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“静かなる勝負の舞台”を背景に、自分を取り戻す世界観を綴った名作

こんにちは
編集部の稲川です。

もうすぐ北京オリンピックが始まりますね。
私は、ウインタースポーツはあまり詳しくないのですが、妻がいつもフィギュアスケートを観ているので、ジャンプ技などひと通り覚えてしまいました。

トリプルサルコウ、トリプルルッツ、トリプルトゥーループ、そしてトリプルアクセルは、ほぼ解説者と同時に技の名前が言えるようになってしまいました。
さらに、私の楽しみ方はおおよその得点を当てることです。
こちらは、さすがに素人なのでかなり近い得点の場合もありますが、いい演技だなと思ってもそれほど点数がつかないケースもあります。

本当に好きな人は、選手が事前に提出したプログラムをチェックして、その通りに演技しているかどうかも判断しているのでしょう(あとはスケーティングとか)。

まあ、オリンピックでのメダルの数はともかく、スポーツを純粋に楽しみたいと思います。
そして、東京オリンピックに引き続きコロナ禍でもありますので、無事に開催されることを願っております。

さて、本日はスポーツではなく、頭脳のスポーツ「将棋」について。
現在、藤井聡太4冠が王将戦で王手をかけ、史上最年少の5冠が目前に迫っています。
名人に挑戦できる階級のA級昇級も見えてきて、来期は名人挑戦(名人戦)ということになるかもしれません。

その名人は、目下、王将戦を戦っている渡辺明名人。
ストレート(4勝)で王将位を奪取すれば、名人も藤井4冠が苦手な棋士となってしまい、もし名人戦を戦えば名人位も奪われてしまうかもしれません(今はまずあり得ない話ですが)。

そんな将棋の世界ですが、多くの人(男性が多いでしょうか)が将棋を指したことがあるのではないでしょうか。私は小学生時代に父親や友達と将棋をして遊んでいましたが、とにかく負けると悔しいものでした。

将棋を始めたばかりの頃は、父親の棒銀(戦法の一種です。将棋を知らない方はごめんなさい)の一本鎗にやられてばかりいました。
そこで、詰将棋の本や戦法ごとの本を買って研究しました。

当時は、二上達也氏(羽生善治さんの師匠です)の詰将棋の本や、中原誠名人(当時)の本などで、将棋盤に駒を並べながら、一丁前に棋士を気取っておりました。

それでも下手の横好きで、やっていれば定石(すでに研究しつくされてる最善の手)なども覚えていき、父親の棒銀も一蹴することができました。
まあ、そうなってしまうと父親は将棋に付き合ってくれなくなりましたが・・・。

とにかく、子どもの時代に“将棋”をかじった程度です。

さて今回、紹介するのは、将棋を知らなくてもハマる、あの有名なマンガです。
『3月のライオン』(羽海野チカ作、白泉社)

3月のライオン

この作品は、アニメや実写映画にもなり、現在16巻300万部以上売れている人気マンガです。
2011年にはマンガ大賞も受賞していますから、マンガ好きな人なら、たいてい読んでいるのではないかと思います(私は電子書籍で読んでいます)。

この作品が素晴らしいのは、登場する人たちの人間模様が織りなす優しさや主人公が自分を取り戻していく成長物語にあります。
ので、将棋の場面、とくに棋譜(指した手の記録)など解説も、次の一手を作中で見せるということもありません。設定が将棋(棋士たち)の世界という感じです。

高校のプロ棋士、桐山零は幼い頃に事故で両親を亡くし、父の知り合いであった将棋棋士の一家に養子として弟子入りする。その家族に気に入られようと将棋の猛勉強をし、プロとなった零。
しかし、周りには友達もなく、一家の異兄弟からは妬まれ、どこにも居場所がなかった。
零はそんな状況に耐え切れず、一刻も早く自立するため、プロ棋士となり家を出て独り暮らしを始める。その街は、大きな川沿い
その後、1年遅れで高校へ入学し、そこで自分探しを始めるも浮いた存在だった。
ある日、棋士の先輩たちに飲まされ、スナックのホステスをしていた川本あかりに介抱される。目覚めるそこは零の住む街の川向こうにある、あかりの家だった。彼女は祖父の営むお菓子屋「三日月堂」で働いていて、ホステスは叔母の手伝いだったのだ。
その川本家には、あかりの妹2人、姉妹3人で暮らしていた。母親と死別し父親は彼女たちの前から姿を消していた。そんな3姉妹はいつも元気で、家族のように接してくれるうちに、零は自分の居場所を見つけていく・・・。

こんなストーリーですが、もう将棋感というのはありません。
それでも舞台は将棋。冒頭にもあったタイトル戦(予選や本選)やA級以下、B、C級などの順位戦の模様なども描かれています。

マンガの監修は、先崎(せんざき)学九段。
もう完全に私の世代の棋士で、マンガではコラムを執筆しています。
もともと筆の立つ方で、棋士の生活を描いたエッセイは本当に笑えます。

その昔、読んだ本に『フフフの歩』(講談社文庫、『世界は右にまわる-将棋指しの優雅な日々』を改題)があります。

フフフの歩

とにかく棋士(当時の)は破天荒。
酒、麻雀、競馬などの話がとにかく面白く、先崎ファンの私としては、『3月のライオン』の監修とコラム(こちらは、筆致はそのままも少し真面目か)は、本当にうれしい限り(ちなみに関係ない話になりますが、私が応援しているのは郷田真隆九段。とういうのも、同じ生年月日だからです)。

と、『3月のライオン』の続きから目が離せませんが、最後にこのタイトル。
一見、何の意味だろうと思う方もいるのではないでしょうか。

実は3月は、棋士たちが最も熱い戦いを繰り広げる順位戦の最終局がある月です。
棋士はA級に在籍しなければ名人に挑戦する権利すらありません。さらに、各級には昇級、降級があり、この一局で昇級・降級が決まるという場面では、ライオンのごとく戦うのです。

今期は、あの羽生善治永世名人がA級から降級のかかる場面となるかもしれません。
羽生さんと同じ世代の私としては、羽生ライオンを観たいところです。

あっ、もちろん妻は羽生ちがいですが、フィギュアの羽生選手を応援するそうです。

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