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子どもが喧嘩を始めたときに大人はどう声かけをすればよいか?

みなさん、最近喧嘩してますか?

喧嘩って体力も気力も消耗しますから、大人ならなるべく避けたいものです。でも、子どもには通用しない理屈です。

兄弟がいれば、兄弟げんかは絶えません。
子ども同士が集まれば、ああでもないこうでもないと争います。

親や周囲のおとなは子どもが喧嘩を始めたとき、どう対処すればよいか。

「喧嘩しちゃ、ダメ!」
「お友だちとは仲良くしようね」

つい、こう言ってしまいますが、これはNG。

では、どういう言い方がふさわしいのか、発達心理学の研究から導き出された『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(渡辺弥生・著)から引用してみましょう。

友達とけんかを始めたわが子に

イラスト:後藤グミ

 親はわが子が友達やきょうだいと仲よく遊んでいる姿を見ていると安心します。保育園や幼稚園、学校などでも、「みんな仲よく」とたびたび言われます。
 小学校3 年生くらいになってくると、子どもも「仲よくしたほうがいいんだよな」ということが、頭でわかってきます。
 それでも、けんかは起きます。子ども同士のけんかを目の当たりにすると、大人はつい口を出したくなります。
 ただし、「お友達とは仲よくしようね」「きょうだいなんだから仲よくしなさい」と言うだけでは、子どもになんの解決策も伝えられないばかりか、「そんな当たり前のこと、わかってる!」と思わせるだけでしょう。
 
 子ども自身が心から納得しなければ、再び同じようなことで争いごとが起こってくるのは避けられません。それぞれの言い分も聞かずに「仲よくね」とその場を丸く収めようとすれば、「あの子、嫌い!」「もうあの子とは遊ばない」といった排他的な思いを起こさせることも考えられます。
 だからといって、「自分がされて嫌なことは、人にもしてはいけないよ」と注意しても、子どもはなかなか理解できません。
 とくに幼児期の子どもは、相手の気持ちを想像することがまだまだ難しい段階にいます。「相手の気持ちを考えて」と言っても、その力が育っていないのならば、できるわけがありません。

子ども同士のけんかは
心の成長には必須要素

 では、大人がけんかの仲裁に入ればよいのでしょうか。
 それもNG です。
 大人が「みんな仲よくしなさい」と言って子どものけんかをやめさせることは、子ども同士で問題を解決するチャンスを奪うことになります。
 そもそも、健全な心の発達においても、子どものけんかには大切な意味があります。互いにぶつかりあうことを通して、相手が自分と異なる考えを持っていることに気づいていくきっかけになるのです。
 もちろん、暴力によってケガなどが生じかねないと予想されるときには緊急の介入が必要ですが、物の取り合いや一時的な仲間外れ、ささいな口げんかなどは、経過を見守る姿勢が大切です。

「ストップ・アンド・シンク」
「問題解決A B C 」で解決する

 ただ一方で、モデルとなる解決方法を示すという、大人だからこその方法を用いて、上手に介入していくこともできます。
 そのとき役立つのが、「ストップ・アンド・シンク(Stop and Think)」という考えです。日本語に直訳すれば、「いったん立ち止まって考える」。
 たとえば、子どもがけんかを始めたときには、「ちょっと待って」とまず立ち止まらせて、そのうえで「お互いの言い分をゆっくり聞いてみようよ」と、それぞれの意見を一人ずつ伝え合えるようにうながすという方法です。
 子どものけんかは、気持ちの掛け違いで起こってくることが多くあります。
 A くんは「バカと言われた」ことに怒っていて、B くんは「A くんがルールを破った」ことに怒っている。すると、「A くんがルールを破ったために、B くんが『バカ』と言い、そこからけんかになっていった」ということがお互いに見えてきます。
 小学校3 年生頃になってくると、けんかの内容も複雑になり、関わる人数も多くなっていきます。複数で起こったけんかの場合は、「問題解決ABC」という方法が有効です。

「A(Ask)」⇒「何が最初の問題だった?」と尋ねる
「B(Brainstoming)」⇒「けんかの解決策をみんなで、いろいろ考えよう」と投げかける
「C(Choose)」⇒「どれがベストの解決策だと思う?」と選択させる


 この3 点だけ誘導していけば、あとは子どもたちがいろいろ意見を出し合い、解決していくでしょう。大人はただその様子を見守っていればよいだけです。
 こうした経験を重ねることで、けんかを解決するためには、相手の意見を聞いたり、相手の立場を想像したりすることが必要だと、子どもは学んでいきます。

***

小学校に入れば、子ども同士で遊びに外に出て、子ども同士で喧嘩したり、仲直りしたりするものですが、未就学児の場合は「遊んでいた公園の砂場で見ず知らずのお友だちと喧嘩する」というシーンにたまに遭遇します。

その時、親としては「仲裁に入るべきかどうか」をものすごく悩みます。

そんな場合の対処法も『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(渡辺弥生・著)には示されています。

砂場で友達とけんかを始めた子どもに

 けんかをしている子どもを見ると、「けんかをしちゃ、ダメ!」と、ついつい言ってしまいがちです。
 発達心理学では、子どものけんかは、子どもの成長において当たり前の過程ととらえています。
 つまり、子ども同士のけんかは発達に必要なことで、「ダメなこと」ではありません。

けんかの原因となる
「自己中心性」とは?

 2 ~ 4 歳になると、多くの子どもが保育園や幼稚園などで同じ年頃の子と楽しく遊ぶようになる一方、けんかやいざこざも増えていきます。
 その原因は、物や場所の独り占め、悪口など不快な働きかけが多いことが、さまざまな研究で示されています。
 その後、年齢が上がっていくにつれ、「順番は守るんだよ」「先生がダメって言ってたよ」「〇〇ちゃん、ずるい!」などという言葉が聞こえるようになります。
 こうしたけんかが幼児期に多いのは、他人の気持ちを考えることや、自分のことを客観的に見ることが難しいからです。これを「自己中心性」といいます。
 自己中心性といっても、「自分の利益のためにわがままにふるまう」ということではありません。他者の視点に立って、考えたり話したりすることが難しい傾向のことです。
 子どもの思考がまだ十分に社会化されていないため、自分の視点と友達の視点を関係させることが難しい状態のことを指しています。
 ところが親は、けんかの原因を「あの子は我が強いから」「負けず嫌いだから」など、子どもの性格にあるととらえがちです。
 しかし実際には、ソーシャルスキル(本書135 ページ参照)が未熟なだけです。ここを理解して、友達とのかかわり方を教えていく必要があります。けんかして仲直りをしていく方法は、経験をくり返していくことで身につけるほかありません。

「けんか」は社会性を
身につける絶好のチャンス

 したがって、けんかしている子どもに対して、けんかそのものを肯定してあげることも大切です。
「けんかをするくらいお互いに言い合えることは、ホントはいいことなんだよ」
 けんかの経験が、自分の考えを相手に伝え、相手の考えもしっかり聞くという議論の土台になっていくからです。
 もちろん、子どもの中には、口が達者な子もいれば、強い口調になってしまう子、反対におとなしい子、自分の気持ちを言葉にできない子もいます。
 ここは大人が上手に調整し、「ちょっと待ってね、次は〇〇ちゃんの意見を聞いてみよう」と、おとなしい子が自分の気持ちを話しやすいよう、機会をつくることも必要です。
 ところが、こうした介入をせずに、「うちの子は、あの子とは性格が合わないから、近づけないようにしよう」と、親が一定の子を避けるようなことをしていると、どうなるでしょうか。
「自分と異なる意見を持った人が大勢いる」という大切なことを子どもに学ばせる機会を奪うことになります。そのぶん、その子は社会性を獲得するのが遅くなります。
 子どもがけんかをしているとき、相手の親のことも気になることでしょう。「けんかしちゃ、ダメよ」と、相手の親が仲裁に入れば、自分もそうしたほうがいいかな……と思ってしまいがちです。
 でもここは、せっかくの子どもの学びの機会を守ってあげたいところです。
「お互いに言い分を、聞いてあげません?」
 このように相手の親に伝えることは、「自分の意見をきちんと伝える」というモデルを親が子どもに見せる機会にもなります。
 ただし、角が立ってはいけませんから、「発達心理学の本に、子どもが言い合いをすることは、『子どもが社会性を身につけるために必要』と書いてあったんです」というふうに伝えれば、相手のお母さんも嫌な顔はしないでしょう。
 それでも理解してもらえないことはあります。そのときには、あまりしつこくは言わず、「ちょっと気分転換させてきますね」とその場を離れるとよいでしょう。

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いかがでしょうか?
ぜひ、周囲のお子さんが喧嘩を始めたときの参考になれば幸いです。




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