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相手のウソは「パラ言語」にあらわれる

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先日、大谷選手の記者会見を分析した微表情研究の第一人者・清水建二さんの『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』をご紹介しました。

今日は「表情」ではなく「言語」。それも「パラ言語」についてご紹介します。これが「下手な嘘つき」がよく使う言語なんです。


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言葉にならない言葉
「パラ言語」からウソが露呈する

 声のスタイルの中の返答速度とポーズに関係するワードとして、パラ言語というものがあります。パラ言語とは、端的に言うと、言葉にならない言葉のことを言います。
 私たちは、返答に窮したり、思うような適切な言葉が見つからなかったりするとき、言葉に詰まることがあります。そんなとき、「え〜」「ん〜」「う〜ん」「あの〜」「その〜」というような言葉を発し、言葉と言葉との間をつなごうとします。
 これらの明確な意味を持たない言葉がパラ言語と呼ばれるものです。言葉と言葉との間をつなぐ働き以外にも、軽蔑を感じている人が「フンッ」と鼻から抜けるような音を発することがありますが、これもパラ言語の一種です。
 さて、こうしたパラ言語ですが、パラ言語を発している人の本音とは何でしょうか。
 パラ言語の行間にはどのような意味があるのでしょうか。
 何らかの質問に答えるまでになされるパラ言語と、言葉と言葉の間に置かれるパラ言語について注意すべき瞬間が多いため、この2つのケースに特化して説明します。
 返答の間になされるパラ言語も、言葉と言葉の間に置かれるパラ言語も、基本的な理解としては「認知的な負担の高まり」、つまり、頭がいっぱいいっぱいな状況だと考えられます。
 この頭がいっぱいいっぱいになる原因としては、返答のシーンならば、回答するのが難しい、質問の意味や意図を考えている、適切な言葉を探している可能性が考えられます。
 言葉と言葉の間に表れたパラ言語ならば、適切な言葉を探している可能性が考えられます。
 パラ言語はこうした会話のシーンで頻繁に見られるため、パラ言語の意味について深く気に留める必要がないことがほとんどです。したがって、通常のパラ言語に関して言えば、そのまま相手の言葉が出てくるのを待てばよいでしょう。
 もしくは少し踏み込み、相手のパラ言語をサポートするのもよいでしょう。例えば、「え〜」とか「う〜ん」と言っている会話相手に「この質問は○○な意味です」というふうに発言をわかりやすく言い換えたり、「□□と言いたいのですか?」と相手が探しているだろう適切な言葉を代弁したりすることで、コミュニケーションを円滑にすることができます。
 しかし、注意すべきパラ言語があります。
 それは、返答が容易なはずの質問や、話すことが容易なはずの話題について、話者の口からパラ言語が出てくるときです。このような場合のパラ言語は、適当な答えを見つけるまでの時間稼ぎと解釈することができます。
 例えば、昨日の晩、懇親会に行っていたという夫に妻が朝、何の気なしにそのことについて質問しているシーンです。

 妻:昨日の懇親会は楽しかった?
 夫:……まぁね。
 妻:懇親会はどこであったの?
 夫:どこって? えーっと、ほら、あそこだよ、新宿の、新宿だよ。
 妻:新宿のなんてお店?
 夫:新宿の……え〜何だっけかな、名前。
 妻:誰と一緒だったの?
 夫:う〜んと、同僚の……鈴木だよ。
 
 昨日の晩の記憶です。もちろん人により記憶力や注意力は様々ですから一概には言えませんが、記憶が鮮明なはずの出来事について聞いているのに、パラ言語が多いのは不自然です。
 この例で言えば、「場所」「誰と一緒だったか」という記憶です。お店の名前までは忘れても、新宿という地名がすぐに出てこなかったり、誰と一緒だったかすぐに出てこないのは、ちょっと怪しいです。
 新宿という地名や鈴木さんという同僚の名前がすぐに出てこなかった特別な理由、認知的な負担を抱えた何らかの原因がある可能性が高いです。「なぜ時間稼ぎする必要があるのだろう?」と考えてみることが必要です。
 もちろん、この段階で夫がウソをついていると断定してはいけません。単純に妻の問いに上の空の状態である可能性もあります。例えば、今日の仕事のことで頭がいっぱいで、自分の意識と関係のない質問に答えるのに時間がかかっているだけかもしれません。
 いずれにせよ、このような簡単な質問にパラ言語がいくつも表れたら、注意し、追加的に質問をすることで、パラ言語の行間が読めてくるでしょう

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みなさんもどうか「パラ言語」にはご注意ください。

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