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花粉症の原因は「思い込み」が9割?

フォレスト出版編集部の寺崎です。

日に日に暖かくなってきました。待ちに待った春の到来です。

こんな時期から鬱々と始まるのが「花粉症」

早くも先月末あたりから、鼻水、くしゃみ、目のかゆみに悩まされている人も少なくないのではないでしょうか。

でも、そんな「花粉症」ですが、
「思い込み」が原因だったとしたら、どうでしょうか。

「花粉症をはじめとする”症状”は、本人の”思い込み”が関与している」という説を主張する医師がいます。蔵前協立診療所所長の原田文植先生です。

では、今日はそんな原田先生の著書『病は口ぐせで治る!』から驚くべき内容をみていきましょう!

花粉症は「プラセボ=偽薬」が効く

 花粉症でつらい思いをしている方は大勢いらっしゃいます。ある統計では三三〇〇万人とも試算されています。もはや国民病とも言えます。
 時期が近づくと戦々恐々です。ラジオやテレビから流れる花粉情報が気になります。
 うちの医院を訪れる四〇歳の女性の話です。花粉症の薬を希望して来院されましたが、いつもと様子が違い、なんとなくソワソワと落ち着きがありません。

わたし 「今日は鼻水? それとも鼻づまり?」
患者さん 「なんか、それどころじゃなくて。息子の受験が気になりすぎて、鼻が詰まってんだかどうかすらわからないんです」
わたし 「鼻より息子が通ってほしいということやね」

 こんな会話をしたことがあります。
 花粉症人口が三三〇〇万人とすると、日本人の四人に一人の割合になります。これは現場で受ける印象より多いと感じます。
 当院では、花粉症にはもっぱら対症療法です。
 患者さんによって生活状況が違うので、オーダーメイドで点鼻薬や内服薬、目薬を組み合わせます。内服薬は眠気対策が必要かどうかなどを考慮してアレンジします。
 シーズンだけの症状であることと、ほとんどの患者さんがその対応で満足しているので対症療法のみのケースが大半です。
 花粉症の治療としては、「舌下免疫療法」が鳴り物入りで登場しましたが、実際の評判に関しては、それほどではないというのが現在の正直な感想です。
 この舌下免疫療法の有効性に関するデータを見て面白い発見がありました。
 二重盲検テストで、プラセボ群がめちゃくちゃ効いていたのです。
 二重盲検テストとは、医師と患者双方で薬が偽薬かわからない状態で投薬を行います。そして、薬が偽薬に対して明らかに効果を示した場合、その薬が採用されます。
 なぜこんな手法をとるかというと、偽薬にも効果があるからです。
 これを「プラセボ効果」と言います。
 プラセボ効果について簡単に説明しましょう。

プラセボ効果、恐るべし

 プラセボは、ラテン語で「喜ぶ」の意味のplacereの第一人称、未来形です。旧約聖書にはこんな言葉があります。

「わたしはこの世であなた(神)に喜んでもらえるようにいたします」

 この「喜ぶ」がプラセボです。
 たとえば、頭痛やむかつきがあるときに頭痛薬やむかつき止めを飲むことがあります。当然ながら、医学研究に基づいて開発された頭痛薬やむかつき止めを飲むと、薬理作用によって症状が軽減するはずです。
 しかし、薬を飲んだあとに症状を軽減するのは薬だけの効果ではないのです。わたしたちが薬を飲むときは「頭痛がましになってくれ!」とか、「むかつきがおさまってほしい!」と思っています。そうすると、「薬を飲んだのだから痛みやむかつきはきっとましになるはずだ」という心理的効果が働く可能性があります。
 仮に、飲んだものがただの小麦粉を固めてつくった偽の錠剤で、まったく薬理効果がなかったとします。論理的には、この薬(小麦粉)を飲んでも、痛みやむかつきがましになるはずはありません。
 ところが、場合によっては三人に一人の割合でこれらの症状が軽減するのです。このように薬理作用がまったくない薬を投与しても、薬の効果が出ることを「プラセボ効果」と呼びます。
 プラセボ効果は、主観的な苦痛の場合に起こりやすいことが判明しています。
 これは高校時代の友人から聞いた実話です。
 その友人の祖父は開業医でした。戦後まもなく、ヒロポンを求めて中毒患者が何人も来ていたそうです。ヒロポンとはメタンフェタミン、つまり覚せい剤のことです。
 戦前の日本では合法であったため、たくさんの中毒者が出ました。その中毒患者の一人に「この新薬はヒロポンとは比べものにならないくらい強い薬だからね。新薬だからただで処方するけど、もうこれが最後だよ」と小麦粉を処方しました。
 後日、その中毒患者が「先生、あの薬はこれまでのヒロポンとは比べものにならないくらいよく効くよ、お願いだからもう一度だけ出しておくれよ」とやって来たそうです。そして「これが本当に最後だよ」とやはり小麦粉を処方したそうです。
 プラセボ効果恐るべし、です。偽薬の効きめが半端ではなかったのです(もちろん本物の薬のほうが有効ですが)。そして、友人の祖父はまちがいなく名医といえるでしょう。
 花粉症の病状も心理的効果に大きく左右されます。
 プラセボ効果が非常に表れやすい疾患としては、ほかに不眠症もあります。NHKの某番組内で放送されたことで某社の睡眠薬を希望される方がわたしの診療所にも押し寄せました。当時、同番組で糖尿病にも効果があると喧伝されましたが、医学的根拠がないということで批判にさらされている薬でした。この薬剤も二重盲検テストでプラセボ群がとても効いていました。
 医療関係者の皆さんがこれを読んでいれば、「今さらプラセボ!?」と感じる方も大勢いらっしゃると思います。しかし、プラセボ効果は侮れません。
 プラセボだけで治せれば、それこそ超名医です!
 実際、プラセボ効果については現在もハーバード大学で真面目に研究されています。二〇一〇年より始まった同大学のプロジェクト研究により、医師と患者の関わり方が与える影響や、プラセボ効果の利用で薬や手術の効果をより高められる可能性が示唆されています。

プラセボ効果。侮れないですね。

これって、じつは人間の持つ秘めたるパワーだと思います。「思い込み」が自分の肉体、つまり現実を変えてしまうというわけですから。

では、この「プラセボ効果」はなぜ発現するのか。
続けて、みていきましょう。

「脳」がアトピーを治す

 なぜ、プラセボが効くのでしょうか?
 それは人間が関係性の動物だからです。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「人間とは社会的動物である」と言っています。
 人には共感する能力があります。医師と患者との関係性がしっかりと構築できていれば、プラセボ現象が起きやすいということです。
 これは「権威暗示」によるもので、「白衣暗示」とも言います。
 とすれば、権威を感じることができる名医を探し、プラセボ現象をがんがん発揮するのが病に対する良案だと思いませんか。
 ただし問題もあります。それは、プラセボが、ポジティブばかりではなくネガティブにも表れること。
 往々にして、医師のデータに基づく前例主義が患者の可能性を狭めてしまうことがあります。医師のあきらめが、患者に文字通り絶望的状況を生み出してしまわないように細心の注意が必要です。医師のあきらめによって発する言葉があたかも「呪い」のように働くのです。
 わたしの患者さんに、高校生の頃、アトピー性皮膚炎がひどくて顔に包帯をグルグル巻いて登校し、ミイラ男といじめられた方がいます。初診から五年ほど経過し、今では半年に一回保湿剤をもらいに来る程度の通院頻度です。
 かつては「ミイラ男」のトラウマが彼をしばり、アトピー性皮膚炎で連敗中という意識を強く持っていました。責任を持って仕事もこなし、家庭生活を築いている人物なのに、過去のトラウマが足の裏に突き刺さった小枝の端くれのようになっていたのです。
 そんな彼に「もう治ってるよ、完全に」「そろそろ治ってあげたら」「いつまで付き合ってるの?」などと、彼自身に主導権を握るように語り続けました。
 ステロイド治療にも強い偏見を持っていたので、「なかなか治りにくいときは使ったらええやん。もう大人なんだから」と言ってあげました。許可されたと感じた彼の顔にはあきらかに安堵感が溢れていました。
 彼に問いました。

「何でこんなによくなったと思う? 体質が変わったのかな?」
「それとも脳が変わった?」
 彼は答えました。

「脳だと思います」

 彼が「これでよくなる」と確信するまでたしかに時間はかかりました。彼は「治ってよい」という自分への許可をなかなか与えられずにいたのです。
「また悪くなるんじゃないだろうか?」
 少しよくなっても、そう考えてしまいがちです。
 そして、それを言葉に出してしまいます。
 ある種の病を克服するには自信が絶対に必要です。「再発するかもしれない」というリミッターを外す必要があるのです。
 やや余談ですが、脳のリミッターは自己実現にも大いに関連します。たとえば、政治家という職業を考えると、安倍晋三氏や小泉進次郎氏は幼少時から政治家の家庭で育ったので政治家になれた可能性が高いのです。
 サラリーマンの家の子が、議員になりたいと考えても周囲からたくさんの矢が飛んできます。

「うちの家系に政治家はいない」
「うちの学校のOBで政治家はいない」
「おまえが政治家? バカ野郎、なれるわけないだろ」


 わたしの妻は医師になりたかったそうですが、高校入学時に担任から「家が医者じゃない生徒で医師になった前例はない」と言われ、夢が砕け散ったと語っていました。
 反対の例です。実家が江戸時代から続く医者家系の友人は、小学校の学芸会で物語とまったく関係ないにもかかわらず白衣を着て出演させられたそうです。彼は紆余曲折の末、三浪して医学部に入学しました。
 この二人の差がおわかりいただけるでしょうか?
 もちろん周囲からどんな言葉をかけられようとも意志を貫く人はいますが、リミッターをつくり出してしまう社会的構造が存在することは否めないでしょう。
 そして、多くの人が自ら脳にリミッターを装備してしまいます。
 加えて、人はポジティブな暗示より、ネガティブな暗示を圧倒的に受け入れやすくできています。
 先のミイラ男といじめられたアトピー患者さんは、リミッターを外さなくてはなりませんでした。そして、それを達成できたのです。このことは彼の人生にとってどのような意味をもつのでしょうか。
 彼は「リミッターをもつことで遠回りすることがないように、自己実現していくことの大切さが身に沁みた」と語っていました。

アトピーを治すのも、政治家になるのも、医者になるのも、「脳のリミッター」の問題だったというわけです。

たしかに、病気から離れて考えてみると、人の人生は「親や兄弟による暗示」「周囲の身近な人からかけられた呪い」がものすごい影響を与えます。

このことが「病気」にもあてはまると読み解けます。

じつに恐ろしいことです。

「うちは糖尿の家系だから」とか「ガンの家系」とか、そーいうのはぜーんぶ暗示かもしれません。そう考えると「遺伝」ってなんなんだろうと考えます。「遺伝」なんて単なる思い込みなんじゃねえのか、と。

世界広しといえど、肩こりになるのは日本人だけ

 今から三〇年ほど前のことです。親友と一緒に自動車免許を取ろうということになり、運転免許取得の合宿に参加しました。その際に、強面の教官にひるんでしまい、少々苦労した際に、先輩から助言されました。
「右よし、左よし、と指差しして確認するんや。真面目アピールで評価上がるで」
 さっそく実行すると、すんなりパスしました。
 電車のホームでは、駅員が乗客の乗り降りを指差し確認しています。確認すべき方向を指差すことで、見落としを明らかに減らす効果があるからです。実際、記憶したいことがあるときに指を差すと、思いのほかスムーズに記憶できます。
 言葉にするのも、同じような効果があります。あいまいな症状や現象も「名付け」るだけで、意識にのぼりやすくなります。
「名付け」といえば、マフィア映画『ゴッドファーザー』のタイトルにあるゴッドファーザーとは「名付け親」という意味です。カトリックでは「名付け親」は非常に大きな存在です。マフィアの多くはカトリックなので、重要な存在を表す言葉として使われています。
 ところで、近年うつ病の患者数が急増しています。統計処理には少々疑問がありますが、以前と比して増えているのは間違いありません。
 人は、「自分はうつではないかしら?」と思ったら、その状況に見合う自らの症状を探してしまいます。
 言葉を侮ってはいけません。
 言葉には必ず、「感情」と「映像(イメージ)」がくっついてきます。
「眼精疲労」「肩こり」というものは日本にしかない病名だと知っていますか? 言葉(ここでは病名)が存在すると、その言葉の存在を無意識に自分自身のなかに探し出します。そして、当てはまった瞬間に不思議な安堵感が生じるのです。
 言葉のもつ「業」を医療関係者は再確認する必要があります。患者側もその現象を理解することが大切です。

さて、本題の「花粉症」に戻って考えてみると、たしかに「花粉症」という言葉は私が子どものころには存在しませんでした。「花粉症」というコンセプトが確立して、言葉として一般的になってようやく、「自分は花粉症だ」という”症状”が顕在化した。

そんな風に仮説を立てることもできなくはない。

「言葉」が成立することによって、存在が許され、人々がその「言葉」の恩恵を受けるという現象はほかにもあります。

1990年代に「援助交際」という言葉が生まれ、少女の売春がはびこり、そしてそれは今でも「パパ活」という”言葉”によって、存在が暗黙裡に許されています。

本来であれば、それはただの「売春」であり、古代ローマ時代、あるいは原始時代からあったのかもしれない「存在悪」であったものが、「援助交際」「パパ活」といったライトな言葉によって悪びれず存在してしまう。そんな現象と重ね合わされました。

ちょっと話が横道に逸れました。

今日は「思い込み」が花粉症の原因であるかもしれないという話でした。で、そこには「言葉」が深く関与している、と。

「それって、いったいどういうことなの?」
「もうちょっと詳しく説明して」

そう思われた方もいるかもしれません。ということで、暗示がいかに人の健康に影響を及ぼしているのか、そして暗示をベースにした「口ぐせ」がなぜ病気を引き起こすのかといった、さらに深い話についてはまた別の記事で改めてご紹介したいと思います。

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