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優秀な上司が好きな部下、イマイチな上司が好きな部下

先週、以下の記事を投稿しました。
できない部下を好む上司は意外と多くて、その上司の考え方こそが合理的なのかもしれないという話でした。なんとなくデキない部下を「かわいい」という心持ちで見ていたけど、その理由が言語化されて腑に落ちたという人もいるでしょう。

では一方で、部下はどういう上司を好むのでしょうか。
やはりデキる上司、懇切丁寧に説明してくれ、悩みを聞いてくれる、面倒見のいい優秀な上司を求めると想像されるでしょうか。ところが、人間関係というのは、そんな単純なものではあません。中には、デキない、ろくに指示をくれない上司を好きな部下がいるのです。
確かに、私自身、そういう傾向があるかるかもしれません。

先週に引き続き、鈴木邦成『はかどる技術』から、該当箇所を一部抜粋してお届けします。


完璧な上司から完璧な部下は生まれない

 できない部下でも生まれ変わることができます。では、上司はどうなのでしょうか。
 こちらも同じことがいえます。できる上司、完璧な上司というのは、実は部下としては少々やりにくいところがあるのです。
 もちろん、優秀な部下には優秀な上司が必要という面もあります。しかし、優秀な上司に求められる条件というのは、意外なことに「その人が優秀である」ということとはちょっと違うのです。
 メジャーリーガーとして不世出の大選手となった大谷翔平選手の最初の上司であった栗山英樹氏は監督としては名監督でしょう。
 でも、選手としての成績は失礼ながら「大谷選手に匹敵するほど秀でていた」とは言い難いと思います。
 将棋界に革命を起こした藤井聡太八冠の師匠である杉本昌隆八段もタイトル戦の挑戦などの棋歴はありません。「トンビが鷹を生む」といっていいかどうかわかりませんが、上司と部下との関係としてとらえると大きなギャップがあります。
 しかし、2人とも、上司、あるいは指導者としては共通点があります。それはともに2人の天才に「自由にやらせた」ということです。
 栗山氏は大谷選手の二刀流をあっさり認めました。栗山氏以上に実績のある多くの球界OBが否定的で、おそらく栗山氏でなければ誰も認めなかったでしょう。
 杉本八段の場合、将棋は「振り飛車」を得意としています。関連の専門書も著しています。しかし、藤井八冠の得意戦法といえば「角換わり腰掛け銀」です。師匠とは棋風もまったく違うのです。

干渉がなければ滞りもない

 英国に「偉大なる無関心」という言葉があります。「世界中から英国を訪れる多くの外国人がロンドンなどにいると居心地がよく感じられるのは、イギリス人が外国人に対して無関心であるから」というロジックです。
 あれこれ干渉されないからこそ、外国人も英国から自由な空気や発想を得ることができるというのです。そしてそれが英国への愛着や自分の向上にもつながっていくという考え方です。「ノーサービス・イズ・グッドサービス」(サービスしないことが最善のサービス)という考え方がベースです。
「上司からは何の指示もない」「自由にやれといわれているけど、とくに指導はない」ということが、結果として滞りの発生を防いでいるのです。

 しかし、こういうと「何もしないならば上司なんかいらないじゃないか」と反論する人もいるかもしれません。
 ところが、人間とは不思議なもので、「何もしなくても任され、期待され、注目されている」という雰囲気が肌で感じとれると、モチベーションが大きく上がり、滞りも解消するのです。
 逆に「部下には手取り足取り教えなければならない」「逐一、報告してもらわないと次の指示が出せない」などと考えることが大きな滞りを生むのです。
 したがって、干渉はしませんが、部下が大きな成果を上げたときにはそれを認め、評価し、一緒に喜んではどうでしょう。部下を高く評価して、その成長や成果を純粋な気持ちで喜ぶことで滞りも消え去ることになるのです。
「グッドボス・イズ・ア・グッドフレンド」(よい上司はよい友だち)でもあるのです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 石 く ろ)

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