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認知症介護はエンターテイメント!?

フォレスト出版編集部の寺崎です。

いよいよ昨日からアメブロ「介護日記ジャンル」のトップブログ「アルツフルデイズ」を書籍化した『アルツフルデイズ 笑いと涙の認知症介護』(ワフウフ・著)がAmazonより発売となりました。

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ちょうどさきほど、著者のワフウフさんをゲストに迎えたVoicy(フォレスト出版チャンネル)の収録を終えました。放送1日目は「家族が認知症になった!そのときどうする?」、放送2日目は「認知症介護のリアル」をテーマにトークしています。

放送予定日は5/9(火)、5/10(水)です。制作の舞台裏、本では伝えきれなかった著者のメッセージなどが聴ける回となっていますので、ぜひご期待ください。

今日は『アルツフルデイズ』がどんな内容かお伝えしようと思います。今日ご紹介するのは「あーちゃん」ことお母さんが認知症であることが判明して、病院に連れていくまでのお話をご紹介します。

▼関連記事はこちら(「まえがき」が読めます)

突然過ぎて途方に暮れた
始まりのはじまり

 
 2017年3月、それは母・あーちゃんからの
「貸金庫にお金が全然入っていないのよ!」
 という1本の電話から始まった。
 
 色々複雑な事情があり、実家で父・たんたんと暮らしているあーちゃんのお金に関しては、どこにいくらぐらいあるのかを姉・なーにゃんも私・ワフウフも把握していた。そして、なーにゃんとワフウフで預かっているものも一部あった。
 
 あーちゃんは貸金庫にまとまった現金を持っていたはずだ。それが全てなくなったと言うのだ。それで、お金が必要だからワフウフが預かっているものからお金をおろしたいと言うのであーちゃんと会うことになった。本人のものなのだから、あーちゃんのお金をおろすのはもちろん構わない。だけど、どうして貸金庫の現金がなくなってしまったのか? 貸金庫のお金を取り出せるのは本人だけなのに……。
「貸金庫にお金がない」「どうしてないのかわからない」と繰り返すあーちゃんに、ワフウフが「〇〇に××があるでしょ、□□に△△があるでしょ」
 と、ひとつずつ預金やお金のある場所を確認していると、
 突然あーちゃんが、「そうだわ、言っておかなくちゃ! もしも私に何かあった時のために、××に◯◯円くらい置いてあるからね!」と、言い出した。
 それは、それまでなーにゃんもワフウフも把握していなかったお金で、しかも、貸金庫に入っていたお金とほぼ同額だった……。

絶対それ、貸金庫に入っていた
お金でしょ!

 しかし、本人に何度確認しても貸金庫には行っていない、現金を動かしていないの一点張り。
 その日はとりあえずワフウフが預かっていたあーちゃんの預金からお金をおろして渡し、あーちゃんはそれで満足したようだったが、どう考えても本人が貸金庫からお金を家に持って行ったとしか思えず、それをまったく覚えていないのだとしたらあまりにもおかしいのではないかとワフウフは不安でいっぱいになった。

イラスト:ワフウフ


 ワフウフはすぐさまなーにゃんに相談した。実は、あーちゃんと会った日、貸金庫のこと以外でもあーちゃんがおかしいことがいくつかあったのだ。

 ①同じ話を何度もする。
 昔から父への愚痴は同じ話を何百回も聞かされてきたけれども、この日は話し終わったと思ったら全く同じ内容の話を全く同じフレーズで話し出したのだ。それも2、3回どころじゃない回数で。
 ランチをしている時、隣のテーブルに座っていた人がちらちらとこちらを見るくらい、壊れたレコードのようにあーちゃんは同じ話を繰り返し話した。

 ②自分が今いる場所がわからなくなった。
「ここって○○駅の××デパートよね?」と、まるで違う場所を言い出した。
 ③バイバイをしたときに、駅構内で「わたし、どうやって帰ればいい?」と途方に暮れてしまった。
 何度も来たことのある駅で、行きは1人で来られたのに。

 いや、こっちが途方に暮れるよね。


 正直に言うと、その日よりもずっと前からあーちゃんに対して「?」と思うこともあったのに、何度も「疲れているのかな」とか「まさかね」とか、目を逸らしてしまっていた。
 だけど、その日はさすがに目を逸らせないくらいにあーちゃんはおかしかった。
 とはいえ親が認知症なのではないかと思ったとき、どうやって病院に連れて行けば良いのだろう。
 あーちゃんは自分が若く見えることに絶対的な自信を持っていて、
それはそれはプライドが高いのだ。

イラスト:ワフウフ

抵抗はされなかったけど……
何しに来たの!?

 実際にあーちゃんの様子を見ていないなーにゃんは半信半疑だったが、ワフウフとなーにゃんは話し合って出来るだけ早いタイミングであーちゃんに認知症の検査を受けさせようと決めた。
 だけど認知症の検査が何科の病院で出来るのかすらもよく分からなかった。ネットで色々調べてみたら「老年科」「物忘れ外来」「脳神経外科」などがあった。
 
 でも、プライドの高いあーちゃんをどう言いくるめて認知症検査に連れて行けばいいのだろう。これもネットで調べたら、やっぱり本人が断固として拒否するので病院に連れて行くことが出来ないというお悩み相談がたくさん出てきた。
 うーん。やっぱり、みなさんそうだよねえ。
「認知症の検査」だなんて言ってしまったら、あーちゃんも断固として病院行きを拒否するだろう。
「認知症の検査」と言わなくても、「老年科」「物忘れ外来」という名前の場所に連れて行かれるだけでひどくプライドを傷つけてしまいそうだ。何しろ本人はまだまだ若見えする事に自信満々だからね。
 そして、プライドを傷つけてしまったら二度と同じ場所を受診しないだろうし、ワフウフとなーにゃんのことも警戒して避けられてしまいそうだ。
 
 ワフウフとなーにゃんはじっくりと策を練り、あーちゃんに「健康で長生きして欲しいから脳ドックをプレゼントするよ!」と言ってみた。
 あーちゃんは糖尿病なので健康診断は定期的に受けているが、脳ドックは受けたことがなかったのだ。
 
 おかげさまであーちゃんは喜んでプレゼントの脳ドックを受けに行くと言ってくれて、「あなた認知症ですよって言われちゃったりしてね!」と、冗談まで言っていた。

 いや、それ、冗談になりませんから。

イラスト:ワフウフ

 じっくりと策を練っている間に、きっかけとなった日から脳ドックを受けるまでひと月ほど時間がかかってしまったが、病院へスムーズに連れて行く段取りはついた。
 
 そして2017年4月某日。いよいよ待ちに待った、あーちゃんの脳ドックの日。
 病院の最寄り駅でワフウフとなーにゃんとあーちゃんで待ち合わせしたのだが、顔を合わせるなりあーちゃんが放った言葉は……

「今日はみんなで何の集まり?」

 脳ドックって約束したのに……! 忘れちゃったの!?
 そして、その日あーちゃんは、きっかけの日にワフウフが買ってあげたスカートをはいてきていたのだけど、「このスカート素敵でしょ? いくらだと思う? ○×で980円!」
 地元の店であーちゃんが自分で買ったことになっていたよ……。
 まあいいのよ、買ってあげたといっても、ファストブランドのお値下げ品だったので実はもっとお安かったのでね。
 
 ワフウフはあーちゃんの話を訂正したが、駅から病院へ向かう10分弱の間、あーちゃんは何度も何度も「このスカート素敵でしょ? いくらだと思う? ○×で980円!」と、繰り返した。
 そしてワフウフも訂正を繰り返した。

イラスト:ワフウフ

 ワフウフとなーにゃんは目配せを交わし合いながら、どんどん暗い気持ちになっていった。これはもう、認知症検査を受けるまでもなく……。

*****

・・・と、このようなドタバタ劇が繰り広げられるわけですが、周囲の認知症の家族を抱える友人に読んでもらったところ、「すっごいわかる!もうめっちゃアルアル!」と激しく共感してもらい、帯のメインコピーに据えた「介護のリアルに共感の嵐!」は間違ってなかったな!と思いました。

昨日アマゾン発売開始の『アルツフルデイズ 笑いと涙の認知症介護』は「第2章 金目当てのたんたんが動き出す」あたりから、ただの共感ではなく猛烈に笑えるエンタメ性を帯びてきます。

ただいまカテゴリーランキングもぐんぐん上位に浮上中!
ぜひ、お手に取ってみていただけると嬉しいです。


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