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組版の基礎

こんにちは!株式会社 form and craft です。今回も、弊社内で実施している学びのプログラム「フォームアカデミー」について記録していきます。(アカデミーの目的や今までの活動についてはこちらをご覧ください)


4月のアカデミーでは、座学と実習を交えながら「組版(くみはん)の基礎」について学びました。

1.組版とは

組版とは、元々は活版印刷の用語で「活字を並べたものを結束糸で縛って、版を作ること」に由来していると言われています。
現在では、IllustratorやIndesignなどのソフトを用いて「文字や図などを使って紙面を作ること」を意味する言葉となりました。こうして今では誰もが文字を組めるようになりましたが、ただ原稿を流し入れただけでは、美しく読みやすい紙面を作ることはできません。
書体の種類や文字の大きさ、行間など、作りたい紙面の雰囲気に合わせて様々な条件を設定する必要があります。

出典: 毛萱街道活版印刷製本所(https://note.com/kegayakaido/n/n29e65132db6f)

左図の並べられた金属活字を見てみると、日本語の活字は一文字が正方形のマスの中に収まるようにデザインされています。組版において、「文字」が最小単位であり、紙面設計の基準になっているということが分かりますね。ソフトを使って組版をする場合も、最小単位である文字の「正方形」を意識することが重要になります。


2.組版の単位

先ほど「文字が最小単位」であるとお伝えしましたが、文字に限らず、紙面の設計は全て「数値」によってコントロールします。
以下に、設計の基準となる代表的な要素をご紹介いたします。

●判型
判型とは、書籍・雑誌・印刷物の仕上がりサイズのことです。日本ではJIS工業規格に基づいたA判とB判が多く使われています(変形判もあります)。
A判は19世紀末にドイツの物理学者オズワルドによって提案されたドイツの規格で、現在では国際規格サイズになっています。一方B判は、日本国内の規格サイズです。

A判の規格

●活字書体の単位
紙面のデザインにおいて、文字の単位はQ(級)、行送りにはH(歯)を用います。1Q=1H=0.25mmという関係です。弊社ではこの文字サイズをベースに、グリッドを用いて版面を作っていきます。

活字書体の単位
上部および左部に配置されている正方形の連なりがグリッド

●字間と字送り、行間と行送り
これらの設定を少し変えるだけでも、読者に与える紙面の印象や文章の可読性が大きく変わります。
例えば同じ文字のサイズでも、行長(1行の長さ)が長い場合は、行間を広く取る方が読みやすくなります。一方で、行長が短いキャプションなどについては、行間が狭い方が読みやすくなります。
ちなみにIllustratorの初期設定では、行間は二分四分アキ(75%)に設定されていますが、弊社では行間全角アキでゆったり組むことが多いですね。

出典: 朗文堂新宿私塾


3.組版のルール

組版にもいくつかのルールが存在します。ルールというと堅苦しい感じがしますが、読者の誤読を防ぐための習慣的な読みやすい組み方のことです。
「どのルールが正しい」というわけではなく、「どういう狙いを持って、どういうルールで組むか」ということが最も大切になります。
この場で全てを説明するのは難しいので、一部資料を抜粋して紹介します。

●組版体裁
「横組み」「縦組み」という言葉は聞き慣れていますが、文字の組み方にも複数の種類があります。弊社では「箱組」「ラギッド」「センタード」をよく使います。
私の場合は、言葉を大切に情緒的に読んでほしい文章は「ラギット」、文字量が多く可読性を確保したい時や淡々と読んで欲しい時、デザイン的に角を出したい時には「箱組み」を使うことが多いです。

出典: 朗文堂新宿私塾

●禁則処理
禁則処理とは、行の始めである「行頭」や行の最後である「行末」に、特定の文字が配置されてしまわないよう、文字の並べ方を調整することです。禁則処理をしないと文章が読みにくくなったり、文意を取り違えたりする可能性があるので、丁寧な調整が必要です。

出典: 朗文堂新宿私塾


4.実践

座学の後は、実際に組版を組んでみました。
以下は自由課題の模様です。

〈組版の課題〉
読み物(縦組み・単行本)の組版です。
本文の内容を読んで、組版設計をしてください。

〈条件〉
●サイズ
四六判:127×188 mm(片ページの仕上がり寸法)
※他は、自由に設定してください。
●構成
・扉
・本文(ノンブル、柱は必須要素です。)
・奥付

〈素材〉
原稿のテキストを参照。

普段はWebデザインをメインに行なっている社員も多く参加したため、pixelとは違う、Illustratorの0.1mm以下の細かな作業に苦戦している社員も見受けられました。
きれいな組版を組むというのはデザイナーとして当たり前のことながら、当たり前のことを当たり前に行う難しさを実感しました。

自由課題 講評の様子

張り出された組版を見てみると、それぞれ黒味の程度や余白の取り方に個性が見られますね。同じ原稿を使って組んでいながら、読者に与える印象というのはだいぶ変わってくるのではないでしょうか。

紙面は「版面」「Q数」「字送り」というシンプルな要素で構成されていますが、これらの数値を変えることで印象ががらっと変わります。
読みやすい紙面を作ることは大前提ながら、どんな雰囲気の紙面をつくりたいか狙いを持って、その表現を感覚的に数値でできるようにならねばと感じました。

それでは、次回の投稿もお楽しみに!

text:NISHINA

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