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なぜ、世の中の暗記法・記憶法はことごとくバカバカしく、ショボいのか?

勉強法のジャンルにおいて、暗記法や記憶法を解説した本というのは定番ですよね。
しかし、見たものを絶対に忘れない「写真記憶」のようなスマートな方法を期待して読むとガッカリさせられます。結局のところ、そのメソッドを一言でいえば、「連想」や「語呂合わせ」だったりします。
学生時代、語呂合わせで年号を覚えたように、やはり地道に覚えるしかないのでしょうか?
そんな疑問に応えるのが、黒澤孟司『聞いたら忘れない勉強法』です。

本書のメソッドをざっくりいうと、覚えたい要素をノートにまとめ、その内容をレコーディングし、3倍速で繰り返し聞くだけというもの。医学部受験・医師国家試験を突破した著者はもちろん、この方法で難関試験をクリアした人がたくさんいます。
そして、本書にも「暗記」「記憶」に関して解説しているところがあります。以下、該当箇所を一部抜粋、本記事用に改編したうえで掲載します。

●なぜか、多くの記憶法は意外としょぼい 連想(こじつけ)・語呂合わせ

 連想・語呂合わせというと、「しょぼい」というイメージを受ける人は多いはずです。私もかつてはそうでした。
 たまに記憶力世界一(日本一)という人が、自身の記憶法をまとめた本を書きますよね。どんな画期的な方法なのだろうと期待に胸を膨らませて買ったことがあります。
 ところが、オリジナリティを装っているものの、そのメソッドの根本的な部分は連想、語呂合わせだったりします。
 同じような経験をしてがっかりした人は多いはずです。
 しかも、その連想や語呂合わせ自体が、ほとんど意味をなしていないような、あるいはバカバカしい文章だと、余計に試そうという気になりません。
 ただし裏を返せば、どんなにオリジナリティを出そうとしても、結局は連想・語呂合わせに行き着くのかもしれません。それを抜きに、興味のないことを記憶するのは難しいということを、記憶力世界一(日本一)の人も知っているということです。
 つまり、どんなにバカバカしいものであっても、連想・語呂合わせは、記憶に必須の手段と考えるべきなのでしょう。

●リズムに乗せるための情報のまとめ方 リリック化するまでの流れ

※編注
本書では、暗記する際に、覚えたいことをリストアップし、それをリリックに変換、さらにレコーディングしたものを繰り返し聞くというメソッドを紹介しています。以下はリリックにするまでのステップです。

 では、まずはどのようにリリックをつくっていくかを解説します。
 具体的な手順は次のとおりです。

【リリック化への具体的な手順】
①リストアップ
覚えるべき要素をリストアップする。あるいは、覚えなくても導き出せる内容はリストから除外する。
②インスピレーションで変換
リストアップした要素から浮かんでくるインスピレーションを大切にする。インスピレーションを得るためのスキルは、たとえる・茶化す・馬鹿にする・面白おかしくする……など。
③文章にする
連想したものを、主語述語の順番に変えて、文章にする。文章は動きがあって、荒唐無稽なほうがいい。
④リリック化
リズムに乗せやいように適宜文章に手を加える。

 覚えるべき要素のピックアップからリリック化まで(要するに①〜④)を一連の流れとして解説していきます。

リリック化の具体例
 さて、①で覚えるべき要素をピックアップするのですが、当然のこと、贅肉を徹底的に削ぎ落とした分、言葉として味気ないものです。したがって、この無機質な要素を脚色して、よりインパクトのあるものにしていきます。
 そのために必要なのが②。最初に連想したことを大切にしてください。こればかりは、その人のボキャブラリーや思想体系に依拠するしかないので、法則化できないというか、正解はありません。要はなんでもアリなんです。
 たとえば、次の知識を覚えたいとしましょう。人生において、この知識を覚えなければならない状況が来ることは、馬好きな人以外はほぼないと思いますが、そうした遠くに感じる知識をあえて例にしてみました。

馬の歩き方は、「常歩(なみあし)」「速歩(はやあし)」「駆歩(かけあし)」の3種類に分けられ、この順番でスピードが上がっていく。そして、全速力で走っている状態を「襲歩(しゅうほ)」という。

①リストアップ
「常歩(なみあし)」「速歩(はやあし)」「駆歩(かけあし)」を、順番通りに覚えるわけですが、「あし」が3連発で続くので省きます。つまり、「なみ」「はや」「かけ」「しゅうほ」という要素をリストアップします。
 ここからみなさんは、どんなイメージを持つでしょうか。

②インスピレーションで変換
 私は「なみ」というと、『週刊少年ジャンプ』で連載されている大人気漫画「ワンピース」のキャラクター、ナミを思い浮かべます。
 このように、なるべく具体化させましょう。

③文章にする
 次に、変換した要素を並べて、それらの要素から最初に連想する奇妙な物語を考えます 。
 ナミが主語で「はや」は「速い」で副詞、「かけ」は「駆ける」で動詞に変換できます。
「しゅうほ」は機関車の擬音語「シュポ」に変えられます。
 上記の4つの要素を文章になるように並べてみましょう。

ナミは速く、駆ける。シュポ。

 これではただの文章なので、リズムとメロディが乗りやすいように工夫しなければなりません。

④リリック化する
 リリックにするというのは、歌いやすく、語呂を合わせて、韻を踏み、リズミックにすることです。

ナミがはやーく、かけていく。シュポシュポ、シュッポッポ。

 ここまで変換させると、想起が容易になります。リスニング段階での反復回数を極端に減らせるので、勉強時間の削減につながります。

●まじめに、真剣にふざける 「本当にこれでいいのか?」と迷っても…

 もう1つ、馬術に関する知識を例に解説しましょう。
 先ほど覚えた馬の歩き方、「常歩(なみあし)」「速歩(はやあし)」「駆歩(かけあし)」の英語「ウォーク」「トロット」「キャンター」「ギャロップ」を覚えたいとします。

①リストアップ
「トロット」「キャンター」「ギャロップ」(ウォークは「Walk」であり、簡単なので覚える必要なし)。

②インスピレーションで変換
「トロット」→「となりのトトロ」
「キャンター」→「カンタ」
「ギャロップ」→「ギャル男」

③文章にする

となりのトトロに出てくるカンタは、成長して、ギャル男になった。

④リリックにする

となりのトトロ、カンタはギャル男

 最終的に、このリリックを自分でラップしながら、レコーディングします。
 普通、この①〜④のプロセスにはじめて挑戦するとき、「本当にこれでいいのか?」と疑心暗鬼になるわけですが、安心してください。
 リリックはなるべく動きがあり、荒唐無稽であり、ストーリーがあり、色彩があり、言葉の緩急があり、リズムにのりやすいものを意識しましょう。
 有名なキャラクターを多用する枕詞や、オヤジギャグ的な掛詞を使ったりするのも効果的です。
 また、自明すぎて覚える必要のない要素、導き出せる要素はリリックに入れる必要はありません。
 従来から使われてきた連想・語呂合わせというテクニックは、このメロディック・イントネーション・ラーニングの一種です。
 抽出した要素に対して、どう自分の持っている知識と結びつけ、まじめに、そして真剣にふざけ、こじつけ、覚えやすくするかが大事なのです。
 そしてリズムに乗せやすくするために、リリックを七五調にして韻を踏ませることができれば完璧です。

となりのトトロ、カンタはギャル男

これは、強烈な違和感とともに、脳内で映像が浮かびます。確かに忘れない!
バカバカしいのは確かですが、きっと頭が良いと言われる人も、似たりよったりの連想・語呂合わせで暗記しているのでしょう。

他にも、著者は本書の中で、赤裸々に強烈なパンチラインを繰り出しています。興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

(編集部 石黒)


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