋の深まりとともに、日に日に冬が近づいてきていることも感じさせられます。

秋は「芸術の秋」「食欲の秋」といわれたり、ファッションでも重ね着で遊べるようになったりと、楽しみが増えてきますね。今は、なかなか以前のようにお出かけもままならない状況ではありますが、さまざまな工夫をしながら、皆で乗り切りたいものです。

さて、そんな風に、秋は過ごしやすい時期ではあるのですが、朝晩の冷え込み、空気の乾燥などから体調を崩す方も増えているかと思います。
この時期、咽の痛み、乾燥、咳や痰などはつきものですが、コロナ下にあっては、そういった症状があるとドキッとしてしまいますね。周囲の反応も気になったり……。

そもそも、漢方の考え方では秋は呼吸器系のトラブルが起こりやすいとされています。

五行図

これは、漢方のベースとなる「五行」の図です。私たちを取り巻くあらゆる物事はこの「木・火・土・金・水」に振り分けられるという考え方ですが、季節も「五季」といい、秋はこのうち「金」の部分にあたります。

ここに「肺」とありますが、これは内臓の肺を示しているのではなく(結果的につながる部分もあるのですが)、生理的な機能を表していて、呼吸器、皮膚などをつかさどる部分とされます。様々なアレルギーなども密接な関わりがあると考えられています。

秋はこの「肺」が空気の乾燥によってダメージを受けやすいため、皮膚の乾燥や色々なトラブル、そして先に述べた咽の不快感、咳、痰などが引き起こされやすいのです。

この外的要因は私たちが自然の一部として生きている上で避けられないことなので、自分たちに出来ることとしては、こういったことがあると知った上で、皮膚の乾燥対策をすること(こまめにクリームを塗る、肌を露出しないようにし外気から守る)、そして、身体の内側から潤いを補うようにすることです。これはお食事面で出来ること、すなわち薬膳です。

では、下記に、薬膳の観点からのおすすめ食材をご紹介します。
秋の咽や皮膚の乾燥には果物が潤いを与えてくれるので大変おすすめなのですが、果物は身体を冷やす作用もあるので、生食での食べ過ぎには注意してください。

秋の乾燥におすすめの食材

れんこん
咽の乾燥、咳、痰、消化不良、皮膚の炎症
白ごま
便秘、皮膚の乾燥、咽の乾燥、目の充血
さつまいも
慢性疲労、食欲不振、便秘
さんま
体力低下、慢性疲労、食欲不振、消化不良
チンゲン菜
消化不良、便秘、イライラ、皮膚の炎症
きんかん
咽の痛み、咳、痰、気分の落ち込み

皮膚の乾燥、咽の痛み、痰、空咳、ほてり

冬へむけての対策

また、これからどんどん気温が下がり、いよいよ冬へ向かっていきます。
新型コロナウィルスの次の波も警戒しなくてはいけませんし、インフルエンザの流行の恐れもあります。

冬本番になってから免疫強化をしようとするのでは遅いので、今から対策をしておくことが重要です。
とはいえ、ひとくちに免疫強化といっても何をすればよいのか悩むところですね。
漢方では、免疫の強化にはエネルギーの源である「気」と栄養供給をつかさどる「血」を充実させることが重要とされています。これも、様々な食材によって補うことができます。

気を補う食材

山芋
慢性下痢、食欲不振、頻尿、喘息、老化現象
人参
食欲不振、下痢、便秘、視力低下 
雑穀類
脾虚による消化不良、下痢
大豆
お腹の張り、むくみ、黄疸

血を補う食材

肉類(牛、豚、鶏など)、レバー
血の不足、慢性疲労、血行不良、乾燥、便秘
クコの実
血の不足、目のかすみ、めまい、乾燥
きのこ類(椎茸、舞茸など)
慢性疲労、血の不足、消化不良、老化現象
なつめ
栄養失調、倦怠感、食欲不振、慢性下痢、花粉症

こうした食材を上手にお食事に取り入れて身体の中から気血を充実させつつ、身体を冷やさないように心がけ、これからの季節に備えてください。

この記事を書いてくれた人:古橋 智子(漢方・薬膳・保存食講師)
漢方上級スタイリスト、養生薬膳アドバイザー、中国茶アドバイザー、かんぶつマエストロ。薬日本堂漢方スクール、長谷園 東京店 igamonoなどで講座を担当。20代より保存食作りに親しみ、数々のレシピを考案。素材の旬だけでなく、一人ひとりの体質や体調に合った保存食を提案したいという思いから漢方、薬膳を学ぶ。

インスタグラム
https://www.instagram.com/yakuzen_everyday/

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