見出し画像

仕事で相手を激怒させてしまったとき、まず何をすべきか?

フォレスト出版編集部の寺崎です。

先日、Voicyの公式チャンネル「フォレスト出版チャンネル」に放送する回を収録、ハッシュタグ「謝罪の心構え」というテーマで編集長の森上さんと雑談トークをしました。

編集者として、なんらかの形での謝罪が発生しえるフェーズとしては「原稿段階」「発刊段階」「刊行後」の3つでしょうか。

刊行後でよくあるのが、印税などのお金のトラブルにまつわる謝罪、無断転載など著作権絡みのやらかし事件の謝罪……など。

原稿段階としては・・・
「おい、俺の書いたあの原稿、どうなってんだ!」というお叱りを受けるのは編集者あるある。つまり、端的に言うと「原稿を寝かせてしまった」という状況。これも謝罪の対象となります。

発刊段階としては・・・
印刷見本段階で発覚した「致命的なミス」。たとえば、著者の肩書がまちがっていたり。もう、これは120%言い訳の利かない担当編集者のミス。フル謝罪です。

さて、仕事にはミスやトラブルがつきものです。そのような事態に直面したときに、謝罪をうまくできるかどうかは、今後のビジネスパーソン人生にかかってきます。

そこでちょうどそのことについて書かれた担当書籍を思い出しました。中尾隆一郎さんの『最高の成果を生み出す ビジネススキル・プリンシプル』です。それでは、以下の解説を読んでみましょう。

***

トラブルによるクレーム発生。
さて、どうする?

 トラブル発生。顧客からクレームが入っています。あまり考えたくない状況です。ところが、このトラブル対応が上手な人と下手な人がいます。トラブル対応が上手な人は、これをきっかけに顧客との信頼関係を強固なものにします。ところが下手な人は、トラブルをきっかけに取引関係を失ってしまいます。

担当者を怒らせてしまった私の体験談

 私が新人営業のときのことです。スマホどころか携帯電話もメールもない時代の話です。少し昔話にお付き合いください。
 ある金曜日の夕方に顧客から連絡が入りました。作成しているパンフレットの原稿に対して「上司が変更したいと言っているので何とか対応してほしい」というものでした。
 すでに原稿は私の手元を離れ、制作ディレクターの手元も離れ、印刷会社に行っていました。制作ディレクターから印刷会社に連絡を取り、交渉の結果、何とか印刷を止めてもらえることになりました。
 ただし、印刷会社には土日も対応してもらうスケジュールでしたので、印刷会社からは、訂正個所を早く教えてほしいという宿題をもらいました。そこで早速、顧客担当者に連絡を取ったのですが、かなり遅い時間になっていたこともあり、担当者はすでに帰宅してしまっていました。
 印刷会社には、顧客が帰宅したので、訂正個所は分からない旨伝えました。印刷会社からは、土日が実働できないので納品が遅れること、特急対応の費用を顧客に請求してほしい旨を要望されました。ただ、顧客の「何とか対応してほしい」という要望には対応できたので、一安心という状態でした。月曜日の朝一番に連絡を取って、訂正個所を把握しようと思い週末を迎えたのです。
 ところが、翌週月曜日の朝のことです。顧客担当者に電話をしたところ、相当怒っているのです。金曜日に連絡がなかったことを怒っています。私からの連絡がなかったので、担当者は上司に対して、「すでに印刷に回っており、納期を守るためには訂正の対応ができない」と報告してしまったそうなのです。担当者としては、それ以外の方法はありませんでした。
 そうなのです。私が金曜日の夜に顧客担当者に電話をしたとき、担当者は上司に対してこの報告をしていたのです。帰宅したのではなかったのです。
 さて、そうなると私の金曜日の判断が悔やまれます。もちろん言い訳はできます。「訂正に対応してほしい」と言ったのは顧客です。顧客担当者に電話をした際に、「担当者が帰宅した」と伝えたのは、担当者の部下です。上司に訂正対応できないという状況を伝えながら、私には電話をしてくれなかったのは、顧客担当者自身です。
 しかし、そんなことを言っても何も生み出しません。現実として突きつけられているのは、「訂正は対応できる」けれど、「納期は遅れる」「費用は増える」という事実です。時間を取り戻すことはできません。
 しかも、パンフレットの印刷工程は最終段階です。どこかのステップを詰めることで時間を短縮することもできません。結果、なす術はなく、顧客担当者との関係は悪くなり、取引は減少しました。

「見たことのある鶏」は食べられない

 このとき、私がすべきことは何だったのでしょう。
 金曜日の段階、遅くとも翌週月曜日の朝には顧客を訪問すべきであったのです。そもそも、印刷会社と連絡を取っていたのは制作ディレクターです。私ではありませんでした。
 私自身が顧客先を訪問し、並行して制作ディレクターに印刷会社への対応を頼めばよかったのです。私は、まず顧客先で「本当に訂正を対応しなければいけないのか。対応すると納期が遅れる可能性があるが、それでもよいか」と話をすべきだったのです。
 つまりすぐ会いに行くべきだったのです。
 あるいは、翌週月曜日には顧客先に訪問し、真っ先に金曜日の状況を直接顧客に説明すべきであったのです。そうすれば、こちら側の対応が誠意に基づくものであることも分かってもらえたはずです。
 電話などで非対面の状態で怒ることができたとしても、直接面と向かって相手を罵倒したり、怒りを表現できる人はほとんどいません。電話は相手の姿が見えないため、相手に対して怒っている間に、どんどん怒りが増幅してくるのです。仕事で相手は怒らせてしまっては話になりません。それを防ぐためにも、トラブルが発生したら、すぐに直接会うようにすべきです。
 もちろん並行して「トラブルへの対応をどうするか」を検討しなければなりません。しかし、たとえ対応策が見つからなくてもまずは訪問するのがベストです。
 私はこれを「見たことのある鶏は食べられない」理論と表現しています。先ほどまで元気に庭先を走っていた、特にかわいがっていた「鶏」を食べられる人は、ほとんどいないのではないでしょうか。逆に見たことのある「スーパーマーケットに並んでいるパックに入った鶏」は食べられるのです。そうなのです。トラブル時に、私たちは「見たことのある鶏」にならなければなりません。

***

ここで紹介されている中尾さんのエピソードは、メールもメッセンジャーもない時代の話ではありますが、個人的には「謝罪は電話で」というソリューションはいまだ不変じゃないかなぁと思います。

逆の立場になった場合、メールやメッセンジャーで謝罪してこられたら「直接こいや!」と感じてしまうからです。

ホントに重大な謝罪の場合は「まずは電話で謝罪」⇒菓子折りを持って直接フェイス・トゥ・フェイスで重ねて謝罪というのが、時代を超えた謝罪スタイルの王道ではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?